最悪手足を切断する羽目になる難病・バージャー病
世の中には数多くの病気がありますが、一番厄介なのは「治療法が確立されていない病気」ではないでしょうか。
治療法がないから完治する保証がないし、闘病生活に入っても病状の進行を抑えるだけで精一杯、生活も治療のためにあれこれと制限を受けるから健康な人がうらやましい、いいや妬ましい。
そんな想いを抱くことになってしまう病気の一つが「バージャー病」なのです。
バージャー病はどんな病気?
バージャー病は正式には「閉塞性血栓性血管炎(TAO)」といい、発見者であるレオ・ビュルガーにちなんで名づけられました。
バージャーはビュルガー(Buerger)の英語読みから来ています。
古くは「特発性脱疽」とも呼ばれ、日本の喜劇王と呼ばれたエノケンこと榎本健一が患っていたことが知られています。
バージャー病では血管内に血栓ができて、末梢部の血管が閉塞してしまうという症状が発生します。
血栓によって閉塞した血管が通っている組織は虚血状態に陥ってしまいます。
虚血した組織はしびれや冷たさを感じるようになり、長く歩くと痛みが起こる「間欠性跛行」が見られるようになります。
また血液の流れが制限されるためか、静脈には炎症が発生します。
症状が進むと末端組織にはグチュグチュとした潰瘍が発生し、やがて壊死に至ってしまいます。
壊死した組織に再生の見込みがない場合は切断しなければならなくなります。
先述のエノケンも右脚を切断する事態にまで至っています。
バージャー病の原因、男性に掛かりやすい理由は?
バージャー病は厚生労働省が認定する特定疾患治療研究対象疾患、すなわち難病指定されている病気の一つであり、発症原因が特定できていません。
発病に関連するリスク要因としては、喫煙が関係しているといわれています。
バージャー病患者の多くは喫煙者で、喫煙習慣がなくても受動喫煙する環境に置かれていることが分かっています。
なお、最近の研究では、バージャー病で発生した潰瘍から歯周病の原因となる歯周病菌が発見され、予防と治療の大きな足掛かりとなることが期待されています。
バージャー病患者の9割は男性
バージャー病は、男性女性に関係なく発症する病気ですが男女比では9:1で圧倒的に男性患者が多いのが特徴です。
このように男性または女性のどちらかに圧倒的に患者が多い病気には、遺伝が関わっていることが多いのですが、バージャー病の場合は遺伝とは関係ないことが分かっています。
バージャー病の治療
バージャー病は治療方法が確立されていないので、基本的には対症療法で症状の緩和を図っていきます。
喫煙は血管の収縮と症状の進行を招くので絶対禁止となります。
禁煙を守れない患者は大抵手足切断まで症状が悪化することになってしまいます。
また、血行の促進を図るために運動やマッサージ、温感療法なども有効ですが、潰瘍・壊疽が発生している場合だと、治療が功を奏しないケースも少なくありません。
最近は自己造血幹細胞の移植を行って、閉塞した血管の代わりになる血管の新造を図る新しい治療法の研究がすすめられています。