『腸』だけが便秘の原因ではなかった
便秘とは、大便が長く(4~5日以上)腸内に残り、排便できない事を指します。
その為、運動やマッサージで腸の活動を良くしたり、水分や食物繊維で便の流れを良くする。便秘薬を使って強制的に排便すると言った方法があります。
しかし、それらの方法が全く効果を発揮しない便秘が、男性の特に高齢者を中心として増えています。
その便秘の原因は、『肛門』にありました。
排便する時、筋肉は『緊張』と『弛緩』を同時に行っている
排便の基本システムは、以下の2つの手順で行われます。
1・いきむ事で直腸や腹横筋(お腹周りの一番奥に筋肉)が腸を絞り、大便を肛門側に押し出す。
2・逆に肛門の筋肉は緩み、出口を広げる。
この『直腸の緊張』と『肛門の弛緩』が連携し、スムーズに行われる事で正常な排便ができます。
いきむほどウンチがでない『骨盤底筋協調運動障害』
しかし、中にはいきめばいきむほど、直腸と一緒に肛門まで緊張してしまう人がいます。
肛門が緊張すると、出口ががっちりと固く閉ざされてしまうので、出したくても出す事ができなくなります。
これが『元気な腸を持っていても、便秘になる原因』だったのです。
肛門の筋肉は『骨盤底筋』という、骨盤の底を支える筋肉群の1つ。
この骨盤底筋が連携をとれず、正常に動かない事から『骨盤底筋協調運動障害』と呼ばれています。
便秘薬が効かない理由
便秘薬の働きは、大腸の動きを活発化したり、水分が無くなりカチカチになった便に水分を与える事で柔らかくし、『肛門まで運ぶ』のが主な役割です。
しかし骨盤底筋協調運動障害の患者は、大便を肛門まで運ぶ事に問題はありません。
むしろ詰まっている場所へさらに大量の便を送り込むのですから、余計に渋滞する事になり症状が悪化する可能性もあります。
風船をいれる『排便トレーニング』が最先端の治療法?!
機能障害である骨盤底筋協調運動障害を、薬で治す事は出来ません。
正しい機能を取り戻すリハビリが必要になります。
その最先端の治療法が『風船を使ったバイオフィードバック療法』。
バイオフィードバックとは、筋電図などを用いて、見えない筋肉の動きを可視化して本人に理解してもらう方法の事。
排便時の動きを意識してトレーニングできるので効果が高い
バイオフィードバック療法では、患者の肛門から特殊な風船を入れ、中で膨らませたのちに、風船を排出します。
つまり、風船を疑似的な大便として、排便のトレーニングを繰り返し行う訳です。
この時、筋電図によって骨盤底筋の動きをリアルタイムで把握する事が出来ますので、口で説明できない筋肉の動きを目で確認しながら行う事が可能。リハビリのコツが格段につかみやすくなります。
費用はおよそ1,000円~2,000円程度。
便秘は腸に余計な負担をかけている
女性の死亡原因のトップは大腸がん。
これは多くの女性が便秘に悩んでいる事と無関係なのでしょうか?
近年、男性の大腸がんによる死亡例は上昇傾向にあり、平成23年の調査では死亡数14,694人。
肝臓がんを抜いて第3位。横ばい傾向にある胃がんに迫る勢いです。
このままでは、近い将来、『がんによる死亡原因は男女ともに大腸がんがトップになる』という見解まであります。
男性は、便秘に対して鈍感です。
たかが便秘と侮らず、慢性的な便秘の方や、急に排便のサイクルが乱れて治らない方は、試しに診察を受けてみてはいかがですか。