落ち込みから抜け出すヒント「REBT」とは?
REBT(Rational Emotive Behavior Therapy)とは、「20世紀に最も大きな影響を与えた心理療法家」の一人に上げられるアメリカの臨床心理学者アルバート・エリスが、1950年代の半ばに提唱した心理療法です。
「理性感情行動療法」と訳されるように、個人が直面するさまざまな問題を、認知や感情、行動によって解決するという、認知行動療法の代表的なカウンセリング法です。なぜ人は落ち込むのか?どうすれば落ち込みから抜け出すことができるのか?を論理的に解明しています。
ABCDE理論で落ち込みのメカニズムを解明
人が落ち込む状況を、アルファベットを使って説明したのが「ABCDE理論」です。ここでは、この理論について簡単に説明します。
人はなぜ落ち込むのか?~AとBとCについて
ABCとは、以下の事柄を表しています。
- A(Activating event of experience)=「出来事や経験」
- B(Belief system)=「信念や信じている世界」
- C(Consequence)=「問題や結果」
たとえば、仕事に失敗して落ち込んでいる場合、A=「仕事に失敗した」→C=「落ち込んでいる」となります。
この場合、Cの原因がすべてAにあると考えがちですが、いくらAについて思い悩んでも、Cについて何の解決にはなりません。Aは、Cの原因の1つであっても、すべてAが悪いというわけではない、つまりBにも原因があるというのが、REBTの考え方なのです。
落ち込みの原因を発見!~2種類のBについて
Bには、強く信じていても人として幸せに生きることに影響しない『理性的なB』と、信じ込むことによって矛盾が生まれる、論理的に証明ができない『非理性的なB』の2種類があります。
Bの分かりやすい例として、以下のようなものが挙げられます。
理性的なB
「人は人である」
↓
「人は不完全な存在である」
↓
「人は間違いを犯しやすい」
非理性的なB
「人は完全でなければならない」
↓
「人は間違いを犯してはならない」
↓
「間違いを犯した人間はダメな人間だ」
『非理性的なB』は、完全主義で絶対的・破滅的な考え方が多く、「~ねばならない」「~すべき」「~のはずがない」から発展し、「もうダメだ」「もう終わりだ」といったことを繰り返し自分に語りかけることにより、落ち込みのループに陥ってしまいます。
反対に、『理性的なB』は、「世の中に絶対は存在しない」「失敗したからといって自分はダメな人間でない」「失敗しても、また頑張れば良い」という、強く信じることで幸せに生きることができるようになる考え方なのです。
このように、その人のBが、『理性的なB』であれば、それほど落ち込むことはないのですが、『非理性的なB』を信じ込むことによって、落ち込むというCの問題が引き起こされてしまうのです。
落ち込みから抜け出すには?~DとEについて
REBTでは、『非理性的なB』を徹底的に明らかにして、取り除くことをD(Discriminant and Dispute)とし、Dによって取り除いた『非理性的なB』の代わりに、『理性的なB』を新たに見つけることが重要だとされています。
そして、『非理性的なB』の除去と『理性的なB』の発見を上手にできるように訓練することで、どんな状況においても問題を解決することができる、すなわちE(Effect)=「効果」が得られるのです。
精神的に健康な人の13の条件
ここでは、REBTで提唱されている、精神的に健康な人の条件について紹介します。
1.自己利益
自分自身を第一に考え、他人のためにマゾヒスティックに自分を犠牲にしない。
2.社会的関心
社会に対して関心を持ち、自分が気持ちよく暮らせる環境を作り出すそうとしている。
3.自己指導
自分の人生に責任を持ち、問題を独力で解決するようにする。
他人に協力を求めることはあっても、援助にすがることはしない。
4.寛容性
他人が過ちを犯す権利を認め、たとえ過ちが表面的になったとしても人間として非難しない。
5.不確かさの受容
自分が住んでいる世界には、絶対的に確実なことがないことを理解している。
また、不確かであることは恐ろしいことではなく、刺激的で魅力があると考えることができる。
6.柔軟性
考え方に知的な柔軟性を持っていて、どんな変化にも偏見を持たずに、多面的に見ることができる。
7.献身
人や物、観念などに対して、夢中になることができる。
8.科学的思考
常に、客観的で科学的な考え方ができる。
9.危険を冒す
人生において何がしたいかを自分自身に問いかけ、失敗する可能性があっても挑戦することができる。
10.自己受容
生きること、自分自身を受け入れることに喜びを感じることができる。
11.長期的快楽主義
刹那的な快楽にとらわれずに、長期的に物事を見ることができる。
12.現実的努力
全ての欲求を満たそうとしたり、全ての困難から回避したりしない。
13.心理的混乱に対する責任
自分の思考や感情に対して責任を持ち、心理的な混乱を他者や社会のせいにしない。