交通事故の過失割合とは?
何か事件が起こって警察が犯人を捕まえたとき、悪いのは犯人であり被害者は悪くありません。被害者がよっぽど悪い人で犯人に毎日嫌がらせをしていたとしても、その事件で逮捕されるのは犯人のみです。
しかし、交通事故ではこんなに簡単に誰が犯人で誰が被害者なのかはわからない場合があります。意図的に事故が引き起こされた場合はもちろん事故でなく事件となりますが、故意でなく双方の過失で事故が起きてしまった場合はどちらが犯人ということでなく、両者とも犯人という風にもとらえることができるのです。
そこで、交通事故における当事者間の過失の大きさは0か100でなく、0~100%の割合で判断されます。 どんなに運転が上手な人でも相手の過失によって事故に遭う危険性は多々あります。自分は何も悪くないのに過失が認められ、賠償額が減額されることがないよう、過失の基準を知っておきましょう。
そもそも過失とは?
交通事故のニュースでよく耳にする自動車運転過失致死傷罪は運転者の過失によって人を死傷させた場合に問われる罪で、「過失」とは本来必要な注意を怠って回避の努力を行わなかったことを意味します。
つまり交通事故における過失とは、 『運転者として必要な注意を怠り、事故を起こしてしまうこと』 となります。
交通事故の過失の比率のことを過失割合といい、被害者が加害者に損害賠償請求を行うときにはこの過失割合に基づく賠償請求額を求めることになります。
このように被害者が被った損害額を加害者が100%補償するのでなく、被害者の過失の量によって賠償額を減額することを過失相殺といいます。
過失相殺される事例は?
過失割合についてまず知っておきたいことは、加害者と被害者がどういう過失があるかという以前に加害者と被害者の関係によって優先度が大きく違うということです。
過失割合は交通弱者が優先される
加害者と被害者の関係とは、
- 自動車と歩行者
- 自動車と自転車
- 自動車と自動車
などのことで、危険性の高い交通手段が過失を多く加算されるようになっています。
そして自動車同士の事故の場合も、大型の自動車ほど過失を厳しく加算されます。
危険性の高い人ほど常に注意しなければならないということですね。
たしかに、歩行者がよそ見して歩いていて他の歩行者にぶつかっても大惨事にはなりません。しかし大型トレーラーの運転手がよそ見運転するとたいへんな事故につながってしまいます。
過失が高くなる順番
歩行者 < 自転車 < 二輪車 < 四輪車 < 大型車
過失が相殺される例
過失割合の算定基準を定めた日弁連「交通事故損害額算定基準」に基づく過失相殺率と過失が認められる例を紹介します。
自動車と歩行者の場合
自動車と歩行者では歩行者が優先されます。
- 歩行者が青で横断歩道を横断 車が赤で直進して事故 → 歩行者の過失 0
- 歩行者が赤で横断歩道を横断 車が青で直進して事故 → 歩行者の過失 70%
最初の例はもちろん歩行者の過失はありませんが、2番目の例は車に30%の過失が認められています。
このほかの「歩行者の過失が認められる場合」とは、車から見えにくい夜間の事故や車の往来の激しい幹線道路での事故、車から見えにくいところからの急な飛び出しなどがあり、10%ほどの過失が歩行者に加算されます。
自動車と自動車の場合
自動車同士の事故の過失割合は道路標識が示す交通ルールが守られていたか、どちらの車が優先されるべき状況だったのか、両者の注意・予測は適切になされていたかによって決められます。 また、自動車同士でも一方が大型車であった場合は大型車のほうに過失が加算されます。
- 車Aが青信号で交差点直進 車Bが赤信号で直進して事故 → 過失割合 A : B = 0 : 100
- 車Aが黄信号で交差点直進 車Bが赤信号で直進して事故 → 過失割合 A : B = 20 : 80
- 車Aが黄信号で交差点直進 車Bが赤で進入して衝突時は青 → 過失割合 A : B = 40 : 60
このように自動車同士の事故ではその状況によって大きく過失割合が変わるため、両者の過失割合を決めることが難しく協議が難航してしまいます。
自動車の運転手の過失として過失割合に加算される項目としては以下のようなものがあるので、気をつけましょう。
- 黄色からほぼ赤に変わるタイミングでの交差点進入
- 前方不注意
- 速度超過
- 一時停止不履行
- 合図のタイミングや出し忘れ
- 無理な車線変更
- 相手が初心者マークをつけた車
過失割合のルールを理解して過失を防ぐ安全運転を
過失割合のルールや例が示していることは「運転者にはこういう注意が必要なんですよ」、ということです。
たとえ事故に巻き込まれてしまっても、自分は必要な注意を払っていて過失はないことを証明できれば過失相殺で悔しい思いをせずに済むでしょう。
もちろんそのためには普段から交通ルールをきちんと守り、交通弱者優先、広路・左方優先などを心がける必要があります。 「過失のない運転」というのは非常に難しいですが、普段から意識して安全な自動車生活を目指しましょう!