ストレスが溜まりすぎると胃が危ない
テレビドラマでは、「胃潰瘍で入院した登場人物が胃がんと勘違いして騒動を起こす」という筋書きをたびたび目にするものです。胃潰瘍は吐血を伴う為、「思った以上に重篤な病気」感を演出してしまい胃がんと勘違いする人も実際に少なくありません。
しかし、胃潰瘍も続けば胃がんに発展する可能性は低くないし、胃潰瘍も胃がんも「ストレスを原因にして発生する」という共通点を持っているのです。
胃液過多が胃潰瘍を引き起こす
ストレスを主な原因として発症する胃潰瘍は、胃酸過多によって胃壁や粘膜がただれてしまう病気です。胃潰瘍は俗に「胃に穴が開く」といわれていますが、本当に穴が開くわけではなくただれた粘膜が黒くなるので穴が開いているように見えるのです。実際に胃に穴が開くと「胃穿孔」という病気になります。
ストレスによって胃潰瘍が引き起こされるのは、ストレスによる「迷走神経反射」が原因となります。迷走神経は脳から続く重要な神経で、消化器などを司る重要な神経の一つです。しかし、強いストレスや痛みに晒されると、迷走神経から自律神経に伝わり血管拡張による血圧低下や心拍数の低下を引き起こしてしまうのです。
迷走神経反射が起こると、自律神経の乱れによって胃液の分泌量が増大します。胃壁は胃酸に耐えられるだけの強さを持っていますが、過剰な胃酸過多が起こると胃壁が耐え切れなくなり胃酸でただれてしまうのです。
胃液減少が胃がんの原因になる
一方、胃がんは塩分過多やピロリ菌の影響などで起こるものといわれていますが、実はストレスが発病に大きく関わっているのです。
脳がストレスを感じると、ノルアドレナリンが分泌され交感神経が活発に働きやすくなるため自律神経失調症を起こしやすくなるのですが、胃液の分泌が行われるのは副交感神経が活発に働くのが休んでいる時なので、ストレスが掛かれば逆に胃液の分泌量が減少してしまうことになるのです。つまり、ストレスは胃液の分泌量を大きく狂わせてしまうのです。
ストレスで胃液の分泌量が低下した状態のまま物を食べると、消化に時間が掛かるだけでなく消化しきれていない食べ物で胃の粘膜が傷つきやすくなり、胃がんを起こす可能性が高まります。
また、胃潰瘍や胃がんの原因になるピロリ菌が胃液の減少によって活発に動けるようになるため、胃がん発病のリスクはますます高まってしまいます。
ストレスは免疫力の低下につながる
癌細胞は、設計図通りに生産されなかった細胞が変異して発生するものですが、本来ならば異常な細胞は早期の内に免疫機構の働きによって除去されるようになっています。この免疫の仕組みを利用するのが癌の免疫療法なのですが、ストレスが高まりすぎると免疫力の低下を招いてしまうのです。
免疫機構はリンパ腺を流れるリンパ球や血液中の白血球によって支えられていますが、リンパ球は自律神経の働きによって活性化されます。しかし、ストレスが溜まると自律神経の働きは乱れ、それに伴いリンパ球も不活性化され、免疫力の低下を招くのです。
また、ストレスの増大に伴って分泌されるコルチゾールなどの副腎皮質ホルモンはリンパ球の働きを抑制するため、免疫力の低下をますます増大させてしまうのです。