糖尿病とデンタルインプラント
デンタルインプラントは、入れ歯やブリッジに取って代わる、失った歯を取り戻す審美性の高い歯科治療として広く受け入れられてきました。治療にかかるコストは高いといえど、デンタルインプラントを選択する人も増えています。
しかし、デンタルインプラントは手術や治療後の経過において、一定のリスクが考えられる歯科治療であり、治療を進めて行くにあたっては様々な条件をクリアすることが必要だと言えます。
その条件として取り上げられることの多くは、患者さんの健康にかかわること。
基礎疾患がないことや、特に糖尿病を持っていないことがデンタルインプラントを行う条件のひとつとされていることが多くあります。
それは、糖尿病が免疫機能を弱まらせ、細菌感染しやすい状態にあるためです。デンタルインプラントも含む外科手術において、傷口からの細菌感染による重篤な炎症などのリスクを大きくしてしまうマイナス面を持っているからです。
つまり、傷が深く、出血も少なくないインプラント治療での最近感染リスクは、手術の傷口の治癒も遅く、しかも細菌に対する抵抗力も弱い糖尿病を抱える人にとって健康な人と比にならないわけです。
インプラントと天然歯の決定的な違い
デンタルインプラントは失った歯を取り戻す目的の歯科治療ですが、その治療には歯ぐきの深部や骨格にも及ぶ手術を要します。
本来の天然歯の骨格と歯根の間には、噛んだ時の負担を和らげるクッションとなる“歯根膜”があるのですが、これは人口歯根であるインプラントには存在しません。
さらに歯根膜の存在が細菌感染から骨格や歯根を守っているとも考えられていて、インプラントと骨が直接接しているという構造は歯周病と同様のインプラント周囲炎のリスクにさらされているとも言えるのです。
健康な人でも定期メンテナンスは必要不可欠
インプラント周囲炎はその周囲の骨までも失ってしまうケースもあり、インプラントの脱落の原因でもあります。
健康な人でも日々のケア以外に定期的な術後の健診を重ね、予防することが求められています。
ここからも、重度の糖尿病を抱え免疫力が低下している人がひとたび細菌感染を起こしてしまうと、場合によっては骨膜炎など重篤な症状へ発展してしまう危険性が大きくなることなど、容易に考えられるのです。
糖尿病患者は100%インプラントができない?
細菌感染に対する抵抗力が弱くなってしまう糖尿病を抱えていたとしても、100%インプラント治療が不可能であるわけではありません。
担当内科医との相談の上で、血糖コントロールを良くしてからの治療や抗生物質を使用しての十分な感染対策をとるなどの対応で、糖尿病患者であってもデンタルインプラントは可能になる場合もあるそうです。
しかし、糖尿病をはじめとした疾患を抱えている場合のデンタルインプラント施術は、リスクが高いという慎重な姿勢でいるのが賢明かも知れません。
無理にインプラントを押し進めるより、まずは抵抗力を強める対策をとってから行うのが良いでしょう。
インスリン注射や血圧降下剤の使用のタイミング
血圧降下剤やインスリン注射を使用している場合などはインプラント手術当日の内服や注射のタイミングも問題になります。
術後の状態により食事が摂りづらくなってしまった場合、いつも通りに薬の使用をすると血糖値が下がりすぎてしまい、低血糖症の恐れがあります。
そのため、発作に備えて糖分を摂取できるものを用意しておくこと、また、発作時には担当歯科医と担当内科医によって適切な安全手段を講じることが必要になります。
無理矢理にインプラント治療を押してくる歯科医院には注意?!
外科的な治療を伴う事もあるデンタルインプラントは、麻酔学なども含め歯科としての範囲を超えた高い技術・高度な知識が必要になります。
しかし、歯科医がインプラント治療を行うにあたって別途資格の取得などというような何らかの法的な義務があるわけではありません。
インプラント治療を志す歯科医は、自主的に施術に関する講習を受けますが、その講習もピンキリだといいます。
経験の少ない歯科医が本来なら避けたい重篤な炎症につながるリスクなどを軽視して治療をし、裁判沙汰になってしまう事例があるのも事実です。
糖尿病を患っている方でインプラントを検討している方は、まずは信頼できる歯科医院を見つけることが大事でしょう。