認知症だと思ってしまうことも…老年期うつ病とは
歳を重ねて、顔にシワがより、白髪ばかりになってくるとそう遠くない将来にやってくるであろう人生の最後に思いを馳せるようになり、生きていこうとする気力はどんどん萎んでいくものです。
老人と同居する家族は、元気すぎても困るけど無気力すぎても困るもので、あまりに無気力だと「認知症なのではないか」と疑ってしまうことも…。
しかし、老人の無気力は必ずしも認知症だけで起こるというわけではないのです。もしかしたらそれは高齢者にみられる「老年期うつ病」かもしれません。
老年期うつ病とは
老年期うつ病は65歳以上の老年に達した人が患ううつ病です。老年期うつ病の特徴には「無気力」「記憶力の低下」「強い不安」「身体的不調を訴える」などが挙げられます。
老年期うつ病の厄介なところは「老い、認知症による症状に似ていて判断が難しい」という所です。老化と共に身体機能の低下が進み身体を動かすのが億劫になる事、脳機能の低下によって起こる認知症の初期症状と似ていることが、老年期うつ病を気付かせなくしているのです。
原因は何か
老年性うつ病発症の原因として「老化に関係するストレス」「配偶者など身近な人を亡くしたこと」が挙げられます。
歳を取るごとに身体が衰え、少し前までは当たり前に出来ていた事が出来なくなるのは結構なストレス源となるものです。
重い物を持ち上げられない、徒歩で10分掛かる道に20分掛かる、膝の痛みで立つのも辛い…というように日常生活の中では、何度も自分の老いを痛感する場面に遭遇するものです。
頭でわかっていても、自分が老いたことをまざまざと見せつけられるのはストレスを感じることに他ならないのです。
また、「連れ合いを亡くすとボケが進む」と俗に言われますが、配偶者や自分より若い家族、友人に先立たれることで感じる喪失感は大きいものです。大きな喪失感に伴う無気力・倦怠感が老年期うつ病の原因になるだけでなく、喪失体験への共感から「うつ病ではないか」という疑いを持つことを難しくしているのです。
老年期うつ病を鑑別するGDS
老年期うつ病は脳血管障害などの病気のリスクを高める危険性が指摘されています。脳血管障害は認知症や寝たきり生活の原因になってしまうので、老年期うつ病はなるべく早期の内に治療していかなければなりません。
しかし、プロである医者でも認知症と老年期うつ病の鑑別は困難で通常の問診や診断では区別を付けられないこともしばしばです。その為、老年期うつ病であるかどうかを判断する場合は「GDS(老年期うつ病評価尺度)」という検査方法を使用します。
GDSは15の質問項目から成り立っている非常に簡単なテストが、信憑性は高く専門知識なしでも活用できる鑑別方法として活用されています。
GDS問診項目
GDSは質問に対して「はい」か「いいえ」で答えてもらい、赤字にしてある答えを1点として計算します。
また、問診は全て口頭で行うようにします。また、最初の4項目でうつ症状の疑いがある答えが1つ以上出た場合のみ残りの11項目の質問を行います。
※過去一週間の気分にもっとも近い答えを選んでください |
||
1.基本的に自分の人生に満足していますか? |
はい |
いいえ |
2.活動的でなくなったり興味を失ったことはありましたか? |
はい |
いいえ |
3.常に幸福だと感じますか? |
はい |
いいえ |
4.外に出て新しいことを始めるよりも家の中にいる方がいいですか? |
はい |
いいえ |
5.人生が空っぽだと感じますか? |
はい |
いいえ |
6.よく退屈しますか? |
はい |
いいえ |
7.いつでも上機嫌でいますか? |
はい |
いいえ |
8.何か悪い事が起こりそうだと心配していますか? |
はい |
いいえ |
9.無力感を感じますか? |
はい |
いいえ |
10.他人に比べて記憶力に問題があると感じますか? |
はい |
いいえ |
11.生きていることは素晴らしいと思いますか? |
はい |
いいえ |
12.現在の自分を無価値なものと感じますか? |
はい |
いいえ |
13.気力に満ち足りていますか? |
はい |
いいえ |
14.自分では状況をどうする事も出来ないと感じますか? |
はい |
いいえ |
15.ほとんどの人は自分よりも裕福だと思いますか? |
はい |
いいえ |
0点から4点の場合は「うつ症状なし」、5点から10点までは「軽度のうつ病」、11点以上は「重度のうつ病」として評価し、治療の基準として利用します。