インキュベーションオフィスの『インキュベーション』ってなに?
『インキュベーション』とは、『孵化器』を表す英語。
そこから転じて、ビジネス業界では「起業する前のベンチャー企業」の事を表しています。
また、同じく『インキュベーター』と言えば、「起業する人を援助する支援者や事業者」という意味に使われています。
つまり、『インキュベーションオフィス』とは、「インキュベーターが起業する人達の為に用意した貸しオフィス」と考えるのが、一番分かりやすいでしょう。
インキュベーションオフィスとバーチャルオフィスの違い
インキュベーションオフィスもバーチャルオフィスも、事務所として使用できる作業スペースやインフラ設備、会議室を安く利用できるという共通点があり、しばしばレンタルオフィスなどと並べて混同されることがあります。
しかし、一見同じ貸事務所に見えても、その内情には大きな違いが見て取れます。
それでは、具体的に『インキュベーションオフィス』と『バーチャルオフィス』の違いをまとめていきましょう。
(1)国が窓口となっている『インキュベーションオフィス』
最も大きな違いは、「インキュベーションオフィスは公的機関が提供している」というのがあります。
もちろん民間のインキュベーターが主導となっている施設もありますが、公的機関が提供しているバーチャルオフィスはありません。
例えば東京都を例にすると、【インキュベータオフィス情報 東京都中小企業振興公社】が、その窓口となっています。
(2)インキュベーションオフィスの目的は「起業支援」
また、インキュベーションオフィスは「起業のサポートに重点を置いている」というのも重要なポイントでしょう。
その為、同じ施設内に企業コンサルティングや、事務処理を手伝ってくれるインキュベーションマネージャーが用意されています。
つまり個別に司法書士や行政書士と契約をしなくても、いつでも法律や税金の事を相談できる環境が整っている事になります。
また、定期的に起業家向けの勉強会を開催している施設もあり、ハードとソフトの両面からベンチャー企業をサポートする体制が整っています。
(3)格安で作業場と住所を貸す『バーチャルオフィス』
対してバーチャルオフィスは、全て民間の経営であり、起業の為のサポートはありません。
またコンサルタントを用意しているバーチャルオフィスも存在しますが、オプションとして追加の費用が掛かりますし、そもそも用意している事が稀と言えるでしょう。
(4)インキュベーションオフィスは審査が厳しく、ベンチャーしか利用できない
起業支援が目的のインキュベーションオフィスですので、利用者の最低条件は「企業家である」という事です。
すでに事業を始めていて、経費削減のためにオフィスを移転する人。
ビジネスではなく、プライベートスペースとしての利用はできません。
また入居の前には、事業計画を提出し、企業家としての審査を通らなければ施設の利用は認められません。
さらに入居したとしても、起業から数年で事務所を移転する事が決められている例もあります。
(5)バーチャルオフィスは個人でも利用可能
登記登録ができるのがバーチャルオフィスの魅力ですが、法人しか契約できない訳ではありません。
個人がプライベートの作業場として利用する事も、倉庫として利用する事もでき、オフィスではありますが使い方に受ける制限は少ないと言えるでしょう。
(まとめ)新規企業の「インキュベーションオフィス」と貸事務所の「バーチャルオフィス」
以上の事を総括すると、
インキュベーションオフィス:ベンチャー企業の為の、総合支援施設。
バーチャルオフィス:起業にも使える貸事務所
という事になります。
借りるならどっち?インキュベーションオフィスとバーチャルオフィス。
一見すると、インキュベーションオフィスに対してバーチャルオフィスを利用するメリットが低いように感じますが、一概にそうとは言えません。
インキュベーションオフィスは多くの資金が必要
起業を目的とするのなら、インキュベーションオフィスの方が確実に有利です。
各種サポートが揃っており、インキュベーターというコネもあり、銀行口座も作りやすいと考えるとインキュベーションオフィスは魅力的と言えるでしょう。
ただし、貸事務所として利用するには最低でも3万円以上(場所によっては10万円以上)と高額の賃貸料が必要であり、起業前の利益を上げていない会社が支払い続けるには、負担が大きいと言えるでしょう。
安価で場所を確保できるが、信用が低いバーチャルオフィス
対してバーチャルオフィスなら、都心の一等地に3000円から事務所を持つことも可能。費用としては非常に安いと言えます。
しかし一時期バーチャルオフィスが犯罪に使われたこともあり、『バーチャルオフィス』というだけで良い印象を持たれない事もあります。
事業と働き方に合わせて使い分けるのが正解
ベンチャー企業として、これから勝負していこうというのであればインキュベーションオフィスを利用する事の恩恵は大きいでしょう。
しかし、すでにSOHOとして仕事をしていたり、広く事業を展開していくビジョンが無いのなら、負担の少ないバーチャルオフィスで問題ないでしょう。