不妊に50%は男性に原因があった
WHOの調べによると、不妊の原因が男性及び男女両方にあると認められたのは、実に全体の48%という報告がなされています。
不妊は女性側の問題という考えは捨て、不妊治療とその検査は二人で受信する事が求められています。
男性側の不妊の定義
男性側の不妊の原因は、『精子の量が少ない』か『運動率が悪い』事にあります。
WHOが2010年に「精液検査ラボマニュアル第5版」の中で自然妊娠できる条件として下記を挙げています。
- 1度の射精量が1.5ml以上。
- 1ml中に、1,500万個以上の精子が存在している。
- 全体として3,900万個以上の精子が存在している。
- そのうち、32%以上の精子が活発に動いている。
- 正常な形の精子が4%以上存在している。
つまり、この中で一つでも条件を満たしていなければ、不妊の原因となる問題があるとされます。
男性不妊症の検査方法
基本的には『問診』、『超音波検査』、『精液検査』はどの病院でも行います。
問診
『過去に精巣を傷つけた事はあるか』、『おたふく風邪にかかったことはあるか』、『放射線治療を受けた事はあるか』といった過去の病歴に加え、『タバコ』や『飲酒』といった生活習慣の事を質問されます。
超音波検査
超音波(エコー)による、陰嚢内部の検査です。
これにより外部からでは判断しにくい、精巣内部にある腫瘍や結石。精巣上体と精巣と腹部をつないでいる精巣静脈に異常がないかを調べることが出来ます。
精液検査
採取後1時間以内の精液を使って、精子の数や動きを調べる検査です。
所要時間は、おおよそ1時間で終了します。
また、場合によっては上記の検査の他に、精液内の白血球数を調べたり、精子の動きを止める抗精子抗体の有無を調べる場合もあります。
男性不妊の原因の90%が『造精機能障害』にある
『造精機能障害』とは、前述の精液検査委において、精子の数が3,900万個に足りていない、もしくは運動率が低い状態の事を指し、その状態によって細かく分類されています。
1・乏精子症
総精子数が3,900万個に足りていない状態。
2・無精子症
精液の中に、精子が確認できない状態。
3・精子無力症
精子の運動率が32%以下の状態。
4・奇形精子症
正常な精子が、全体の4%以下の状態。
『造精機能障害』が起きる原因
人体の精子は非常に熱に弱く、精索静脈瘤による温度の上昇。成人後のおたふく風邪による40℃以上の高熱によるダメージなど、いくつかの原因は特定されていますが、50%以上は原因不明の『特発性造精機能障害』とされているのが現状です。
不妊療の方法
ウイルスや細菌による炎症の場合は抗生物質の投与、精索静脈瘤の場合には手術が必要になります。
また、軽度の乏精子症や精子無力症に対しては、ビタミンB1、漢方薬などを用いた治療を行います。
しかしこれらの治療により効果が認められない場合、あるいは無精子症と認められる場合には体外受精や顕微授精といった方法を取ります。
家庭でできる精子を元気する方法
確実な治療には専門の病院で検査を受ける事が必要になりますが、生活環境を整えれば家庭でも元気な精子を作る事は簡単です。
食生活を見直す
まずは『ビタミンC』を継続して取りましょう。
ドバイのメディカルセンターで行われた不妊症の男性に対して行った実験では、2ヶ月間にわたり1000mgのビタミンCを摂取したところ、『精子の数と運動率が約2倍も上昇したという結果』が出ています。
全ての人に同じだけの効果があるかは断定できませんが、効果的なのは間違いないでしょう。
また精力増進として昔から知られている『亜鉛』もまた、細胞分裂に関わる栄養素であり、欠かすことのできない必須ミネラルでしょう。
これら必要な栄養素を全て食事から摂取する事は難しいので、上手にサプリメントを活用するのが賢い方法です。
熱が溜まるのを防ぐ
精子は温度が1度上昇するだけで、精子の生産効率が4割減少すると言われる程、非常に熱に弱い性質を持っています。
その為、下着はボクサーよりも熱のこもらないトランクスが望ましいでしょう。
また長時間、イスに座りっぱなしというのも、温度上昇の原因となります。
さらに膝の上でノートパソコンを使うような状況は最悪としか言いようがありません。
飲酒、喫煙はほどほどに
喫煙と飲酒はともに運動量を低下させることが分かっています。
特にタバコは染色体異常の原因ともなりますので注意が必要です。
またアルコールに至っては、アルコールを分解する際に発生するアセトアルデヒドが、精子の生産能力を減少させるとともに、亜鉛の吸収を妨害する事も分かっています。
不妊治療は夫婦の問題
まだ、男性が積極的に不妊治療を受けるケースは多くありません。
しかし不妊の原因が男性にもある事はハッキリと分かっている事実です。
男性の不妊検査は女性のような肉体的な苦痛を伴う事はありません。
また男性の精子を良い状態にすることは、女性の負担の減らすとともに、子供の先天的な異常を減らす事にもつながります。
さらには、『不妊の原因を調べたら精巣がんだった』という事もあります。
恥ずかしいと感じるのは女性も同じ事、受けない理由にはなりません。
女性にばかり負担を掛けない為にも、専門の病院で夫婦二人で不妊検査を受けてみてはいかがでしょうか。