生産・加工・流通を一手に行う第六次産業化は農家を救うか?|トピックスファロー

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2012年10月26日
生産・加工・流通を一手に行う第六次産業化は農家を救うか?

第一次産業である農業は、食品加工を行う第二次産業や流通・販売を行う第三次産業がなければ立ち行かない産業であるといえます。しかし、最近話題になっている「第六次産業」とは、農家が第二次産業・第三次産業を併せて行うことで成立する全く新しい産業なのです。

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農業を変える?「第六次産業」のこれから

農業・漁業・畜産業などの第一次産業は、私たちの食生活を支えるためには欠かせない重要な産業です。
しかし、資源を供給する第一次産業はどうしても他の産業に比べて収入が低くなってしまいます。
物価の下落が進めば進むほど、製造・加工を行う第二次産業や流通・販売を行う第三次産業は原価が安く抑えられるところから資源・商品を仕入れようとしてきます。
つまり第一次産業は物価の下落のあおりをもろに食らってしまうのです。

そんな第一次産業の弱さを補う解決策の一つが「第六次産業」なのです。

第六次産業とはどのような産業か?

第六次産業とは、第一次産業に第二次・第三次産業の要素を加えた新しい産業の形態です。
第四次・第五次があるわけではなく、第一次+第二次+第三次=第六次が語源となっています。

第六次産業では、本来は第二次・第三次産業に野菜・肉・魚などを卸す第一次産業が、商品の開発・加工を行い、自己店舗へ流通・販売を行うというように、第一次産業従事者が第二次・第三次産業を兼任する形で運営されます。

第六次産業の代表格と言えるのが「花畑牧場」です。
酪農業で生産される牛乳を、チーズや生キャラメルに加工して直営店で販売するという形態は、まさに第六次産業そのものです。

市場に左右されない安定した収入が得られる

第六次産業化することによって享受できるメリットで大きいのは「収入が安定する」ということです。
第一次産業の収入は、作物・収穫物を市場に卸すことで得られますが、農業の場合は天候不順や冷害によって不作が発生したり、豊作すぎて生産調整を行わなければならなくなったりというように、自然と市場原理に収入が左右されています。
最近は外国からの輸入野菜も増加しており、日本のTPP加盟が現実のものとなれば一層厳しい情勢に立たされる可能性は高くなります。

しかし第六次産業の場合、作物をそのままではなく調理・加工・パッケージングして販売することが出来るので、市場への卸価格に左右されることなく安定した収入が得られるのです。

ブランド化によって他地方の作物と差を付けられる

第六次産業のメリットの一つには「作物のブランド化」があります。
極端な話、野菜というものは近代的農業で生育すれば、気候風土が違う土地で作っても大体画一化されます。
日本で流通している野菜の多くは、病気に強く生産量が安定している品種なので、作物の画一化はより一層顕著なものです。

逆に、練馬大根や京野菜などの伝統野菜は、生産量が安定しないものの、ブランドとしての価値があるため、市場に出ている品種よりも高い価格で卸すことが出来ます。

このように、作物のブランド化を図ることによって、画一化された品種とは一線を画すことが出来ます。

流通・販売まで直営なので中間コストを削減できる

市場で販売されている商品は、原材料から加工されて販売に至るまでの間にいくつもの中間業者が入っています。
つまり原価50円の野菜を使って作った商品の値段が200円の時、一個あたり150円近くの中間コストが加算されているということになります。
中間コストの多くは流通で、製品の加工や販売を行う上では外すことが出来ず、その分だけ商品の価格上昇を招きます。

第六次産業化することによって、原料の生産・加工・流通までが一本化されるため流通コストが削減できて価格が抑えられるので、消費者にとってもいいこと尽くめになるのです。

第六次産業は法人化が大前提

農家にとっては良いこと尽くめのように思われる第六次産業ですが、いくつかのデメリットがあります。

まず、第六次産業を運営していくためには法人化が必要不可欠になります。
つまり、自分の家族・親族だけで運営するのではなく、従業員を雇用した上での経営が必要になります。
農業だけをやっていればいいというわけにはいかず、農作物と商品の品質管理や、工場での製造員や直営店での販売員などを務めてくれる人材が必要になるのです。

始めるのには多額の資金が必要

運よく農業法人化の許可が下りて、明日からでも第六次産業を始められるという状態になったとしても、雇用や店舗を用意するための経営資金や設備投資費用などで、多額の資金が必要になってきます。
それに経営を軌道に乗せるためには、ある程度の宣伝も行わなければならず、さらに費用が掛かります。
このように第六次産業に限らず、農業法人化の最大のネックとなるのが資金調達です。
日本の農業は慢性的な経営難のため、農協からの借り入れを行っている農家が多く、農業法人化が遅々として進まない原因にもなっているのです。

このように第六次産業を起こすことは一筋縄ではいかないことなのです。

著者:渡辺芳樹

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学生時代からライターとして活動。小さな会社に就職したおかげで、ライター以外に、編集からWEBサイト製作など、幅広く経験。現在はフリーランスとなり、いくつかの会社と契約を結んで執筆活動してます。