再生医療と乳歯バンクの関係
2012年に、京都大学の山中教授がノーベル医学・生理学賞を受賞したことで、再生医療は一躍注目を浴びました。
ケガや病気が原因で使えなくなってしまった組織や臓器を、移植によって再建する再生医療の中でも、特に、自分自身の細胞を使った再生医療は拒絶反応が起きないことから、大きな期待が寄せられています。
従来の幹細胞にはない歯髄細胞の特徴
失った組織のもとになる幹細胞は、従来、骨髄細胞や、赤ちゃんのへその緒から取れる臍帯血が使われてきましたが、骨髄細胞の採取は身体的な負担が大きく、また、臍帯血は生まれたばかりの赤ちゃんからしか採取できないことから、容易に手に入るものとはいえません。
そのような状況で、最近、注目を集めつつあるのが「歯髄細胞」なのです。
歯髄細胞とは、いわゆる歯の神経と呼ばれるもので、自然に抜けた乳歯や抜歯した親知らずに含まれることから、骨髄や臍帯血よりも比較的手に入りやすい幹細胞なのです。さらに、細胞に占める幹細胞の割合は、20代以降、加齢とともに減少することから、成人前の子供の歯である乳歯に含まれる歯髄細胞は、まさに理想的な幹細胞だといえます。
そして、その小さな乳歯から取れる歯髄細胞を、増殖させて冷凍保存し、将来的に利用しようという試みが「乳歯バンク」です。
将来の歯髄細胞の使い道とは
現在、歯髄細胞は、歯周病などに関わる歯科のほか、骨の形成に関わる整形外科、脊髄に関わる神経領域の治療に有効だと考えられています。
また、自分自身だけではなく、家族の再生治療にも使えることから、子供の歯髄細胞を乳歯バンクに預けることで、将来、親が年老いて骨折したり、脊髄の病気にかかってしまったとしても、再生治療に利用可能となるのです。
また、歯髄細胞は、硬組織に保護されていることから傷つきにくいため、再生医療に適しているだけではなく、歯髄細胞からはiPS細胞が効率的に作られることがわかっていることから、iPS細胞を樹立するソース候補として、将来を大いに有望視されている細胞なのです。