こんな症状があったら「もやもや病」かも
「もやもや病」では、本来は細い脳の血管が太く拡張するため、それを撮影すると「もやもや」として見える。その血管は駅前のロータリーのような“交差点”を作っていて、その交差点を「ウィリス動脈輪」ということから、「もやもや病」は「ウィリス動脈輪閉塞症」とも呼ばれる。
この「もやもや血管」には正常な状態よりも多くの血液が流れるため、血管壁が切れやすくなり、頭蓋内に出血を起こすことがある。また、脳出血以外に問題となるのが脳虚血=脳の血流不足だ。
頭蓋内の出血や脳虚血が起きると、
- 片半身のマヒや知覚異常
- けいれん
- 手足が勝手に動く
- 歩行障害
- 腕や手のマヒ
- ろれつが回らない
- 言葉が出ない
- 視野が欠ける
などの症状が出てくる。
また、
- 学力の低下
- 物忘れ
- めまい
- 行動異常
- 落ちつきがない
- 視覚異常(見えにくい)
- 両足の脱力
- 全身の虚脱
- 失神発作
- 頭痛
- 嘔吐
- 吐き気
などの症状が起きることもある。
「もやもや病」症状リスト
脳虚血による症状には、症状が一時的に起きてその後消えてしまう場合と、症状が残る場合がある。24時間以内に症状が消え、元に戻るものを「一過性脳虚血発作」といい、ほとんどは数分から30分以内に症状がなくなる。
「一過性脳虚血発作」は、熱い麺類を冷ますために息を吹きかけたり、笛やハーモニカを吹いたり、大声で歌ったり泣いたりしたとき、あるいは全力疾走したときなどに起きる。「もやもや病」があると、それらの行動により脳虚血になり、先に挙げたような症状が現れるのだ。
また、脳出血が起きると、出血の部位に応じて意識障害(昏睡・うとうと寝)、マヒ、知覚異常、けいれんなどの症状が出てくる。早期に対応しないと命にかかわることも多い。
症状が起きてくるメカニズムと手術の考え方
「もやもや病」の症状は、脳に血液を送る血管がその根元のところで狭くなるために脳に血液が十分行かなくなり起きてくる。そこで、これに対処する手術では、脳に血液を送る別の道を作り、血液が行かないことで脳に起きてくる障害を防ぐことになる。
この病気では脳自体には異常がないので、手術により十分な血液を脳に送ることさえできれば、まったく普通の生活が可能になる。
「もやもや病」は大人も子どももかかる
「もやもや病」は、脳虚血や脳出血で発症するが、傾向としては、10歳までの子どもは脳虚血で発症することが多く、30~40代の大人は脳出血で発症することが多い。ただし、子どもでの脳出血による発症例、大人での脳虚血による発症例も多くはないが存在する。なお、20代や50~60代の人でも「もやもや病」は起きるが、ほかの年代に比べると少ない。
「小児型もやもや病」は早期の対応を
3歳以下の子どもの「もやもや病」は進行が速く、治療が効果を発揮しにくいため、早期の手術が勧められている。手術は生命の根幹である脳を守ることを目的とするが、子どもが子どもらしく生きることにもかかわってくる。この病気を抱えた子どもは症状が起きるのを避けるため、思いっきり運動できず、親は叱るべきときに叱れず、また頭痛に苦しんだり知能低下が進行したりするのだ。そのことも早期手術が勧められる理由となっている。
不安に感じたら病院でまず相談を
「早期発見・早期治療」はどんな病気にも言えることだが、「もやもや病」のように脳が関係する病気では特にそれが重要となる。脳は部位ごとに働きが決まっていて、そこがいったん機能を失ってしまうと、もう元のようには働かなくなるからだ。
子どもの場合、はっきりとした症状が出ていれば親も気づけるが、軽い症状が慢性的に起きている場合には、親が見過ごして、診断・治療が遅れかねない。子ども自身も症状を抑えるため無意識に、大声をあげることや激しい運動を避けていることがあり、その場合はさらに発見が遅れてしまう。わずかなサインを見逃さないよう、親は注意深く子どもの様子に気を配る必要があるだろう。
「もやもや病」の検査内容
「もやもや病」の診断は、症状の確認のほか、MRI(核磁気共鳴画像法)や造影剤を脳血管に注入しての脳血管撮影などの画像診断で行う。それにより、頭蓋内の内頚動脈の末端やその近くに狭くなっているところや詰まっている箇所があり、さらに、脳底部に「もやもや」として見える血管が左右両側に確認できた場合、「もやもや病」と確定する。片側にだけある場合は、「もやもや病の疑いあり」ということになる。
「一過性脳虚血発作」の症状があれば診断は容易だが、病院によっては、てんかんと診断され、抗けいれん薬を投与された後、その後「もやもや病」とわかるケースもある。そのように、ほかの病気と誤診されることも少なくないため、診断結果が腑に落ちない場合はセカンドオピニオンとして複数の病院を受診することも考えたい。
たとえ「もやもや病」でないとしても、先に挙げたさまざまな症状があれば、脳の重大疾患の可能性が考えられるので、気になる人は一度病院を受診したほうがいいだろう。