このイベントにおいてはシンデレラエキスプレス渡辺、宮崎げんき、岡山祐児(オーケイ)など、怪談に一家言ある関西のお笑い芸人が集まり、それぞれ身の毛もよだつ怪談話を披露したが、その中でも松原の語った事故物件絡みの話はリアリティに満ちていた。
事故物件住みます芸人、松原タニシとは?
松原タニシ氏は1982年生まれの34歳。ごくふつうのお笑い芸人として活動していたが、ラジオ・テレビでも活躍するマルチタレント北野誠の心霊スポット調査番組「北野誠のおまえら行くな!」にて、事故物件に住み続けて霊現象を撮影し、成果があればギャラを受け取るという企画の主役に抜擢。以後、「事故物件住みます芸人」「パラノーマル芸人」として名を馳せるようになる。
松原タニシを襲った怪現象とは
松原が現在住んでいる事故物件は3件目。そういった場所に住みはじめてから、数々の怪現象にみまわれるようになったという。ユーモアを交えつつも語られるその怪談であるが、いずれも妙なリアリティに満ちており、背筋が寒くなるものばかりだ。
「昼の内に買ってかばんに入れておいたお菓子が一晩過ぎたらいつのまにか空になっているということが度々ありまして、『北野誠のおまえら行くな!』でこの犯人を突き止めようということで、一晩室内に定点カメラを仕掛けたんです。それで翌朝、映像をチェックしたら、夜中の2~3時ぐらい自分が勝手にふぁ~って起きて、かばんの中を漁ってずっとお菓子を食べてるんですよ」
「あり得ないぐらいネタがスベる日があって、しかもすごい変なタイミングで笑う人がいてるんです。そしたらそのイベントの終わり、出待ちをしてはったのがその変なところで笑ってた人で『タニシさんがネタをしてはる後ろで黒い人影が笑ってましたんで、それをみて連られたんですよ』って話をされたんです」
「行きつけの歯医者のおばちゃんに六甲山のパワースポットに連れていかれて、祝詞を上げているのを聞くことになったんですけど、はじまった途端ありえないぐらいの睡魔に襲われまして、うつらうつらとしてたら、横に座ってたフラメンコダンサーのお兄さんにバッと方を掴まれて『大丈夫ですか!? 今お兄さんの身体から、真っ黒いお兄さんが出ていこうとしてましたよ!』って」
中でもすさまじいのは、彼を写した写真にまつわる怪事である。
きっかけは、先日行われたショッピングモールでのイベント「そこでお客さんと一緒に記念撮影を撮ってたんですが、あるお客さんが『ギャッ!』と悲鳴を上げたんで、どうしたんですかって聞いたら『タニシさんの顔が真っ黒になってます!』って・・・」以来、松原の顔写真は時おり黒く変色するようになったという。
こちらがその実物。これまでさまざまな霊現象に携わってきた三木大雲氏は、MBSラジオ 「北野誠茶屋町怪談」で北野氏からこの写真を見せられ、こう答えたという。
「タニシさん、5年もたないですね」と
怪談和尚が見た、事故物件マニアの末路
日蓮宗蓮久寺の和尚を勤める傍ら、体験した様々な怪談話をイベントで語り続けている三木住職は、かつて松原と同じような人物を知っていると前述のラジオ番組で語っていた。
「タニシさんと違うのは、それを芸のためにやってるんじゃなくて、完全に趣味でやってる、まあ事故物件マニアといったようなもんですね」
彼は健康な青年であったが、そのような生活を続けていく内目に見えて衰弱していき、ついには自ら死を選んだという。
「彼の写真もね、黒かったんです。5年前から」
「松原タニシは5年もたない」の真意とは!?
今回のイベントでは、その三木住職がスペシャルゲストとして登場。三木住職とは初対面の松原、この「死の宣告」ともいうべき言葉の真意を尋ねた。
「実は、「後5年で死ぬ」という意味じゃないんです。『後5年ですべてのものを失う』という意味なんです。死ぬより辛いですね」
三木住職の回答に「それ嫌やわ!」とすかさず放たれた松原のツッコミに客席爆笑。続けて三木住職は穏やかな語り口でこの「黒い顔」の詳細を語りはじめた。
「道ですれ違った人やお寺に相談へこられる方にも、こんな風に顔の黒い方がいらっしゃることがあるんです。わかりやすくいえばこれは虫歯みたいなもの。色が黒くなって痛くなるのは患ってからずいぶん先。実は霊障の多くもそうで、昨日事故現場を通って今日気分が悪くなるということはあまりないんです」
そのような「黒い人」には共通の「匂い」があるらしい。
「すごく焦げ臭い匂いがするんです。タニシさんの体臭じゃなくて(笑)」
この匂いを感知する力は霊感によるものではなく、人間が危機を避けるための本能からくるものだという。
「集団生活をする上で、自分あるいは集団にとってマイナス、攻撃的な人の放つ匂いを、大昔の人間は感じ取れたのかもしれない。それを『胡散臭い』って言うんですよ。タニシさんが5年後すべての運を使い果たし、そのときに助けを求められても自分は助けることができない。だから匂いがするんやと思うんです」
5年後すべてを失う、そして運を使い果たすとは、どういうことなのだろうか
「『運がない=お金がない』ではない。何億あっても不幸な人もいる。人間が幸福を感じるのは、他人を喜ばせられるとき。まさにタニシさんが今やっていることのような。タニシさんの場合は今後不幸をしょいこみすぎて、他人を笑わすことがイヤになるんです」
もっとストレートにいえば、精神的な「ヤバさ」なのだという。
「(前述した事故物件マニアが)死ぬ数日前はもっとすごかった。輪郭も見えなくて、真っ黒でした」
日記に書かれていた彼の遺言は「さらなる事故物件」そして「霊は成長する」。ひとつ目は、自分の死を以て事故物件が出来上がることを意味したものだという意味のようだが、特に気になるのは二つ目の言葉だ。これに関して松原は、共通点が伺える自身の体験を語った。
「以前から、カメラに撮られる時自分の顔認証がされなくて、なぜか足下の何もない空間が認証されるんですよ。でも最近では、それが足下から腰元にあがってきてるんです。それに、他人から『今なんか言ったよね』と、何もしゃべっていないのに聞かれたりすることがあります。自分に憑いてる何かの存在が大きくなり、徐々に自分の身体を乗っ取ろうとしているのかもしれません」
そもそも、温厚な性格である松原がこのような状態になったのは、事故物件の影響のみならず「本人が元から持っている霊的なもの」が原因らしい。松原の実家は仏教に関わりがあり、そのため得体のしれないものを引き寄せる力があるのだという。
それでも事故物件から離れられない!?
だが、松原は「事故物件住みます芸人」を辞められないという。
「不思議なもんで、(黒くない顔に)戻りたくないんですよ。事故物件住むのが当たり前になっているというか。慣れなのか、引き込まれているのか分かりませんけど」
事故物件に住まなければ、自分ではない。イベント後に行った質問の中で、松原はそう語った。
「自分は依存に近いかもしれません。言うなれば、事故物件依存症」
松原タニシと事故物件の今後から目を離すな
これまでの経緯、そして今回のイベントを通じて分かったこと。それは、松原タニシの身に起こっていることが、いわゆる「現在進行形」の怪談であること、そして、この一連の怪談は事故物件の歴史において、押さえておくべき重要なできごとだということだ。
果たして5年後、松原がどのような事態に陥り、事故物件を取り巻く環境がどのように変化していくのか。事故物件ファンは松原タニシの動向から決して目を離さないようにすべきだろう。
松原は12月24日に同じく道頓堀角座で開催されるイベント「おちゅーんLive クリスマス・イブspecial『クスリとも笑えナイト!~ドン引き話でSilent Night~』」にも参加する。このイベントは人間そのものの恐ろしさにまつわる話がメインとなるが、事故物件情報サイトの管理人として有名な大島てるも参加するので、ファンは要注目だ。
(ライター:ビタミン)