東京駅復活!旅情溢れる駅舎の魅力|トピックスファロー

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2015年5月19日
東京駅復活!旅情溢れる駅舎の魅力

2012年に創建当時の姿に復元された東京駅は、電車の乗降のための駅であることに留まることなく東京でも屈指の観光スポットへと生まれ変わりました。褐色レンガに白色花崗岩が帯状に施された駅舎は、レトロ感覚に溢れながらもモダンなセンスを放っています。

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ひとつのアート作品となった東京駅

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どこかへ旅行する際、多くの方は電車を利用するものではないでしょうか。予定の電車に乗り遅れてしまっては大変なことになります。何度も時計に目をやりながら時刻を確かめ、駅に辿り着くなり一気に改札を通り抜けると電車に飛び乗る、というのも旅行をスリリングにする体験かもしれません。

鉄道の駅は電車が発着し、乗降客が乗り降りできれば、本来の役割を果たすことになります。旅行者にとっては、それで充分。駅は素通りするもの。立ち止まって駅舎を眺めるというアクションを旅程の中に組込む人などいません。

ところが、2012年10月1日にリニューアル・オープンした東京駅は、素通りしてしまうには、あまりにもったいないほどの駅へと変貌したのです。日本の中心にあり、最大規模の駅舎そのものが、ひとつのアート作品のようなのです。

創建当時の姿が復元された東京駅

日本人の伝統への憧れ

リニューアル・オープンの当日には、駅舎を利用して様々なアートイベントが開催され、集まった人々によって駅周辺はどこもかしこもラッシュアワーのようになりました。

2007年に始まり5年間かけて行われた東京駅周辺の再開発事業による工事が、ようやく完成してのお披露目だったわけですから、お祭りムードになるのも頷けます。しかも、「東京駅を創建当時の姿に復元する」というふれこみに、首都圏の人々は強い関心を寄せました。日本人の伝統、古いものへの憧れを揺さぶったというわけです。

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工事による長年のベールが剥がされた東京駅は、大正ロマンを感じる赤レンガ造りの堂々とした建物でした。公開の日を楽しみにしていた人はもちろん、偶然見かけた人すら、みな立ち止まって見入ってしまいました。

東京駅の駅舎を振り返ってみると

東京駅が創建されたのは1914年(大正3年)のことでした。当時の日本の建築界をリードしていた建築家・辰野金吾が、イギリス留学の経験を活かして設計しました。褐色の化粧レンガに白色の花崗岩を帯状に施したデザインや、ビクトリア調のドームは、急速に近代化する日本の象徴でした。

ところが、残念なことに創建当時の建物は、第二次世界大戦終盤の東京大空襲によって焼失してしまったのです。終戦後まもなくの1947年、駅舎の再建が計画されました。しかし、予算不足のため完全な形で復元することができませんでした。3階建だった駅舎を2階建てとし、ドーム型の屋根を八角形にして、応急的に東京駅を整えるのが精一杯だったようです。

そこで、2007年に駅舎の安全性と利便性の向上を図りながら、駅舎の恒久的な活用を実現するとともに、文化的遺産である歴史的構造物を未来に継承し、首都東京の風格ある都市空間の形成に貢献するため、復元が計画され、現在の姿になったのです。それ以来、東京を代表する屈指の観光スポットに堂々の仲間入りをしています。


外観のどっしりとした安定感

全長約335メートル、幅約20メートルの建築は、どんなに大きな地震が起こってもびくともしないような安定感が漂います。両端のドーム屋根が装飾的なアクセントとなり、堂々たる風格を放ちながらも、ドームの柔らかな曲線からは気品が漂ってきます。レトロな感覚に包まれる一方で、モダンなセンスが感じられます。

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外観を見上げるだけでも価値はあるのですが、それだけで通り過ぎてしまっては、あまりにも勿体ないことです。内装にも見落としてはならないものが鏤められています。

丸の内南口、丸の内北口の2つのドーム状の屋根の中に足を踏み入れれば、思わず誰もが立ち止まって、上を見上げてしまいます。群衆を見ると、目だけではなく、口を大きく開いてしまっている人までいます。上から落し物が落下することもないので、問題はないのですが、ちょっと無防備ですね。


まるで万華鏡のようなドーム屋根の内装

外観は構造物としての堅固さが印象強く感じられるのですが、内側はクリーム色の柔らかな色彩に包まれ、温かみを感じます。穏やかで控えめな色調の壁は、淡い緑、褐色、白色の柱や窓枠が物静かに装飾されています。
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全てのモチーフが存在を主張することなく、あたかも溶け合うように調和しています。

日本人の控えめな特徴が、こんなところに表現されているのでしょうか。これだと、足早に通り過ぎるのが習慣になっている人だって、歩く速さにスピード感が完全に失われてしまいますね。いつも乗降客で混雑している構内だというのに、カメラのレンズを上に向ける人の姿が絶えることはありません。


真上の天井は八角形となっていますが、各々の頂点には干支のレリーフが施されています。しかし、十二支なのが4つ足りません。8つの角は各々、方角を表しているのです。丑、寅は北東、辰、巳は南東、未、申は南西、戌、亥は北西の方向を示しています。ドームの屋根に登場しない干支は、東西南北を表す卯、酉、午、子の4つです。

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それにしても、ファインダーから覗き見る映像は、万華鏡の世界そのものです。子どもの頃の懐かしい思い出を脳裏に浮かべることに気をとられて、シャッターを押し忘れてしまう人がいても不思議ではありません。

少しでも綺麗な写真を撮って友達に見せたくもなりますが、カメラの角度を変え過ぎて目を回さないように注意することが大切かもしれません。それに視線を少し下げれば、人、人、人ですから、人の流れを掻い潜らなければなりません。


今や東京屈指の観光スポット

電車の駅舎は、乗降客を電車に機能的に誘導すれば事足るわけですが、建築や内装がアート作品になっていると、通勤で使う人にも落ち着きを与えてくれるものでしょう。

また、これから旅を始める人を送り出すこともあれば、帰って来る人を迎えることもあります。東京駅は旅の基点とする旅路が組まれることも多いことでしょう。

アート作品に変身した東京駅はこれからも、旅人の旅情を大きく膨らませる存在となることでしょう。

著者:大林等

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出発日と帰着日だけを決め、全国各地、世界各国を旅してきました。訪問地は国内全都道府県、世界33ケ国になりました。旅先では、観光名所を訪ねるばかりでなく、その地域の文化や歴史により深く触れるように努力してきました。日常の生活では経験できない様々な異文化体験をすることによって、自身の価値観に磨きをかけております。旅での面白い出来事、感動をできるだけ多く皆様に伝えたいという衝動から、様々な媒体で、トラベル系、アート系、グルメ系の記事の執筆活動を行っています。