ファッションブランドの受注生産のメリット
ファッションブランドのセールスの基本は、サンプルを用いた展示会での受注生産が基本です。実はこのスタイルが、新しくファッションブランドを始める際には負担が少なくてすむというメリットなのです。
お店を始めるのであれば、在庫を持つことになり、負担になるからです。
では、お店を始めるよりも負担が少ない受注生産のメリットについて詳しく見ていきましょう。
1着ずつでもOK!用意するのはサンプルのみ
お店であれば、購入してもらう商品を置いていないと商売になりません。しかし、ファッションブランドのセールスでは、バイヤーが実際に見て試着もできるサンプルがあれば十分です。
カラーバリエーションがある場合、お店なら商品としてそのバリエーションの分だけ用意する必要があります。
しかし、ファッションブランドのセールスでは、サンプル1着のみ用意しておけばOK。残りのカラーバリエーションは、色の雰囲気が掴める生地見本があれば十分です。
サイズも同様。仮にサンプルをMサイズとすると、それぞれ他のサイズはサンプルを基準にどれくらい違いがあるのかを説明できれば問題ありません。
デザインしたアイテムごとに1着ずつサンプルがあれば十分にセールスを行うことができます。
負担にならない仕組み!もし在庫を持つとなるとリスクになる
在庫を持つことは様々な点で事業の負担になります。詳しい専門的なことについては、ここでは省略しますが、保管する場所や費用、管理する手間、売れなかった場合の損失など、デメリットが多いことが挙げられます。
必ず売れる保証があれば、在庫を持つことも大切ですが、始めたばかりの事業であれば、売れる保証は無いのでリスクが大きいです。
お店であれば、店の売れ行きや人気がある商品などを参考にして、自分自信で売れる見込みを予想しながら商品の発注などを行います。
もし、予想が外れることがあれば、大量の在庫を抱えることになり、それらはセールなどで割引して売り切ってしまう必要があります。
場合によっては、仕入れた値段より安くしなければ売れない場合もあり、原価割れを起こしてしまい、大きく利益を減らすこともあります。
このようなことから、在庫を持つことがリスクと考えられます。
至ってシンプル!オーダーが取れたものだけ生産する
ファッションブランドの主なスタイルは受注生産です。基本的に在庫を持たないで、オーダーが取れたものをオーダーが取れた分だけ作ります。
このように受注生産の仕組みは至ってシンプルです。
そのためお店のように、いつ購入してもらえるか分からないお客さんを待ちながら、たくさんの商品を陳列して、さらにストックルームに在庫も保管しておく必要もありません。
オーダーをもらった商品だけ作るので、せっかくサンプルを作ってもオーダーが1点も入らなかったアイテムも出てきます。
この場合は廃品番となり、生産されることなくサンプルだけ残ることがあります。
これは、ファッションブランドの規模の大きさに関わらず起こることで、有名ブランドであれば、廃品番になったサンプルは貴重でコレクターが欲しがるアイテムでもあります。
このように、受注生産のシステムはファッションブランドにとって、負担にならない仕組みとして定着しています。
受注生産なら当たり前!減産も日常茶飯事
実際に受注生産を行っていれば、様々な問題やトラブルが起こります。商品をまだ生産する前にオーダーを取るので、いざ生産を開始する際によく起こる問題が、以下の4点です。
1、サンプルと違う生地の使用や仕様変更がある。
2、オーダー数が少ないと、工場の都合やコストの関係で生産ができない。
3、出来上がった商品を検品したところ、不良品があり、オーダー数に足りない。
4、大幅に納品できる時期が遅れる。
在庫を持っていれば、オーダーを受けた際にすぐに対応ができるか、そもそも起こらない問題です。これは受注生産ならではの問題と言えます。
このため、上記のような問題があれば、それぞれ対応をしなければなりません。
一般的なファッションブランドでの基本的な対応を例に挙げると、
1、サンプルと違う生地の使用や仕様変更がある。
この場合、対応は2通りあります。
変更箇所が大幅に商品のデザインや仕様を変えることがあれば、オーダーをもらったバイヤーに確認を取ります。
逆に変更箇所が小さい場合、例えばボタンの色が少しだけ違うなどの程度であれば、そのまま生産を進めてしまいます。
この場合は大した問題ではありません。
事前確認を取れば、そこでキャンセルを受ける場合もありますが、商品自体のデザイン性や魅力が損なわれることでは無い限り、キャンセルになることは少ないです。
2、オーダー数が少なく、工場の都合やコストの関係で生産ができない。
工場へ生産を依頼する場合は、最低でも1型に数枚〜数十枚の生産枚数がないと引き受けてくれない場合があります。
また、生産枚数が少ないと生産コストが高くなり、予定していた金額とのズレが起こり、採算が合わない場合も出てきます。
できる限り、生産ができるように工夫をしますが、どうしても生産ができない場合はオーダーをもらったバイヤーへ、他のアイテムへの変更、もしくはオーダー自体のキャンセルを選択してもらいます。
バイヤーであれば、生産の都合などを知っている方が多いので理解を得ることが多く、他のアイテムへ変更などで協力してもらえることで収まります。
3、出来上がった商品を検品したところ、不良品があり、オーダー数に足りない。
在庫を持たない受注生産であれば、出来上がった際に不良品などが出てしまい、オーダー数より商品数が少ないことがあります。
この場合は、たくさんオーダーをもらっているバイヤーや、納品数量が減ってしまっても負担が少ない店舗への納品数量を削ることで対応します。
これを「減産」と呼んでいます。
実は、受注生産のシステムではこの減産は日常茶飯事で、バイヤーもある程度覚悟をしています。
もちろん、減産に関しては良い影響はありませんが、「ある程度起こりうること」として、認知されています。
もちろんこれを防ぐために、不良品が出やすい商品などは、あえて数点多く生産するブランドもあります。
4、大幅に納品できる時期が遅れる。
オーダーをもらったものの、いざ生産をするとなると、工場の空きや資材の手配などで大幅に納品できる時期が遅れることがあります。
この場合、2の生産ができない時と同じく、オーダーをもらったバイヤーへの確認をすることになります。
バイヤーにとっては、他のブランドのアイテムと組み合わせて、売り出す時期やプロモーション計画を立てていることもあります。
そのため、納期が遅れる際にはキャンセルが出る場合もあります。
上記のように、問題があればオーダーをもらった分も、減産になることやキャンセルとなる場合があります。
ここでのポイントは、
「受注生産のスタイルをとるファッションブランドでは、減産やキャンセルは日常茶飯事である」
と言うことです。
もちろん、キャンセルにならない方がイメージは良いですが、とにかくオーダーをもらうセールスに集中して、集まったオーダーから起こった問題は、その都度対応することができます。
これも、受注生産ならではのリスクを少なくできるメリットです。
小規模なファッションブランドでも参入できる最大の理由
ファッション業界に定着している受注生産のスタイルは、始めたばかりのファッションブランドでも負担が小さい特徴があります。そのため新規参入もしやすく、在庫を抱えるリスクがない効率的な生産方法と言えます。
このメリットを最大限に生かすことで、より簡単にファッションブランドを始めることができます。
【連載】ファッションブランドの作り方