在庫が山積みで倒産
事業をやっている方ならば当たり前にお分かりいただけると思いますが、企業が倒産するのは「払わなければならないお金が払えなくなった時」です。銀行口座にお金がなくなったら、企業は割と簡単に生涯を終えることになります。
黒字倒産という言葉があります。売上が上がってようが、帳簿上は利益が出てようが、仕事が忙しかろうが「明日お金が入ってくるんです(泣)」と泣きつこうが、払うべきタイミングで口座にお金がなければ「債務不履行」≒「倒産」になるのです。
仕入れをするということはつまり「現金を在庫に変える」ということです。なんかの拍子で在庫が売れなくて、現金がなくなって、サドンデス(突然死)ということにならないように神経を使うのが、胃に優しい経営です。
とは言ってもなりふり構わなければ生き残る道もありますが。
うちの親父も事業をやってますが、社員への給料未払いや、借金の超分割払いやら、消費者金融やらを駆使して、わりと最低な経営をしています。でも、なんだかんだでまだ倒産していません(休眠、負債漬けの会社ですが)。
「父さんが倒産した!」というギャグをかませるのはまだ先になりそうです。
注意するのは在庫回転率
「必要な現金がなくならないようにする」のには、1.銀行でお金を借りる
2.自社から他社への支払いを先延ばしてもらう
3.自社への支払いはなるべく早くてもらう
など、口座の現金を多くするテクニックもあります。
しかし、基本は、
1.売れる商品を仕入れる
2.仕入れ過ぎない
3.頑張って売る
の3つなのです。
そんな在庫を考える際に「在庫管理うまく出来てる?」という参考の指標、「在庫回転率」というイカした数字があります。
会計の話になりますが、難しくないのでちょっとみてください。
「在庫回転率」=「売上/(今ある)在庫金額」
呼んで字のごとし「在庫がローリングしている率」です。これを言い換えると「仕入れて、売る効率」を表す数字です。
例えば「売上5,000万円」の期末の在庫が「500万円」だったとします。
そうすると、「5,000万円/500万円」で在庫回転率は「10」となります。
同じ5,000万円の売上を上げることができるのであれば、在庫の金額が「250万円」であると、在庫回転率は「20」となり、効率的に「買って売って」をしていることになります。
最初に説明したように、現金を在庫に変える量が少なければ少ないほど現金が増えます。そうすれば、まさかの時の金欠に備えることができます。なので、なるべく在庫金額を下げたいものですよね。
在庫金額を下げると、分母が減るので、在庫回転率は上がるのです。
逆に5,000万円売上で、在庫金額が5億(在庫回転率は「0.1」)とかになると、劇的な販売の強化がなければ「在庫がなくなるまで10年」と、乳飲み子がランドセルを背負うような計画、下手すりゃ反抗期になってしまいます。
在庫の保有量の参考に
新規事業として流通業を始めるときに「どれくらい在庫をもつか?」という悩みがでてきます。もちろん財布の中身と相談はするのですが、例えばアパレル業で年間5,000万円の売上を考えているのであれば、一般的な在庫回転率から在庫の参考金額を算出することができます。
中小企業の在庫回転率を見てみましょう。
こんな時に役に立つのが、僕らの政府統計。払ってよかった税金(怒)。
中小企業実態基本調査(平成25年確報)から「織物・衣服・身の回り品小売業(小規模企業表より)」の売上と在庫額を出してみました。
ふんどし専門店と、西陣織の老舗がひとまとめですが、西陣織のふんどしがないわけじゃないので(以下略)。
「売上:1,266,394」/「在庫金額(棚卸資産):223,555」=「在庫回転率:約5.7」
※数値は業界の合計です。※単位は百万円。
まぁユニクロとかしまむらが10-12とかなんで、頑張っている方じゃん?
この参考の在庫回転率を「売上:5,000万円」の目標に当てはめて、期末の在庫金額を逆算します。
50,000,000 / X = 5.7
50,000,000/5.7 = X
で
X = 約8,771,930円
って出るわけですわ。
あくまで参考ですが「年商5,000万円を目指すアパレルの計画なら期末の在庫が1,000万円近くあってもいいんじゃない?」ということです。
ふー。参考になりますね。在庫ローリング。
在庫回転率は商品やスタイルによって違う
しかし、在庫回転率、大小どちらが良いのかは、一概に言えません。在庫が少なすぎると「売ってくれ。今、ココで」というような場合に、対応できなくなり販売チャンスをロスる可能性あります。低価格商品や、好みがあまり影響しない商品なら、貧乏人にたくさん売りつけなければならないので、在庫回転率は高くなりますし、高級で希少な商品なら逆に在庫回転率は低くなります。同じアパレルでも、ユニクロとグッチの在庫回転率は大きく違いますし、比較することにあんまり意味はありません。
在庫回転率は改善の目安
上記のように「在庫回転率」は業界や、競合と比較しての参考にはなります。しかし、各社の商品の特徴や流通ルートからも影響するものなので単純に比較はできません。しかし、それは言い換えれば「在庫回転率」は状況がある程度同じである『自社』の継続的な診断をする数字」であるといえるでしょう。前期に比べて在庫回転率が変わっていれば問題に気づくための参考となります。また、在庫回転率の改善を目標とすれば、現場の販売ロスなどと照らしあわせて改善とその結果がわかるのです。