バイオフィルムの破壊が80歳まで歯を守るたった一つの方法だった|トピックスファロー

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2012年10月5日
バイオフィルムの破壊が80歳まで歯を守るたった一つの方法だった

プラークバイオフィルム。日本でいう歯垢の事ですが、歯周病予防にはこのバイオフィルムについて知る必要があります。どうして歯周病の研究が進んでも歯磨き位でもっと手軽な方法が出てこないのか。バイオフィルムを調べると歯磨きの重要さが分かってきます。

都内在住のフリーライター。犬猫と仲良く暮らしてます。
  

バイオフィルムとは

日本語では『菌膜』。複数の微生物が集合して作る構造体のこと
最も有名なのは口の中で歯周病菌が作る歯垢(プラークバイオフィルム)ですが、バイオフィルムそのものは自然界のいろんな場所で見ることが出来、基本的には水と微生物がいればどこにでもあると思って間違いありません。

例えば台所の排水溝がヌメヌメしているのもバイオフィルムの仕業ですし、コンタクトレンズに発生しては眼病の原因となることもあります。石油を運ぶパイプラインにもバイオフィルムが発生し、まるで不健康な人の血管の様にパイプを詰まらせることが問題になっています。

ちなみに悪役の代表のように言われるバイオフィルムですが、内側にいる微生物が人にとって好ましい働きをする善いバイオフィルムももちろんあります。
例えば、お酢はお酒を発酵させて作られるのですが、その過程でお酒の表面に酢酸菌によるバイオフィルムが形成されます。これが外から侵入する悪い細菌を防ぐ役割を果たし、お酢作りには欠かせません。
昔のお酢職人が一番恐れていたのは、何よりも地震だったそうです。

人類の敵『プラークバイオフィルム』

数あるバイオフィルムの中でも口の中で作られるものは口腔内バイオフィルム。
さらに歯の表面や歯周ポケットに発生する物は、特にプラークバイオフィルムと呼ばれ区別されています

また口臭の元とされる『舌苔』という、下の表面が白くなった物もバイオフィルムの一種ですが、プラークとは別の細菌で構成されており、取り過ぎると逆に口臭の元になると言われています。

プラークバイオフィルムの特徴

バイオフィルムは、表面にネバネバした膜の様なバリアーを張ります
このネバネバの粘着力が一ヵ所に張り付く力を強くし、水で流した程度では剥がれることはありません。
川の中にある石にバイオフィルムが作られるのも、毎日水を流している排水溝にいつの間にかへばりついているのも、このネバネバが原因です。

さらにこの膜は文字通りバリアーとして機能し、外から来る他の細菌や薬品から内部にいる細菌を守る役割をします
排水溝をキレイする洗剤の注意書きに、換気や手袋を使用するようにという記載があるのは、皮膚や粘膜に悪影響が現れるほどの強い薬品を使わなければ、バイオフィルムのバリアーを破壊できないということです。

しかも厄介なことに、バイオフィルム内の細菌は、分裂活動が通常の細菌と比べて非常に遅くなることも分かっています。その為、細胞分裂に作用して死滅させる抗生物質も効きにくくなってしまいます

その上、プラークは石灰質と結合し『歯石』になる事で、物理的な強度を高めて歯ブラシ程度では手が出ない固さになってしまいます

これらの事から、一度バイオフィルムが形成されてしまうと、取り除くのが非常に困難だということが分かりますね。

プラークバイオフィルムができるまで

プラークの形成にはいくつかの段階を経る必要があります。

1. ペリクルの吸着

ペリクルとは、唾液に含まれる有機物です。
最初のきっかけは細菌ではないんですね。

2. 初期細菌の定着

ペリクルが付くと、ペリクルのタンパク質を好む細菌がその上を覆っていきます
このペリクルを好む細菌の事を『初期細菌』。そしてある程度の大きさまで育った状態を『初期定着菌群』と呼びます。

3. 後期細菌の襲来

初期定着菌群が形成されると、今度はその初期細菌を好む別の細菌『後期細菌』が集まり始めます
初期細菌の時と同じように、今度は後期細菌が勢いを増し『後期定着菌群』と呼ばれる状態まで成長します。

4. バイオフィルムの完成

後期定着菌群が形を成してくると、ここで表面にネバネバした膜が作られます。
この状態が歯垢(プラークバイオフィルム)と呼ばれるものですね。

この第4段階まで来ると、薬用成分もバイオフィルムの中までは届かなくなりますし、歯を丈夫にするというフッ素もなども途中で邪魔され効果を発揮できません。
つまり歯垢が溜まってきた時点では後手に回っているという事です。
歯周病予防は、いかにバイオフィルムが作られる前に除去できるかにかかっています。

効果的なプラークバイオフィルムの除去方法

歯磨き以外にありません。
意外かと思われるかもしれませんが、薬品も抗生物質も効かない相手に対しては物理的手段を持って剥がし取るのが最も効果的な方法なのです。

しかしプラークが好むのは食べかすが残っている隙間部分。そこまで完璧に磨く事は出来ません。
また歯石まで成長してしまっては歯ブラシを使っても取れませんし、自分で無理に削ろうとすれば、歯や歯茎を傷める結果になってしまいます。

そのしつこい歯石や歯周病ポケットの奥にあるプラークを取るには、歯科医によるPMTCという歯垢の除去作業を受ける必要があります。しかもプラークは24時間休みなく作られ続けますので、一度ではなく定期的に通う必要があります。

バイオフィルムを作らない事が歯周病予防の第一歩

全ての歯周病はバイオフィルムが作られる事から始まります。
一度できてしまったバイオフィルムを完全に取り除く事は困難ですが、第1~第3段階までであれば除去は比較的簡単。
つまり毎日の歯磨きは、唯一にして最も効果的な歯周病予防という事は間違いなさそうです。

しかし歯並びや口の大きさなど、口内環境は誰一人として同じ人はいません。
PMTCを受けつつ、歯医者で自分に合った歯磨きの仕方を教えてもらうのが、最後まで自分の歯を守り抜くのに必要なことかもしれません。

著者:坂下モド

都内在住のフリーライター。犬猫と仲良く暮らしてます。
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ペットを飼っている関係上、ペット関連の記事を多く執筆。現在ではジャンルを問わず、政治・経済なども