夏を乗り切るエコグッズ
着物を脱ぐだけではどうしようもない夏の暑さ。江戸の人たちはどうやって乗り切っていたのでしょう。
すだれ
窓にかけて日差しを遮るアイテムですね。
平安時代から使われていた道具で、もともとは貴族の御簾(みす)として用いられていました。
ブラインドのように窓の目隠しとして使われることが多いようですが、その真価は窓の外に吊るすことで発揮します。
窓を閉め切っても部屋の中が暑くなる原因は、直射日光と赤外線が部屋の中に差し込むことにあります。
その為、部屋の中でカーテンを閉めても窓の内側(つまり部屋の中)まで光が差し込み、そこで熱が発生。熱はジワジワトと部屋を侵食していくでしょう。
しかしすだれを窓の外に吊るすことで、部屋に入る前で日光を遮断。しかも竹の隙間から空気が入るので風通しも問題ありません。
もし窓を閉め切ってエアコンを使うのでしたら、窓とすだれの間に10センチ程度の隙間を作ると、そこに冷たい空気の層ができ、すだれと空気層で二重の断熱効果が期待できます。
よしず
すだれをもっと大きくしたものです。
玄関先やベランダなどに立てかけるようにして使用するのが一般的です。現代風に言えばグリーンカーテンと同じ使われ方をしていました。
これもすだれと同じく直射日光を遮る為に使われていますが、広範囲をカバーできるため、より高い効果を期待でます。
畳
現在でも愛用されている畳ですが、古事記の時代から使用されていたという記録が残っています。
畳が今なお使用されているのは、その効果が日本の気候にベストマッチしているから他なりません。
い草で作られた畳は湿気を吸収する効果が高く夏を快適にしてくれるばかりか、内部に蓄えた空気は温度を一定に保ってくれるので、寝転ぶとヒンヤリとした冷たさをあたえてくれます。
さらにはスポンジ状の内部が有害物資を吸着し空気をきれいにしてくれ、さらにい草の香り成分にはリラックス作用がある事も確認されています。
またきちんと手入れをすれば20年は持つというのですから、畳の力恐るべしといった所でしょうか。
すのこ
主にヒノキを組み合わせて作られた敷板の事。
すのこを使う事によって隙間を作り風の通りを良くするのはもちろん。地面からの放射熱を防いでくれますので暑さ対策に効果を発揮します。
冬のあったかエコグッズ
建築などはいかに暑さをしのぐかに重点が置かれていた江戸において、寒さ対策は死活問題だったようです。
こたつ
日本を代表するダメ人間製造機。一度足を踏み入れるとそこから抜け出すのは困難なのは周知の事実。
どれほど暖房器具が発達しようとも、こたつそのものが無くなる事はないかもしれません。
その歴史は室町時代にさかのぼり、当時は消えかけた炭の上にやぐらと布団をかぶせて使用していたので、スタイルは現代とほぼ変わっていないようです。
現在よく見られる掘りごたつが作られたのは、なんと電気こたつより後の明治42年。イギリスの陶芸家『バーナード・リーチ』が最初に作ったというのも面白い話ですね。
火鉢
今でいえばストーブになりますが、その火力はとても弱いものでした。
灰の中で炭を燃やした暖房器具ですが、部屋全体を暖めるほどの強さはありません。せいぜい個人用暖房器具といった感じです。
しかし、囲炉裏のように薪を燃やすわけではありませんので、煙も出ず密閉した室内で火を起こすにはこれ以外に方法がなかったというのが正直な所でしょう。
さすがに今では使われていませんが、明治時代までは普及していたようです。
湯たんぽ
入れ物の中にお湯を入れ暖を取るアイテム。冬場の冷たい布団の中に入れておけば朝までぬくぬくで過ごせます。
時代は変わり、容器も移り変わってきましたがお湯を入れて暖を取る事に変わりはなく、そう考えると完成度の高い商品なのかもしれません。
カイロ
使い据てカイロは冬場の外出に欠かせません。
それは江戸時代でも同じだったようで、当時は温石(おんじゃく)と呼ばれていました。
もちろん、今のように化学反応を利用した物などあるはずもなく、火鉢で熱した石を布で包んで持ち歩いていたようです。
現代まで受け継がれる生活の知恵
簡単な物だけを紹介してきましたが、他にも「腹巻」「股引」「うちわ」などなど、日々を快適に過ごす為のエコグッズはまだまだありますし、打ち水のようなアイデアも含めればとても紹介しきれる量ではありません。
しかし共通して言えるのは、どれも現代でも有効に使える知恵であるという事です。
スイッチ一つで快適な環境を作れる時代ではありますが、たまには古に思いをはせ、不便を楽しむくらいの余裕があってもいいのかもしれません。