FX市場を混乱させる超円高、解決する方法はあるのか
かつて1980年代に起こったバブル経済は、日本の土地価格の暴騰と円高ドル安の進行の相乗効果によって、いつまでも続くような錯覚さえ覚えるほどの隆盛を見せたものです。
しかし、バブル崩壊から「失われた20年」が経過した今、再びの円高ドル安は逆に日本の景気を浮揚させるどころかむしろマイナス方向に圧迫させているとさえ言えます。
なぜ今、1ドル80円以下という超円高状態が発生しているのでしょうか?
アメリカ経済への不信が円買いに舵を切らせた?
円やドル・ユーロなどの通貨の価値というものは、通貨を発行している国への信頼のバロメーターとして機能するものです。つまり、アメリカへの不信感が高まったことによって相対的に超円高ドル安状態になっているとも言えます。
アメリカへの不信感の原因といえるのが、2006年のサブプライムローン問題と2008年のリーマンショックです。不動産バブルの崩壊とそれに伴う最大手証券会社の破たんは、アメリカ経済そのものへの不信感を決定的なものにしてしまったと言えます。
多くの投資家は「米ドルは危ない、他の通貨に換えよう」という思惑に従い、未だに強い日本円の買い建てを一斉に行い、有力投資家やヘッジファンドの潤沢な資金が円相場に流れ込んだことで、超円高が進んだ…というわけなのです。
日本円の供給量が足りないから円高になる?
超円高状態になっているもう一つの原因として言われるのが、「日本円の供給量(マネタリーベース)が足りない」ということです。
市場価格は需要と供給のバランスで決まるものですが、需要に対して供給が少ないと価格は暴騰します。この原理は商品だけでなく通貨にも通用するのです。
日本円を供給しているのは日本の中央銀行である日本銀行ですが、日本銀行としては日本円の供給を急激に増やすとインフレになるため、マネタリーベースの増加に対して消極的な面がみられます。
かといって、超円高状態が続くことは日本経済にとって好ましいことではないので、日本銀行でも市場介入による円高解消策も行っています。2011年10月の介入では過去最高規模となる8兆円の市場介入が行われましたが、効果は長続きしなかったという結果に終わっています。
円高がFXに及ぼした影響
FX的には「円高が続けば、海外通貨をより安く買える」というメリットがあると言えますが、実際の市場では初心者にもわかりやすかった米ドルに手を出しにくい状況と、米ドル以外の通貨相場の激変を招く原因となっています。
たとえば1ドル90~100円台を推移している時期は、相場の上がり下がりがはっきりしているので売買のタイミングさえわかれば、初心者でも損失を出さずに儲けることも十分に可能な安定した市場でした。
しかし、現在の1ドル70~80円台では円安に転ずる材料が見えてこないため、うかつに米ドルに手が出せない状態になっているのです。
初心者にもわかりやすかったはずの米ドル相場が、波が読めない状態になっているため初心者どころか玄人でも破産しかねない荒れ場になっているのが現状なのです。
円高を解消するにはスイスを見習うべき?
円高を解消するにはどうするべきか。その答えの一つが2011年9月に起こったスイスフランの暴落です。
これは「1スイスフラン=1.20ユーロ」を基本水準とするフラン安を目指したスイス政府による市場介入によって発生したもので、「外貨の無制限購入」という市場介入の禁じ手を打つことも辞さない構えで行われたのです。
2012年現在、スイスフランはこの水準を保ちながら推移しているところを見ると、スイス政府の介入は大成功を収めたものといえます。
日本も円高を緩和するためにはこのくらいの強硬策を打つべきなのかもしれませんが、外貨の無制限購入は経済体力が続く限り止めることができない我慢比べで、投資家・ファンドと共倒れになってしまう可能性が高いのです。
時勢を見極めるのが肝心
結論を言えば、現在の超円高は、アメリカ大統領選挙が信用回復に繋がれば解消する糸口が見えてくるものと考えられます。
つまり、日本円に流れ込んでいるマネーが大手を振って米ドルに還流する時期が来ないと円安への転進は起こらないものといえます。
経済情勢でもFXでも、時勢の流れはどちらに向いているかを正確に把握して動かなければ損失を被るだけ。
情勢が悪いと思ったら力を分散せずにじっと耐えることも大事なのです。