抜かない矯正だから速い!を必要以上にプッシュするクリニックは危険?
歯列矯正でググってみると、「抜かずにキレイ」「最短○○日」といった文字が躍る。これが本当ならこんなに嬉しいことはない。出来れば抜歯なんかしたくないし、早く終わるに越したことはない。
でも、ここで間違いなく言えるのは、抜かないで済むかどうかは患者によって異なるということだ。抜かなくても歯の凸凹を揃えられるケース、顎を広げて抜かなくても出来たスペースでなんとかなるケース、抜かなければどうにもならないケース・・・いろいろとあるらしい。
つまり、その人の口腔の状況によって適切な治療は変わってくる、ということだ。そして言うまでもなく、方法によって治療期間も変わってくる。大事なのはその適切な治療法を矯正担当医が正しく見極められるかどうかにかかっている。
「矯正」「失敗」でネット検索してみると、正しい治療法を選択しなかったばかりに、いったん揃った歯並びが戻ってしまった、原因不明の体調不良(不定愁訴)がおきた、といった体験談が沢山ヒットする。
もちろんネット上の情報だ。どこまで信じていいのかはわからない。けれど、ここまで膨大な量となると「全くの眉唾物だ」と無視することは出来ない気がする。
矯正歯科はそういう側面を明るみに出すべきだし、必要以上に「抜かない」をプッシュすることは、きっと誠実ではない。それだけならまだしも間違った治療法で患者を泣かせることは絶対にしてはならないのだ。
安いのはうれしいけど、そんなに安くて大丈夫?
良心的な価格帯で治療を受け付けている医院は結構ある。しかし一般的なワイヤーを利用した歯列矯正の場合、上下両方を治療したとすると少なくともトータルで60万円ぐらいはかかるのが相場のようだ。これが目立ちにくい器具を使ったり、舌側矯正にしたりするとその都度課金が発生する。
筆者の場合は下の歯は目立ちにくいワイヤーを使用した唇側矯正(表から見える矯正)、上の歯は舌側矯正(表からは完全に見えない)をお願いしたが、結局治療完了までにかかりそうな値段は全部で120万弱ぐらいになりそうだ。
高いから安心、とは言い切れないけれど、あまりにも低価格を売りにしている医院にはなぜそんなに安いのかを聞いてみた方が良いかもしれない。その理由をきちんとおしえてくれなければ、他のクリニックでの診療も視野に入れた方が賢明である。
日本矯正歯科学会からのお墨付き「認定医」
クリニック選びでわかりやすい指標の一つが「認定医」かどうか、だ。認定医とは、日本矯正歯科学会によって公式に認定された歯列矯正専門医師のことである。以下は学会ホームページからの抜粋だ。
『これは矯正歯科医療の水準を維持し向上を図ることによって一般市民の皆さんに適切な医療を提供するために行われているものです。そのために学会は、矯正治療に関して適切かつ充分な学識と経験を有するものを「日本矯正歯科学会の認定医・専門医」としています。』http://www.jos.gr.jp/roster/
病院選びで全く見当がつかない時は、まずこの学会のサイトで近所の認定医を探してみるのも良いかもしれない。
料金説明は明確か
一般的な矯正歯科では、基本料とは別に月々の調整費用がかかるところがほとんどだと思われる。基本料金が安くても治療がいつまでも終わらずに調整費用だけがかさんでいく・・・という事態を招かないために、治療期間と料金については治療前の相談の段階で言及しておくべきである。
ここでお茶を濁すクリニックはグレーだ。注意したほうが良い。ちゃんとしたクリニックなら患者の歯の状態を検査した後であれば、どれくらいの期間がかかりそうで、その場合の費用はこれぐらい、と大まかなりにも明示してくれるはずである。
矯正歯科専門クリニックかどうか
矯正歯科専門クリニックかどうかは、是非とも考慮していただきたい。現在の日本の医療制度では一般歯科医の資格さえもっていれば治療は可能であるらしく、教育を全く受けていない歯科医が矯正治療に手をだしている場合も考えられるのだ。
やはり餅は餅屋。避けられるトラブルは避けて、専門家にお任せしておこう。安心というだけでなく、治療中のワイヤーが外れたとか痛みが強すぎて眠れないとか、そういうトラブルにも迅速に対応してくれる。
クレンリネスは誠実さのバロメーター
クリニックの清潔さには、そのままそのクリニックの誠実さが表れる。やはり医療機関であるから、院内の雰囲気によって患者の緊張感は左右される。初めて来た患者がリラックスできる環境を整えているということは、患者の側に立ってくれるということ。そういった部分にお金をかけようという気概があり、こちらの目線に立とうとしてくれる姿勢が見えると、患者としては信頼度も上がるというものだ。
質問にはきちんと答えてくれるか
どういう仕組みで歯が動くのかとか、今どういう状況なのかとか、我々患者は当然歯列矯正の素人なので説明を受けても半分くらいしか理解できないかもしれない。しかし、だからといってこちらに質問する隙も与えてくれないようなクリニックでは医者と患者の信頼関係はどんどん薄れて行ってしまう。
歯列矯正は何年もの治療期間と、さらに何年もの治療後のメンテナンス期間が必要だ。もしかしたら一生お世話になるかもしれないクリニック、出来るだけ良好な関係を築いていくためにも、質問しやすい雰囲気かどうかを見ることは重要だ。
ちなみに筆者の主治医は毎回の調整時には何の説明もなく始め、終わった後に事後報告するタイプであったので、不安を感じていることを説明した。結果ちゃんと施術前に何をやるかおしえてくれるようになった。意外と何を聞いても詳しく答えてくれるので、気になることがあったらすぐに相談することをオススメしたい。
一つのクリニックだけで決めてはダメ
一生もののきれいな歯のために労力を惜しんではならないこと、それが病院選びである。既に述べたように最適な治療方法は患者一人ひとりによって全然違う。
A医院が示した治療方針が最善手ではないかもしれない。少なくともセカンドオピニオン、出来ればサードオピニオンまで利用して、自分に一番合ったクリニックを選んでほしい。
ネットにはいろんな口コミがあふれているけれど、最終的に判断するのは自分である。自分の感覚を信じることだ。
最後に、そろそろ治療期間が終わりそうな筆者から。ものが食べられなくて辛い時期もあったけれども、本当に矯正をして良かったと思う。これは信頼のおける先生と衛生士さんのお蔭だ。貴女も信頼のおける主治医に巡り合えますよう、切に祈っている。