うつは甘え?人々のうつ病に対する無理解の根は深い
うつ病は今や5人~10人に一人は掛かるといわれるほど身近な病気となっていますが、適切な治療がなかなか受けられない病気でもあります。なぜなら、うつ病患者の周囲にはうつ病の実態を理解しようとせずに接する人が未だ多く存在しているからです。
なぜ、うつ病に対する無理解はこのように根深いものになっているのでしょうか?
精神科・心療内科への偏見
うつ病の治療は精神科または心療内科で行われていますが、精神科・心療内科には昔からある種の偏見が付きまとっています。「精神病=鉄格子のはまった病室から一生出れない」、「精神病=キ○ガイ」という偏見です。
この偏見はたとえ入院しなくても、精神科・心療内科の門をくぐっただけで付きまとってくるものです。その為、家族がうつ病を患っていても「うつ病というだけでも耐えられないのに、精神病院に行くなんてもってのほか」と、適切な治療を受ける機会を奪うケースは未だに後を絶たないのです。
うつ病の病態自体への偏見
うつ病は自分でもどうしようもないくらいにやる気が沸かなくなり、食欲の減退などの体調不良も現れますがその症状の多くは精神面に集中しています。そして心や精神というものは存在していても目には見えないものであるため、精神に起こる症状は患者自身の行動や訴えから見取らなければなりません。
その為、医学的な知識がない人からすればうつ病は詐病に見えてしまいやすいのです。
うつ病の主な症状である「やる気の無さ」は、困ったことに傍から見ると怠けているようにしか見えません。そして「怠け癖は本人の性根の問題」という結論からスパルタ教育的な対応で直そうとするようになり、うつ病の根本的解決を遠ざけてしまうのです。
酷いケースでは「うつ病はうつる」と虚偽を広めて治療の機会を奪い排除しようとする人さえいるのです。
根性論からの偏見
世の中には肉体的・精神的な無理を周囲に強いて出来ないというと「気合が足りない」「奉仕精神が足りない」のだ、という根性論を振りかざしてくる人が結構多く居るものです。
この手の根性論に染まっている人は、「病気に罹る=根性なし、気合が足りないからそうなる」「病気の治療=気合を入れれば治る」という偏見に満ち充ちているで、適切な治療を受ける機会を邪魔する事しかしてきません。
このような根性論主義者がうつ病患者の周りにいると、「お前は甘えているだけだ」「うつ病なんて病気はない」「気合を入れろ」と無理解を振りまくどころか、喝を入れるつもりでうつ病を悪化させて来るのです。
偏見こそがうつ病の理解を遠ざける原因
このように、うつ病が正しく理解されずに「詐病」「甘え」と言われた挙句、適正な治療を受ける機会を邪魔されているのは、様々な偏見があるからなのです。
もしもあなたが「風邪を引いた」と申告したなら、周囲の人は「身体を温めて早めに寝ろ」とか「病院に行け」と適切な処置を指示するでしょう。これは風邪という病気に対する偏見が無いからです。
しかし、「うつ病を患った」と申告したならば、「甘えるな」「気合が足りない」「移るから寄るな」「恥ずかしいから精神病院に行くな」と言われるというのは、周囲が偏見を修正せずうつ病に対する正しい理解を持とうとしていないことが明確である証拠と言えます。
このような偏見が取り払われ、適切な治療の機会が邪魔されないことこそが今のうつ病に求められているのです。