「玄米論争」が止まらない
玄米は健康や美容に良いと言われています。
ビタミンや食物繊維をはじめ、白米には含まれないさまざまな栄養素が病気を予防し、
美肌やダイエットにも役立つ、というのがその理由です。
また動物性食品や砂糖などを食べず、玄米と野菜や海草を食べる「玄米菜食」で
病気が治った、という人もいます。
しかし、その一方で「玄米は体に悪い」という声も聞かれます。
ミネラルを排出すると言われている「フィチン酸」が含まれているため、
カルシウム不足や貧血などを起こす、という説があります。
また玄米菜食を続けている人が体調を崩す、というケースも後を絶ちません。
果たして玄米は体に良いのか?それとも悪いのか?
30年以上玄米を食べ続けてきた私の経験から考察してみたいと思います。
玄米は便秘を解消してくれる?
玄米は食物繊維が豊富です。
粘度を保ち脂肪の吸収を抑える「水溶性食物繊維」と、水分で膨らんで便のかさを増やし、
腸のぜん動運動を促す「不溶性食物繊維」のどちらもが白米よりもたくさん含まれています。
玄米はこの2種類の食物繊維をしっかりと摂取することができるため、
便秘の予防や解消に効果的なのです。
ところが便秘が解消する人もいれば、逆に詰まってしまう人もいます。
実際に玄米は便秘を解消してくれるのでしょうか?
それとも悪化させてしまうのでしょうか?
食事全体で食物繊維のバランスを考えるべし
私は子供の頃から玄米を食べていますが、以前は必ずしもお通じがあるとは限りませんでした。
低血圧のせいか朝起きるのが辛く、ストレスもあって平日の朝にお通じがあった事はありませんでした。
また便秘を克服してからも、お通じはあっても残便感があることもしばしば。
便通が良い日と悪い日を比較して分かったことがありました。
腸の状態の鍵となるのが、副食として食べた野菜です。
水分が少ない根菜類やひじきを食べると滑りが悪くなります。
逆に葉菜をたくさん食べるとお腹が緩んでしまい、便の量は多くてもすっきりとはしませんでした。
私の場合、副食はできるだけ少なくした方がコンディションも良くなるようです。
ただし、ご飯だけだと腸内の滑りが悪くなって詰まってしまいますので、
少しの野菜や海草はやはり必要だと感じます。
玉ねぎとわかめを味噌汁の具として食べるのが効果的です。
お味噌は発酵食品ですから、善玉菌の増加に一役買ってくれます。
また玉ねぎは乳酸菌の餌となるオリゴ糖が豊富で、水溶性・不溶性の食物繊維のバランスが抜群です。
玄米を食べると痩せる?
食物繊維には血液中の余分な糖分や油脂を吸着し、体外へ排出する働きがあります。
これが摂取カロリーの減少につながり、結果としてダイエットにも効果的だと言われています。
ところが玄米を食べている人は必ずしも痩せているわけでもなく、
またご飯そのものが太ると言われているので真偽のほどは疑わしい、という声も聞かれます。
ご飯そのものは痩せるらしい
主食をパンからご飯に変えただけでお腹の脂肪が取れ、胸の脂肪が残ってメリハリのある体型になった、という人が実際にいました。
私は1日に600~800グラムの玄米ご飯を食べています。
どんぶり飯2杯分のボリュームがありますが、体重から見れば全くの中肉です。
バストとウエストにはっきり差のある体型になり、女性らしいボディラインが生まれました。
母もほぼ同じ量のご飯を食べていますが、ウエストは59センチと細く、
バストは平均よりもやや大きめです。
「お腹痩せ」に関する著書でもご飯を食べるように勧められていますので、
ご飯でお腹に脂肪が付きにくくなる、という効果は多くの人が実感しているようです。
バストがボリュームアップしすぎることも……
ご飯をたくさん食べるとバストが成長するようです。
私は20代半ばでご飯の量を増やしましたが、それから31歳まで徐々に育ち続け、
ブランドによってはサイズが展開されていない大きさになってしまいました。
服やブラジャーが合わなくなりますので、ここまで大きくなるのはお勧めしません。
ただ、「バストを大きくしたいならご飯をたくさん食べればよい」ということは
身を持って経験できましたし、バストアップ法としてお勧めすることはできます。
大きくなっても垂れませんし、アンダーバストも育ちません。
「胸が下がって体型が崩れそう」「胴体が太るのでは」と心配されている方は、
どうぞご安心ください。
ちなみに、バストが大きくなる体質は遺伝ではなさそうです。
私の祖母は二人とも貧乳でした。
食事内容を思い出すと、ご飯よりおかずを重点的に食べていました。
食べるものが体型を作っているのは疑いの余地がありません。
玄米でお肌が美しくなる?
肌荒れを起こす原因となる便秘を解消し、美肌になると言われています。
毒素が体外へ排出されることで吹き出物が減り、代謝が良くなって肌つやも良くなり、
人によってはたるみも取れるのだとか。
しかし、玄米を食べても肌荒れを起こす人もいますし、真偽のほどはいかがなものでしょうか。
食べるものによっては吹き出物が増えるかも
私は肌荒れを起こしやすいです。
特にひどかったのは思春期。
ストレス性の便秘がひどく、頬は赤くなり、二次性徴の影響もあって
ニキビも出来放題でした。
最近は少し落ち着きましたが、「生理前は食事に気を付けなければならない」というのは
今でも変わりません。
お肌は排出器官の一種とされ、「吹き出物」という形で毛穴から体内の毒素を出します。
普段から玄米を食べていると、お肌から排出しようという作用がより強く表れるようです。
普段から便秘だと老廃物や毒素がたまってしまうので、
吹き出物が出てくるのは当たり前ですね。
私は今でも砂糖や油脂を摂りすぎると翌日に吹き出物が出てしまいます。
また頬が赤くなったり、シミが濃くなったりもします。
背中や胸などには出ず、ほとんどの吹き出物が顔から出るから性質が悪い!
嗜好品を極力断たなければ、かえってお肌が荒れてしまう体質になってしまいました。
しかし、排毒しようという体の機能が働いているのは良いことと思っています。
玄米で病気が治る?
玄米は体に必要なビタミン類が豊富で、臓器や器官の働きを正常にしてくれると考えられています。
また、γ-オリザノールという成分がコレステロールの吸収を抑え、
血糖値を下げたり体重を減らしたりする働きがある、といわれています。
玄米を食べていれば健康になれるでしょうか?
副食を減らすと健康になった
経験から断言しましょう。
主食を玄米に替えれば健康になる、というのは違います!
確かに20代の頃、血液中の中性脂肪は少なかったです(最近は健康診断を受けていませんが……)。
コレステロール値も正常で、内臓脂肪も少なめでした。
30代後半になっても体型は変わっていません。
しかし、健康と言えるような体調ではありませんでした。
子供の頃からとにかく風邪をよく引きました。
高熱を出すことは少なかったのですが、人一倍風邪を引く回数が多く、
またかかる時期も早かったです。
不思議とインフルエンザにはかかりませんでしたが、冷え性で代謝も悪く、
活動的ではありませんでした。
ところが、2014年の終わりに大激変が起こりました。
生の大根を食べたのが原因で胃の調子が悪くなりました。
もともと辛み成分で胃が荒れるのですが、何を食べても胃が痛くなるように……。
ご飯もおかずも食べられず、しばらくは玄米のおかゆしか食べられませんでした。
食物繊維が負担になるので、早食いを止めてよく噛むということを心がけました。
胃の具合が良くなってからも、野菜を控えて1口100回ほど噛む、という方法を徹底してつづけました。
すると大きな変化が見られました。
まず、風邪を引かなくなりました。
前は風邪を引きかけると必ず悪化させていたのが、一晩寝ると治るようになりました。
さらに、もっと驚いたのは抜け毛が激減したことです。
吹き出物も以前ほど吹き出ることはなくなりました。
突然の体質の変化にびっくりしています。
どうやら玄米と副食の割合が健康のカギとなるようです。
しかも口元のほうれい線が薄くなりました。
食事の8割を玄米にすると健康になる。
これが「私だけに当てはまる結論」でした。
答えは人によってそれぞれ違うでしょう。
玄米はカロリーが高い?
玄米に限らず、ご飯が太ると思っている人は多いです。
ダイエットのためにご飯を控えている、という女性もたくさんいます。
主成分であるでんぷんが糖の一種であるため、太ると考えられているのです。
食物繊維が余分なカロリーを排出してくれると言われていますが、
果たして玄米は高カロリーでしょうか。
太るか痩せるかは副食次第
ご飯をたくさん食べても、副食が少なければかなり早くお腹が減ってきます。
もちろん体重も減り、腹持ちは悪いです。
実際のカロリー以上に早く消化・代謝されると実感しています。
ただし副食によっては太りやすくなります。
たとえばカレーライスは塩分が比較的多く、むくみの原因となり体重も増えやすくなります。
市販のカレールーは油脂もたくさん含んでいるので、やはり体にたまりやすくなります。
他に脂肪分の多い揚げ物、体を冷やしてむくみの原因となる葉菜を食べすぎると、すぐに体重アップにつながってしまいます。
玄米は消化不良を起こす?
玄米は食物繊維が多く、かなり以前から「消化不良を起こす」と言われていました。
現在でも栄養不足に陥ったり、下痢を起こしたり、といった懸念があります。
玄米は「痩せられる代わりに栄養失調になってしまう食べ物」なのでしょうか?
しっかり炊けば消化される
私はもともと早食いで、一口あたり10回も噛まずに飲み込んでしまうこともありました。
しかし消化不良を起こしたことは1回もありません。
ただし、ご飯はしっかりと中まで柔らかく炊くことがポイントです。
我が家では、以前は圧力鍋を使って炊いていました。
その後はステンレス鍋、現在は鉄鍋で炊いています。
どのような調理器具を使っても良いので、とにかく芯がなくなるまで
柔らかく炊けばいいんです。
それだけで、あまり噛まなくても十分消化されます。
ただし、健康のためにはしっかり噛んだ方が良いことは言うまでもありません。
最近は電気炊飯器にも「玄米モード」が搭載されていますが、
食べられる状態に炊けるもののおいしくありません。
ガス火で炊くほうがちゃんと甘みが出ます。
一般には1時間以上浸水させる、と言われていますが、半日ほど水につけておけば確実です。
「ガスで炊くなんて考えられない!炊飯器じゃないとめんどくさい」という人もいますが、おかずを作っている間に炊けますよ。
沸騰したらタイマーをセットし、時間が来たら火を止めるだけ。
簡単ですよね?
強いて言えば、お鍋を洗うのに少し時間がかかる、という手間はあります。
テフロン加工ではないので多少のこびりつきはありますし、圧力鍋や土鍋は重いので扱いづらいです。
玄米で貧血になる?
これは玄米を主食に、野菜や海草、豆類を副食とする「マクロビオティック」などの玄米菜食を行っている人に見られる症状です。
肉類や魚介類を食べないため、鉄分が不足して慢性的な貧血に陥ってしまう、という人は少なくないようです。
確かに野菜や豆類は鉄分が少なく、玄米だけでは補いきれません。
また、玄米に含まれる「フィチン酸」がミネラルを排出してしまうのが原因だ、とされています。
玄米のせいで返って貧血が悪化する、ということはあるのでしょうか。
他の食材でしっかり補給を
じつは私、玄米を食べる前から貧血がありました。
肉や魚はたまに食べていたにもかかわらず、血液の状態が悪かったです。
ただし、日常生活に支障をきたすことはありませんし、
生理で血の気が引くこともありません。
玄米を食べても改善されることはありませんでしたが、以前から貧血なので
「玄米が原因で貧血になった」ということはありません。
しかし、2年ほど前に改善法を見つけました。
鉄瓶で沸かしたお湯を飲み、鉄鍋で炊いた玄米ご飯を食べています。
食品に含まれる鉄イオンに比べ、鉄瓶や鉄鍋から溶け出した鉄イオンの方が体に吸収されやすい、と聞いたことがきっかけでした。
1か月ぐらい経った頃から、何となく冷え性が軽減された感じがしました。
立ちくらみも少しずつましになり、効果を実感しています。
そして、ご飯を増やしてから、もともと重くはなかった生理が軽くなりました。
なお食材からの鉄分補給として、毎食ごまを食べたり、
たまに魚を食べたりするようにしています。
玄米でカルシウム欠乏症になる?
玄米そのもののミネラル分は決して多くありません。
また、前述の「フィチン酸」が原因でカルシウム欠乏症になる、と考えられています。
ですから副食でカルシウムを補わなければ、骨折しやすくなったり虫歯ができやすくなったりする、というわけです。
玄米菜食をしていると歯や骨がボロボロになってしまう、というのは本当でしょうか?
カルシウムの摂り方は工夫が必要かも?
私もずっと骨密度が低いです。
最近はあまり食べませんが、以前は肉や魚をある程度食べていました。
10代前半までは牛乳を飲んでいましたが、体質が変化してきたのか
おいしく感じられなくなって飲まなくなりました。
ただ、玄米が原因で弱くなったとは思いません。
以前は体を動かしたり動物性食品を摂ったりしていましたが、
それでも骨や歯は強くなかったのです。
現在は運動不足で骨に負荷をかけない生活です。
外にも出ませんのでビタミンDも不足しているでしょう。
それでも状態が変わったとは思いませんので、
玄米が影響している、という結論には至りませんでした。
玄米を食べ続けると低血糖症になる?
玄米菜食を続けている人に見られる症状です。
血糖値が下がってイライラする、という人も少なくありません。
玄米の主成分はでんぷんなのに、どうして低血糖を起こすのでしょうか。
しっかり食べていればふらふらしない
私は毎日600~800グラムの玄米ご飯を食べていますが、低血糖になったことはありません。
イライラすることもありませんし、ふらふらすることもありません。
副食の量が全然違います。
うちはおかずが少ないんです。
副食は野菜や海草、大豆製品を入れた味噌汁だけ。
しかも、朝食は抜きの1日2食です。
その代わり、毎食どんぶり飯をいっぱい食べているわけですが。
ご飯にはごま塩をかけたり、焼きのりを添えたりしています。
とにかくご飯に偏っています。
だから消化が早く、すぐにお腹がすいてしまいます。
それでもイライラはしません。
野菜や豆は消化が遅く、なかなかエネルギーになりません。
だから消化そのものにもある程度のエネルギーを使います。
消化器の活動に糖分を費やしてしまい、
脳になかなかエネルギーが届かないため、
低血糖になるのでしょう。
もっとご飯を増やし、おかずをある程度減らすことで低血糖は防げるかもしれません。
玄米は食べ方のバランスが大切
玄米は確かに健康や美容に役立つ成分が含まれています。
しかし、おかずの食材や量をしっかり考えなければなりません。
玄米だけでは健康になれませんし、 ダイエットや肌荒れから解放されるわけでもないのです。
玄米に限ったことではありませんが、しっかりと体調を管理したうえで食生活を工夫すると良いでしょう。
鉄分やカルシウムが不足しているなら、他の食材で補ってみる。
早めに何らかの手を打つ方が不調も続くこともなく、自分に合った食事法が見つかります。
教科書通りに実践するのは大切ですが、それに固執するよりも自分でアレンジする臨機応変さが必要かもしれません。
玄米で健康になろう、きれいになろう、と考えたのであれば気軽に始めていただきたいと思います。
あまり厳格に考えず、おいしく食べることを楽しめると良いですね。