不眠症患者9000人以上が薬なしで眠れた認知行動療法
2012年10月22日のニューヨークタイムズに、睡眠薬に頼らない不眠解消プログラムが紹介されました。
これはハーバード大学、グレッグ・ジョイコブズ博士が大学医学部と20年間にわたり1万人以上の不眠症患者を対象として行った『認知行動療法』と呼ばれる治療法の事。
これにより不眠症患者の85%において不眠の解消や、睡眠薬の減少を確認しました。
その中心的な考え方が、『ベッドに入り眠れないまま30分間が過ぎたら、起き上がり、別の部屋でリラックスする事』なのです。
参考:不眠症克服プログラム(http://www.cbtforinsomnia.com/)
治療結果報告(http://www.cbtforinsomnia.com/effective.html)
『そのうち寝れる』は不眠症を悪化させるキーワード
昔から言われている、「ベッドの中で横になって目をつぶれば、脳と体は休まるからそのうち眠れるだろう」というのは大きな間違いでした。
今の不眠症治療の常識は『眠れなければ、寝室から出る』という事に変わっているのです。
条件付け:不眠症の人は、ベッドで眠れないと思い込んでいる
不眠症の人は、ベッドに入ったまま、眠れずに何時間もゴロゴロしている人がほとんどでしょう。
その時、リラックスの為に音楽を聴いたり、本を読んだり、テレビをみるという方法を取ります。
しかし、これらは脳にとって覚醒を促す、寝る準備としては真逆の行動なのです。
このような間違った行動を繰り返すと、パブロフの犬がベルの音だけでよだれを流すように、ベッドに入ると眠れなくなるという条件づけが無意識に刷り込まれてしまします。
つまり、『不眠症の原因がベッドに入る事にあるのなら、ベッドから離れれば眠気はやってくる』と考える事ができるのです。
2週間で結果がでる、認知行動療法に基づいた【起きる不眠治療】の方法
どんな不眠症の人でも、完徹を1週間続ける人はいません。
【起きる不眠治療】とは、この短い睡眠時間の間だけをベッドの上で過ごし、『ベッドに行けば眠れる』という条件づけで、上書きする方法。
具体的な方法は以下の通りです。
- 直近、1週間の平均睡眠時間を計算する
- 『平均睡眠時間+1時間だけベッドに入る』という方法を1週間続ける
- 1週間後。ベッドに入っていた時間の90%以上寝られたなら、ベッドに入る時間を30分早くする。
- 1週間ごとに、(1)~(3)を繰り返す。
睡眠時間とは、ベッドにいた時間ではなく、実際に眠っていた時間の事です。
例えば、0時にベッドに入り、1時から2時まで。4時から6時まで寝ていた場合、睡眠時間は3時間という計算になります。
平均睡眠時間3時間。起床時間が7時の場合。
ベッドに入るのは、起きる4時間前の午前3時になります。
どれだけ眠たくなっても、3時までは絶対にベッドに入ってはいけません。
逆に、ベッドに入り30分(予定睡眠時間が短い時は10分)たっても眠れないなら、ベッドから起き上がって眠気が来るのを待つ。
予定していた睡眠時間が4時間の場合。90%の216分(3時間36分)が判断基準。
眠れたなら、ベッドに入る時間を2時30分に変更。
眠れなかったら、3時のまま継続。
2週間を過ぎたあたりから、眠れたとか眠れないという事は考えなくなってきます。
また止めるタイミングですが、日中の活動に影響がないところまで睡眠がとれれば十分です。
睡眠時間8時間が、ベストというのは幻想です。
『ベッドに入って我慢する』は不眠にとって最悪の行為
『夜に5回もトイレに起きたから不眠』『寝るまで3時間もかかったから不眠』と考える人がいます。
確かに、これらは不眠の可能性が高いかもしれません。
しかし、昼間に眠くて仕事が手につかないという事がなければ、不眠症とは言えません。
睡眠時間が短くても、疲れが取れる睡眠を取れているのなら問題はないはず。
それを『8時間寝ないといけない』と、ずっとベッドにいるのは「自分はベッドでは眠れない」という条件づけを行い、不眠症を悪化させるだけの行為です、
恒常性:人は眠るようにできている
人には元の状態に戻ろうとする力『恒常性(ホメオスタシス)』が備わっています。
眠れないという異常な状態が続けば、この恒常性によりいつかは電池が切れるように寝てしまうものです。
眠れない事ばかりを心配すると、ますます眠れなくなるのは誰もが経験しています。
もしも眠れないのなら、「2、3日は徹夜しても構わない」と開き直るくらいの余裕が、不眠症治療には必要なのです。