ステップ1 会話
ここでいう会話というのは、コミュニケーションのことです。人材教育で大切なのは、「いかにコミュニケーションを円滑に取ることができるか?」ということです。こちらの意図が相手にしっかりと伝わっていなければ、いくら教育したところで意味がなくなってしまいます。
まだ相手は新人なので、どのような志があり、どのような将来を思い描いているか、こちらから積極的に把握するようにしてください。コミュニケーションがしっかりとできるようになれば、お互いに信頼関係がうまれます。
相手は部下かもしれませんが、人格からしたらあなたと対等なのです。ここで間違えてしまっていけないのは、「教えてやる」という気持ちではなく、「教えてあげる」という気持ちでいることです。逆の立場だったとき、自分はどうされるのがいいか鑑みるといいかもしれません。
あなたが相手のことを知ったら、反対に相手もあなたのことを知ったことになります。つまり、どのような人材が欲しいのか、どのようなリーダーになって欲しいのかが伝わっていると言う事になります。
実は、「なれるならなれ」ではなく「なって欲しい」という希望が、いい人材を育てるコツとなってきます。
こびるのではなく、一緒に会社をよくしていくという志を持つということです。会社での立場は上下がしっかりとしているかもしれませんが、これは責任の度合いを示す定規だと思ってください。新人だから、ないがしろにされていい理由はなく、むしろ大切にあつかっている会社が成長をつづけているのは疑いようのない事実です。
ステップ2 享受
では、具体的に仕事を教える段階となりました。ステップ1では、完全に手とり足とりで仕事を一緒にやります。そのあいだに信頼関係もうまれてきます。しかし、ステップ2になったら、今度はすこし距離をおきます。これは相手に責任を持たせると同時に、信頼しているという意思を伝える役割も果たします。
すこし心配かもしれませんが、ステップ1でずっと一緒に仕事をやってきました。しかも信頼関係が生まれています。へたに手を出して、一度築いた信頼関係をくずさないように注意が必要です。ここで、新人はやっと仕事の楽しさを知りはじめるときです。仕事を任せてもらっている気持ちになれるのもこの時期です。
もちろん、ときには失敗することもあります。しかしそのときも、相手があなたに教えをこうまで助言はひかえてください。「どうすればいいか?」と尋ねられて、あなたははじめて答えます。
丁寧に教える必要はありません。一度、すでにあなたと一緒にやっている仕事のはずですから、相手に考えさせる余裕を与えることで、自立をうながすことが可能です。
また、仕事の評価を途中でくだすのではなく、結果で評価するようにしてください。そうすれば、自然と自分なりのやり方をみつけ、工夫をはじめます。あなたにとって一番効率がよかったやり方も、人によってはそうではないかもしれません。
その変化に戸惑うことなく、むしろ評価の対象とする寛容さをもつことが大切です。これが次のステップである自立を生みます。
ステップ3 自立
さて、すでにあなたが教えることはなにもなくなりました。そうなれば、完全に新人は自立して一人で仕事ができるようになります。しかし、だからリーダーになれるわけではありません。
ここまででわかったとおり、リーダーというのは自分だけの仕事をこなせばいいわけではないのです。自立して、一人で仕事ができるようになったから部下をもたせるというのはやめてください。
では、完全な自立とはなんでしょうか。すでにあなたとのコミュニケーションは密になり、信頼関係が生まれています。ここで尋ねてみてください。
「リーダーになりたいだろうか?」「部下が欲しいだろうか?」あなたが育てた人材です。正直に答えてくれるのではないでしょうか。答えを渋るようであったら、まだ早いです。
「リーダーになります!」そう答えたのなら、すでに自分のあたえられた仕事以上の仕事を求めている証拠です。そして、あなたに教えてもらった過去からしっかりと自分の部下にも、指導をはじめることでしょう。
ときに助言を求められるかもしれませんが、そのときは丁寧に教えるのではなく「どう思う?」と、逆に尋ね返してみてください。すでに答えを知っているはずです。
成長には個人差があります
人の成長には個人差があります。ステップ3にいくまで、一年の人もいれば五年の人もいるかと思います。ただ、しっかりと真摯にむきあえば、誰でもリーダーにはなれます。
そして一度育った人材は、大きな戦力となり、会社の将来を担います。新人だから使えないと思わず、使えるまでに成長させるのが自分の役割だと思ってみてください。