国立科学博物館は自由研究のヒントがいっぱい
国立科学博物館は東京・上野公園内にある博物館です。常設展は日本館と地球館の展示からなり、特別展、企画展なども随時開催されています。常設展は高校生まで無料なので、何度も足を運ぶことができ嬉しいですね。
また、資料も豊富なので、自由研究のテーマ選びや研究レポート作成に適した場所と言えるでしょう。それでは、まず自由研究のテーマを探しに行きましょう。
日本館で道具の進化、生態系、生活スタイルの変化を研究する
まずやってきたのは日本館。日本館では日本列島の自然や、生き物の進化、日本人の生活の変化などのテーマを扱っています。順番に展示室をのぞいてみましょう。
『自然をみる技』~1階南翼~
ここでは、時計や望遠鏡、地球儀・天球儀、地震計、顕微鏡などの発達の歴史を学ぶことができます。現在は当たり前のように使われている様々な道具。それらが人類の試行錯誤によって進化してきたことがわかります。
自由研究のテーマとして、例えば時計のしくみを調べ、オリジナルの時計を作成してみる、というのはいかがでしょうか。
時計には日時計、砂時計、水時計、電波時計、と様々なものがあります。それぞれどのようなしくみで動いているのか調べてみては。また、自分で日時計を作り、どれだけ正確に時間を測ることができるか調べてみるのもいいですね。
さらに、なぜ1日は24時間なのか、1年が365日なのか、年月日の測り方について調べてまとめてみるのも面白いかもしれません。その他の道具についても同様に、その仕組みを研究してみることができそうです。
『生き物たちの日本列島』~2階南翼~
ここでは、日本に棲息する生き物とその分化について学ぶことができます。日本に棲息する生き物が自然環境に適応するためどのような工夫をしてきたのか、同じ日本でも環境の違う場所では生き物の姿にどのような違いが出てくるのか、というテーマについて扱っています。
夏休みに帰省や旅行などで出かける予定があれば、その場所と自宅周辺での動植物の違いについて研究してみてはいかがでしょうか。
『日本人と自然』~2階北翼~
ここでは、日本人の生活の移り変わりについて、人形や模型を見て学ぶことができます。昔の日本人と今の日本人では、生活スタイルにどのような違いがあるのでしょうか。その理由は何でしょうか。
これらの疑問についてまとめれば立派な自由研究になります。また、日本人の主食は米ですが、その米作りがどのように行われ、進歩してきたのか、現在と比較しながら研究しても面白いでしょう。
『日本列島の素顔』~3階南翼~
ここでは、日本列島に棲息する動植物について学ぶことができます。気になるテーマとして挙げられるのは、日本の固有種と外来種の関係性、日本の生態系についてです。あなたの周りにはどのような動物、魚が棲息していますか。
どのような植物が生息しているでしょうか。それらは日本の固有種か、外来種か。昔と比べて生態系に変化はあるのか。その原因とは。難しい問題ですが、とても興味深いテーマだと思います。
『日本列島の生い立ち』~3階北翼~
ここでは、日本列島にかつて棲息していた生き物たちの化石と出合うことができます。興味深い展示物はナウマンゾウの下顎骨です。日本にも昔はゾウが棲息していたのです。なぜゾウはいなくなってしまったのでしょうか。ぜひその謎を探ってみてください。
また、様々な動植物がなぜ繁栄と絶滅を繰り返してきたのか、気候の変化なのか、それとも別の理由があったのか・・・その謎に迫ってみるのも面白そうです。
宇宙の不思議、恐竜の進化、科学の発達を学べる地球館
次に向かうのは地球館。地球館では地球上の多様な生き物、生き物の絶滅と進化、人類の科学と化学の発展などのテーマを扱っています。2015年6月現在、地球館の一部は閉鎖されています(2015年7月14日にリニューアルオープン予定。)。
『宇宙・物質・法則』~B3階~
ここでは、宇宙や物理法則について学ぶことができます。「物理」というと難しそうだと感じてしまう人も多いのではないかと思います。でも、実は私たちの身近に存在しています。例えば発光ダイオード(LED)や液晶。これらのしくみについて学ぶことで、物理を身近に感じることができるでしょう。
展示を見て興味を持ったら、LEDや液晶の実験をしてみるのはいかがでしょうか。インターネット等で実験のキットも販売しています。また、環境に配慮する化学の進歩について学ぶこともおすすめです。
どのような取り組みがなされているのか展示物をみて学ぶだけでなく、自分の周辺でもそのような取り組みがなされているかどうか調べ、まとめてみるのも面白そうです。
『地球環境の変動と生物の進化-誕生と絶滅の不思議-』~B2階~
ここでは、恐竜の進化と絶滅、哺乳類の進化、人類の進化について学ぶことができます。たくさんの骨格標本をみることができ、恐竜や大昔の哺乳類が好きな人にとってはたまらないコーナーです。私も恐竜が好きなので、このコーナーではつい長居をしてしまいます。
例えば、恐竜の骨や歯の形からその恐竜がどのような生活を送っていたか(住んでいた場所は海か陸か、空を飛んでいたのか泳いでいたのか歩いていたのか、肉食だったのか草食だったのか等)自分なりに予想し、実際はどうであったのか調べてまとめてみてはいかがでしょうか。
その他にも、恐竜の骨格標本を作ってみること、恐竜の進化をたどってみることなどが考えられます。
『地球の多様な生き物たち』~1階~
ここではたくさんの生き物の標本や骨格標本を見ることができます。これらの標本を見ることでどれだけ地球上に多種多様な生き物が棲息しているかを実感することができます。
テーマを考えるとすれば、どうして生物がこんなにも多様に分化していったのかということでしょうか。多様な分化の背景にはその生き物の住む自然環境があるのでしょう。展示室では、生き物が棲息する自然環境についても解説しています。
生物そのものだけでなく自然環境についても研究することが必要かもしれません。また、特定の生き物が他の生き物とどのような関わりを持って生きているか、生態系について調べるのも面白そうです。
『科学と技術の歩み』~2階~
ここではまず、江戸時代の日本の科学技術について、その後外国の影響を受けつつ発展してきた科学技術の変遷について学ぶことができます。日本の科学技術の発展のスピードに驚いてしまいます。
例えば江戸時代の科学技術を使って測量をしてみるのはいかがでしょうか。さらに現代ではどのように測量をしているのかについても調べてみればより面白いと思います。
また、江戸時代の科学技術で有名な物に、からくり人形があります。からくり人形作りに挑戦してみたり、乗物好きな人は車や飛行機のしくみと発展について調べてみるのも良さそうです。『大地を駆ける生命』~3階~
ここでは迫力ある動物たちの剥製があなたを出迎えてくれます。この動物ってこんなに大きかったの?!と私も驚いてしまいました。
動物好きな人なら、気になった動物の動物が棲息する場所の自然環境、同一の生態系に属する動物や植物まで様々なことを調べるのも良いかもしれませんね。また、同じ種類の動物でも住む場所によって形が違うのはなぜか、という謎に迫ってみるのも面白そうです。
体験型夏休みサイエンススクエアなら、1日で研究完成?
さて、ここまで国立科学博物館の展示のテーマと自由研究の例について紹介してきました。しかし、展示を見てもやっぱり自由研究で何をすれば良いのかわからないと迷う人もいるかと思います。
そんなあなたにおすすめ!国立科学博物館では毎年夏休みに「夏休みサイエンススクエア」というイベントを開催しています。
過去には電子オルゴールや光通信、万華鏡などを作る講座、食べ物中の色を調べたり、笛と音の科学について学ぶ講座などが行われているようです。魅力的な講座がたくさんありそうなので、ぜひ参加してみてください。今年(2015年現在)のサイエンススクエアの詳細については6月中旬にWEBサイトが開かれそこで発表される予定のようです。事前にWEB予約が必要な企画もあるようなので、6月下旬以降WEBサイトから登録を行い、7月から始まる予約に備えてください。
テーマを即決したいなら特別展へ行ってみよう
自由研究のテーマが決まらないという人は、特別展に足を運んでみるのもおすすめです。特別展は高校生以下も入場料が必要ですが、テーマがしぼられています。何を研究すればいいのだろうという迷いから抜け出すことができるかもしれません。
研究者の話が聞けるディスカバリートーク
「ディスカバリートーク」に参加してみるのもおすすめです。ディスカバリートークとは、国立科学博物館の研究者が、自身の研究しているテーマや身近な科学について解説するというイベントです。動物、理工学、地学、植物・・・と毎回違ったジャンルのテーマを扱っているため、きっと興味のあるテーマに出合えることでしょう。
ディスカバリートークは、毎週土曜日と日曜日の11時、12時、13時、14時から開催されており、1日に2種類の講演が行われています。ホームページ上で講演のテーマを見ることができるので、気になる人はホームページをチェックしてみてください。
常設展、企画展、イベントを上手に使いこなすポイント
展示品をよく観察し、解説の中で大事なことをメモする
研究のテーマが決まり、展示室へ行ったら、資料が豊富に展示されているので、展示品をよく観察し解説をしっかり読むことが大切です。解説の中で大事に思ったところはノートにメモを取っておきましょう。もしわからないことがあれば、「かはくボランティア」の人に質問してみるのも良いでしょう。
かはくボランティアとは、展示室で展示品についての案内や説明をしてくれる係の人です。2015年6月現在では地球館閉鎖中のため活動を休止しているそうですが、リニューアルオープン以後は活動を再開するものと思われます。
なぜ、どうして?の疑問を大切に、テーマをふくらませて
体験型サイエンススクエアの企画で興味のある物を見つけたら、予約して参加してみましょう。係の人に言われたことをただするだけでなく、「なぜ?」「どうして?」という疑問を持ち、自分で考えながら行動することが大切です。
できれば自分が疑問に思ったこと、実験や係の人の解説から得られた答えをノートにメモしておきましょう。自由研究をまとめるのに役立つはずです。また、ここで扱われたテーマについて、さらに調査・実験をしてみるのもおすすめです。
たとえば笛と音の科学というテーマのサイエンススクエアに参加したならば、笛以外の楽器(打楽器や鍵盤楽器など)と音の科学について調査・実験をしてみることが考えられます。家にある楽器を調べてみるのもいいでしょう。
あるいは、同じ笛でも音の質に違いが生まれるのはなぜか?大きさや、材質で違いがでるのか?など、笛と音についてさらに調べてみるのも面白そうです。
研究者に直接質問してもよいのです!
ディスカバリートークでも、ただ研究者の話を聞くだけでなく、自分なりの疑問を持ちつつ話を聞くようにしましょう。疑問はノートにメモし、解説から得られた答えもメモしておきましょう。 わからないことは研究者に質問をしてみることが大切です。
またはその疑問を自由研究のテーマに据え、科学博物館の展示や図書館などの本、インターネット等で調べ、自分なりの答えを出し自由研究としてまとめるのもおすすめです。
自由研究を楽しもう!
自由研究って何をすればいいんだろうと悩んだり、面倒くさい、そう思ったりしている人は多いのではないでしょうか。私もかつてその1人でした。でも大人になった今だからこそ思うのは、自分の興味あることについて深く知ることのできるチャンスだったのではないか、ということです。「やらされている」という気持ちで取り組んでいたのはもったいなかったなあと今は思います。
また、自分の疑問について調べ、どうしたら答えがでるのかを考え、その方法を実践し答えを出すという自由研究は、思考力などを育てる大事な訓練でもあるのだと思います。
今年の夏は自由研究を親子で、家族で、楽しんでみませんか?その一歩としてぜひ国立科学博物館に足を運んでみてはいかがでしょうか。