すぐ忘れる記憶となかなか忘れない記憶の違い
英語の勉強に不可欠な目で見た視覚による記憶や、耳で聞いた聴覚による記憶は、一体どうすれば覚えることができるのでしょう。
記憶の仕組み
視覚や聴覚による記憶は、覚えている時間の長さなどによって以下の3つに分類されます。
感覚記憶
映画の映像や会話のように連続したものを認識するため、感覚器官で一瞬だけ保持される記憶です。よほど関心がない限り、視覚なら1秒程度、聴覚なら5秒程度で消えてしまいます。
短期記憶
電話番号をその場で暗記したり、その場にいる人数を覚えたり、感覚記憶を意識することによって保持される記憶です。記憶できる容量が限られているため、短いものでは20秒程度、長いものでは数か月間記憶することができます。
長期記憶
自分にとって重要な人の名前や、心に残った曲のフレーズを覚えるなど、短期記憶が言語やイメージ化されることで定着する記憶です。一度長期記憶として定着すると、数時間から数十年間保持されます。
短期記憶として海馬に一時的に保持された記憶に、数回アクセスを繰り返すことで側頭葉に定着することから、1ヶ月程度の間に2回以上反復すれば長期記憶になるといわれています。
長期記憶の種類と特徴
長期記憶として定着した記憶は、言葉で表現することができない非宣言的記憶と、言葉で表現することができる宣言的記憶に分類され、さらにそれぞれ2つの記憶に分けられます。
非宣言的記憶の具体例
非宣言的記憶は、手続き記憶とプライミング記憶に分けられます。
手続き記憶は、何か行動する際の手続きについての記憶。例えば、職場までの道順や自転車の乗り方、お風呂の入り方など、無意識に繰り返すことで身に付く記憶です。
また、もう1つのプライミング記憶は、先入観のようにあらかじめ記憶した情報が、後から記憶した情報に影響を与えることで、思いこみにつながる記憶だといわれています。
宣言的記憶の具体例
宣言的記憶は、意味記憶とエピソード記憶に分けられます。
意味記憶とは、言葉や物事に対する認識についての記憶です。例えば、イギリスの首都はロンドンである、710年に平城京に遷都したなど、一般的な言葉や概念などを指します。
それに対してエビソード記憶は、個人的な出来事や体験についての記憶です。小学校の給食のカレーが大好きだった、中学校の卒業式に寝坊して遅刻したなど、特定の時間や空間に関連して記憶していることから、その時の情景・匂い・音のほか、感情など細かなイメージまで記憶することができます。
エピソード記憶を英語学習に活かす
英単語や英語表現などの暗記には意味記憶が使われることが多いはず。でも、もし意味記憶に頼って記憶する英語の学習が難しいと感じているのなら、こんな方法はいかがでしょう。
宣言的記憶をフル活用!
何度も繰り返し記憶にアクセスすることで覚える意味記憶に比べて、一度経験しただけなのに細かなことまで記憶するエピソード記憶は、少ない回数で確実に覚えることができる記憶なのです。
そのため、英単語など概念的なものを覚える際は、感情やイメージなどを活用したエピソード記憶と意味記憶を組み合わせることで、効果的に記憶できるといわれています。
物語に例えて覚える
20世紀の記憶研究に多大な影響を与えたカナダ人心理学者タルヴィングの記憶理論によると、エピソード記憶は物語に例えることができると考えられています。例えば、覚えたい単語に具体的なイメージを与えたり、ストーリー仕立てにするなど、英語の学習にエピソード記憶を取り入れることによって確実に覚えることがはずです。