【第105回】ヒトラーが独ソ戦を指揮した前線基地、ヴォルフスシャンツェ-その1|トピックスファロー

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2024年1月30日
【第105回】ヒトラーが独ソ戦を指揮した前線基地、ヴォルフスシャンツェ-その1

ヒトラーは、1941年6月に独ソ戦が勃発して以降、ドイツの首都ベルリンを離れます。そして、戦場に近い東部の東プロセイン領の街の郊外、森の中にある作戦指令本営に籠り、戦争の指揮を取りました。そこはヴォルフスシャンツェ(狼の巣)と呼ばれて、その跡地は現在も残っています。

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どこにある?ヨーロッパの果て?ヴォルフスシャンツェ

1941年6月22日、独ソ戦が開始されます。ヒトラーは少しでも前線に近い場所で戦争を指揮するために、開戦翌日6月23日、総統専用列車「アメリカ号」でベルリンを出発。東プロセインに向います。6月24日、深夜、総統本営「ヴォルフスシャンツェ」(狼の巣)に到着しました。

ヒトラーは、演説や式典でベルリンに戻ったり、静養や補強工事のため、ベルヒデスガーデンに一時的に滞在した時以外は、終戦近くまでの大半をヴォルフスシャンツェで過ごして戦争の指揮を執ります。

ヴォルフスシャンツェのヒトラーブンカーヴォルフスシャンツェのヒトラーブンカー

そのヴォルフスシャンツェの今を紹介したいと思います。

ヴォルフスシャンツェは当時、東プロセインの中心都市ケーニヒスブルク(現ロシアのカリーニングラード)の南東100kmほどのところにあるラステンブルクの郊外にありました。そのラステンブルクは現在、ポーランド領にあり、ケントシン(Ketrzyn)という名前になっています。

ケントシンは、ポーランドの地図上では北東にあり、ロシアの飛び地、リトアニアと近い僻地とも表現できる場所にあります。

グーグルマップよりグーグルマップより

現在のポーランド回廊?スヴァウキ・ギャップ

ケントシンより更に東に行くと、「スヴァウキ・ギャップ(回廊)」と呼ばれる、リトアニア=ポーランド国境があります(上記のグーグルマップの画像を見ると、ケントシン右側には、回廊の由来となっているリトアニアとの国境にあるスバウキの街があることが確認できます)。

スヴァウキ・ギャップは、西はベラルーシ、東はロシアの飛び地に挟まれた全長100km弱の国境線で、ロシアが中心となるCIS国(独立国家共同体)に挟まれています。

本記事を執筆中の2024年1月現在、ロシアとウクライナの紛争が続いていますが、スヴァウキ・キャップは西側諸国が加盟しているNATO側が、同じ加盟国のバルト三国への唯一の陸路での補給路となっています。そのため、NATO側が頻繁にこの地帯に偵察機を飛ばすなど緊張が高まっています。

戦乱が続く黒海上空を飛行してポーランドへ向かう筆者が搭乗したポーランド航空戦乱が続く黒海上空を飛行してポーランドへ向かう筆者が搭乗したポーランド航空

かつて東プロイセンと呼ばれドイツの領土だった、ロシアの飛び地のカリーニングラードは、ロシア海軍のバルチック艦隊の本拠地となっており、ロシアの軍事拠点としても重要な地域です。

1991年、ソ連の崩壊によりバルト三国が独立。ソ連本土と地続きだったカリーニングラードは飛び地となりました。かつて第一次世界大戦後にドイツの飛び地となった、同地の東プロセインと被って見えてしまいます。スヴァウキ・ギャップは当時のポーランド回廊に相当して、現在の世界の安全保障の境界線とも言えます。

ワルシャワの超高層建築、文化科学宮殿ワルシャワの超高層建築、文化科学宮殿。
ポーランドはウクライナと国境を接して、ポーランドへの供給基地の最前線となっている。

筆者はそんな軍事的な緊張が高まっている場所に近い、ヴォルフスシャンツェがあったケントシン(旧ラステンブルク)にグダンスクから列車とバスを使って行ってきました。

まずはヴォルフスシャンツェのゲートウェイの街、ケントシンまで辿り着こう

ヴォルフスシャンツェのあるケントシンまでは、ポーランドの首都、ワルシャワからだと、乗り換えも含めて、片道、7時間~8時間以上はかかります。またケントシン付近は鉄道やバスの本数も少ないので、ワルシャワから日帰りは不可能です。

まずはワルシャワから優等列車がたくさん走っているので、2時間30分~3時間ほどで行けるポーランド第3の都市、北部にあるグダンスクまで行くのが良いと思います(東京~大阪を新幹線で移動する感覚です)。

グダンスク駅グダンスク駅

グダンスク駅に到着後は、ケントシンが所属するヴァルミア・マズールィ県の中心都市、オルシュティンまで列車で行きます。そこからバスに乗り換えます。ケントシンにも鉄道の駅はありますが、冬季はバスが代行しています。グダンスクからオルシュティンまでは優等列車で約2時間~2時間30分、オルシュティンからケントシンまでバスで1時間30分ほどです。

オルシュティン駅オルシュティン駅

オルシュティン駅からケントシンまでの代行バスオルシュティン駅からケントシンまでの代行バス。
バス停は駅から真っすぐ左方向に歩くと直に着く。

時間帯によっては、オルシュティンの先まで列車、そこからケントシンまでバスというスケジュールもあります。筆者も帰りはケントシンからコルシェ(korsze)という街までバス、そこからローカル列車に乗って、オルシュティンまで行きました。

帰路でのコルシェ駅での乗り換え帰路でのコルシェ駅での乗り換え

永遠と平原が広がる旧東プロセイン領だったケントシン~コルシェ間の風景永遠と平原が広がる旧東プロセイン領だったケントシン~コルシェ間の風景

代行バスはケントシン駅横のバス停に着きます。街の中心部から少し外れていて、中心部は左側の道を駅舎からみて左側に進んでいきます。筆者は中心部にホテルを予約していたので、雪道の中、30分ほど歩いてホテルまで行きました。冬季は雪が積もっているので、中心部のホテルに行く場合はタクシーを使うのが無難かと思います。駅前にも何台かタクシーは止まっています。

ケントシン駅の駅舎ケントシン駅の駅舎。
オルシュティンからの発着のバスは、駅舎を背にして左側。

ヴォルフスシャンツェ訪問の起点となるケントシンには、ガイドブック、インターネット上にもほとんど旅行情報がありません。

ケントシンの中心部ケントシンの中心部

参考までに、筆者がケントシンで2泊、宿泊したホテル、2つ星の「Hotel Wanda」を紹介します。

ホテルの外観ホテルの外観

2024年1月現在、シャワー、トイレ付き、シングルで1泊5,000円ほど、朝食は25ゾロチ(1,000円ほど)でした。宿泊費は季節、レートによって変わる可能性があります。

ホテルの部屋ホテルの部屋

ヘルシーな朝食。おかずはアラカルトでベーコンの卵焼きをチョイス。ヘルシーな朝食。おかずはアラカルトでベーコンの卵焼きをチョイス。

レストラン、バーも兼ね備えています。

ホテルのバー兼レストランホテルのバー兼レストラン

ポーランドの伝統料理、水餃子のようなピエロギも食べることができます。ポーランドの伝統料理、水餃子のようなピエロギも食べることができます。

ホテルの隣には、コンビニエンスストアもあります。

イントロダクション

Hotel Wanda
住所:ul.Wojska Polskiego 27,11-400, ケントシン

ヨーロッパ旅行はスマホを活用することで便利に

ケントシンは地方都市なので、ワルシャワやグダンスクより宿泊費が安いですが、ホテルの数が少ないので、ホテル予約サイトのアプリから予約していきましょう。また、コロナ禍以降、ヨーロッパのレイルパスはモバイル化され、鉄道の時刻表も検索しやすくなりました。現在の海外旅行はスマートフォンが必須なので、一昔前のガイドブック、紙のレイルパスに慣れていると、最初は戸惑うかもしれませんが、旅のツールをモバイル化していった方がとても便利です。

レイルパスについては、「【第86回】コロナ禍後、初めての渡欧、ドイツの様子は?」編をご参照ください。

また、今回のポーランド取材の最後の夜に筆者がYouTubeで、取材の総括を含めたポーランド旅行について語っています。こちらも併せて、ご参照ください。

関連動画
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27回目のヨーロッパ、4回目のポーランド、総括(@YouTube)

著者著者

「【第105回】ヒトラーが独ソ戦を指揮した前線基地、ヴォルフスシャンツェ」編は5部構成です。

【第105回】ヒトラーが独ソ戦を指揮した前線基地、ヴォルフスシャンツェ-その1
>【第105回】ヒトラーが独ソ戦を指揮した前線基地、ヴォルフスシャンツェ-その2
>【第105回】ヒトラーが独ソ戦を指揮した前線基地、ヴォルフスシャンツェ-その3
>【第105回】ヒトラーが独ソ戦を指揮した前線基地、ヴォルフスシャンツェ-その4
>【第105回】ヒトラーが独ソ戦を指揮した前線基地、ヴォルフスシャンツェ-その5

【連載】ヨーロッパで訪れたい世界大戦の戦争遺跡(第1回~第100回)
【連載】ヨーロッパで訪れたい世界大戦の戦争遺跡(第101回~)

著者:ヒロマル

戦争遺跡ライター
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1979年神奈川県生まれ、神奈川県逗葉高校、代々木ゼミナールで1浪、立教大学経済学部卒業。

大学在学中からヨーロッパ、アジアなどを海外放浪してハマってしまい、そのまま新卒で就職せずフリーターをしながら続ける。その後、会社員生活をしながらも休み、転職の合間を利用して海外放浪を続ける。50ヶ国以上訪問。会社の休暇を利用して年に数回、渡欧して取材。

2012年からライター業を会社員との二足のわらじで開始。
2014年からwebメディア(株)フォークラスのTOPICS FAROで2つのシリーズを連載中。

▼もんちゃんねる(You Tube)
https://www.youtube.com/channel/UCN_pzlyTlo4wF7x-NuoHYRA

▼「ヨーロッパで訪れたい世界大戦の戦争遺跡」シリーズ
https://topicsfaro.com/series/warruins
ヨーロッパ各地を取材し、第二次世界大戦に関する場所を紹介。
軍事用語などは極力省き、中学レベルの社会の知識があれば楽しめる記事にしています。
同シリーズが2017年に書籍化。
「ヒトラー 野望の地図帳」(電波社)から全国書店の世界史コーナーで発売中。

▼「受験に勝つ!世界史の勉強法」シリーズ
https://topicsfaro.com/series/wh
2018年から主に世界史を中心とした文系の勉強方法について執筆。
大学受験だけでなく、大学生や社会人の大人の教養としての世界史の勉強方法にも触れて、
高校生、大学生、社会人とあらゆる世代を対象としています。

世間の文系離れを阻止して、文系の学問の復権に貢献することが、2つの連載の目的です。

▼ご依頼、ご質問はこちらのメールまたはツイッターから
hiromaru_sakai@yahoo.co.jp
https://mobile.twitter.com/HIRO_warruins