英語を早く覚えさせるのは必ずしもプラスになるわけではない
どんなに頑張って勉強してTOEIC・TOEFLを受験しても点数の伸び悩みが続くと、「もっと早くから勉強しておけばよかった」、「子供の頃から英語を勉強しているのはズルい」という想いが沸きあがってくるものです。
実際、小学校入学前から英語を学ばせようとする親も入学前児童を対象にした英会話教室も少なくありません。それどころか子供をインターナショナルスクールに通わせるという教育方針を取る家庭さえあります。
しかし、このような英語の早期教育は時として子供の成長を妨げるマイナス要因になってしまうことがあるのです。
英語は学ぶ時期が早い程良い?
俗に、「12歳までに複数の言語を使えるようになれば一生覚えた言語を使うことが出来る」と言われています。つまり、早いうちから日本語の他にも英語などの外国語を勉強させていればバイリンガルに育ち、将来的に有利であるというわけです。
その為、最近では学習指導要領の変更によって小学校高学年から英語を学ぶことになっています。
言語を話す能力というのは、日本語なら日本語、英語なら英語というようにその言語で考える能力と密接な関係があります。この「その言語で考える能力」というのは、自我の形成に合わせて発達していくものです。つまり、子供の内から語学学習を進めていればネイティブの人のようにその言語で考える力が身につくという理屈なのです。
語学でも二兎を追うものは一兎も得ず?
しかし、早くから勉強していれば英語が身につくというのであれば小学校1年から英語の授業を盛り込んだ方が有利になるのですが、現実はそうなっていません。
自我が固まっていない子供を複数の言語を学び使う環境に置くと主体とする言語が定まらず、学んだ言語全てが年齢相応のレベルに達しなくなってしまうのです。
このような言語学習をされた子供は、「アイは十イヤーズオールドです」というように日本語と英語をごちゃ混ぜにして喋ったり、自分の意志が周囲に伝えられずいつもイライラしていたりするといったようなコミュニケーションに障害がみられるケースが多いのです。
このように、複数の言語を意思疎通に十分でないレベルで使える人の事をセミリンガル、またはダブルリミテッドと言います。
セミリンガルは、バイリンガル教育の弊害として国際結婚・帰国子女のコミュニティで問題となっているのです。
母国語はアイデンティティーに直結する
中学から英語を学びだした人は、たとえTOEIC・TOEFLで優れない点数を取ったとしても「日本語が出来るから別に英語が使えなくたっていい」と開き直ることが出来ます。これは日本語を母国語として学習してきた下地があるからできる開き直りと言えます。
このように「自分の母国語は日本語」という自覚は、個人のアイデンティティーの成立に深く関わってくるのです。
しかし、セミリンガルの人の場合だと日本語・英語のどちらも「自分の母国語である」と胸を張って言えないのです。というよりも「母国語」という考え方が言語習得に優先順位を付けてしまうことになりバイリンガル教育の妨げになってしまうのです。
英語を学ぶのが遅かった人にもチャンスはある
このように、英語の早期教育は英語力を伸ばす可能性があるものの、やり方が拙いと言語力・思考力自体に影響を及ぼしてしまう、まさに両刃の剣です。
逆に言えば、英語を早期教育で学んでいる人は必ずしも中学から英語を学びだした人より英語力に優れているというわけではないということでもあるのです。
つまり英語資格試験で良い成績が取れなくて、「英語の早期教育を受けていなかったから」「帰国子女じゃないから」と言い訳をしたとしても、それは試験が出来なかった理由にはなりません。単純に努力不足や勉強内容の不十分さが原因なのです。