
厚さ1/10以下!世界で初めて塗る太陽電池の開発に成功
2011年、三菱化学が『炭素化合物を素材とした有機物半導体の有機薄膜太陽電池』の開発に成功したと伝えました。
この有機薄膜太陽電池は、従来の太陽パネルが『数センチの厚さが必要』なのに対し、『わずか1mm以下を実現、また重さは1/10未満に抑える事が可能』となりました。
光の当たる全ての場所が発電所に
この有機薄膜太陽電池の特徴は、以下の5点。
- 薄い! 驚きの厚さ1mm以下。
- 軽い! なんと従来の1/10未満。
- 曲がる! 服にだって使える。
- 半透明! 窓ガラスでも発電できる。
- シートに印刷して量産! 低コスト化で価格ダウン。
今まで重量制限により太陽パネルを見送っていた箇所にも設置できるのは当然。
また壁の外壁としても使える上に光を通すので、都心の高層ビル群をそのまま巨大な発電施設にする事も夢ではありません。
中でも最も相性がいいのは電気自動車でしょう。
半透明の塗る太陽電池は、車体に使用してもデザイン性を損なう事はありませんし、窓ガラスにも使えるので車体全てで余すことなく発電ができるという事になります。
発電効率10%が世界初の偉業
有機薄膜太陽電池は、原価の高いシリコンを使わない太陽光発電のシステムとして世界中で研究されていました。しかし最大のデメリットである発電効率の低さにより、実用化する事はありませんでした。
しかし三菱化学が開発した有機薄膜太陽電池の発電効率は世界で初めて10.1%を記録。
この値は、すでに実用化されている薄型シリコンパネルと同程度の発電効率という事になります。
2015年には15%が目標
三菱化学は2015年までに発電効率を15%まで引き上げ、実用化する事を公言しました。
世界初!液化シリコンによる半導体の作成
三菱化学が有機薄膜太陽電池の開発を進めている頃、北陸先端科学技術大学院大学が世界で初めて『液体シリコンで半導体を作る事に成功した』と発表しました。
電子機器には欠かせない半導体はシリコンを材料に作られていますが、そのシリコンは固体か気体のどちらかでしか安定しませんでした。
しかしその常識を打ち破り、液体シリコンによる膜状の半導体の作成に成功したのです。
半導体は電子機器の基礎部分
半導体は太陽光発電にのみ利用されている訳ではありません。
携帯電話、テレビ、PC、車、さらにはエコで一気に普及したLED照明にも使用されています。
液体シリコンはこれら多くの電子機器に新しい可能性を与える事にも期待されています。
三菱に迫る発電効率11%の塗る太陽電池
2012年には自然科学研究機構分子科学研究所が、『有機薄膜太陽電池を作り11%の発電効率を記録』しました。
三菱化学は炭素化合物を素材にしたのに対し、自然科学研究機構が注目したのは、フタロシアニンという有機化合物。
新幹線の塗料としても知られ、昔から有機半導体に使用できないか研究されながらも長らく成果は出ませんでした。
しかし特殊な不純物をあえて入れる事により、有機半導体としての利用が可能となりました。
塗る太陽光発電。次の課題は『価格』
世界中で多くの研究機関が実用化に動いている“塗る”太陽光発電。
おそらく最も早く実用化されるのは、『三菱化学の有機薄膜太陽電池』だと思われますが、それでも2015年とまだ時間があります。
具体的な価格や補助金の有無が決まるのは、もう少し先の話になるでしょう。
