敷金は全額返してもらえる!? 「原状回復」の意味と基準を知ろう|トピックスファロー

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2014年11月25日
敷金は全額返してもらえる!? 「原状回復」の意味と基準を知ろう

今住んでいるお部屋から引越すなら、「敷金」はできれば全額返して欲しい。でも、そんなコトって可能なの?実は、敷金でトラブルになるのを防ぐべく、国土交通省のガイドラインがあるんです。自分で弁償すべきなのか、「原状回復の義務」の範囲を具体例からしっかり確認しておこう。

関西在住のWEBライター兼広告コピーライター
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意外にかかる、引越しの初期費用。敷金、礼金、仲介手数料・・・これって何とかなる?

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賃貸契約の際には、ほとんどの人が不動産屋さんの仲介を利用します。
物件が決まったら、まずはじめに必要になるお金は、大家さんに預けておく「敷金」の他にも色々あります。
不動産屋さんに対して支払う「仲介手数料」と「礼金」、最初の月の家賃を先に払っておく「前家賃」と「共益費」、そして「火災保険料」など。
特に、「仲介手数料」と「礼金」に関しては、あなたが仲介を依頼する不動産屋さんにより、金額が5万円以上も差が出る場合もあります。同じ物件を複数の不動産屋さんがネットに掲載している場合、この2つの金額も含めてチェックしましょう。

■人気の「仲介手数料0円」ってどんなシステム?

不動産屋さんは、物件を仲介することで得られる「仲介手数料」と「礼金」が主な収入です。
「仲介手数料」の金額は、だいたい家賃の1カ月分。通常は、あなた(借主)と大家さん(貸主)の両方から、紹介の手数料を受け取ります。

しかし、多くの物件を扱う不動産屋さんの中には、あなたからは受け取らずに、大家さんからのみ手数料を受け取るところもあります。
これが「仲介手数料0円」の仕組みです。
もちろん、今まで両方からもらえていた手数料が、大家さんからしかもらえないので、仲介1件あたりの利益は下がります。でも、その分たくさんのお客さんが来るということで、薄利多売の理論で経営は成り立っています。大手仲介不動産会社にしかできない手法です。

■不動産屋さんに支払う「礼金」は、返ってこないお金

近年は「礼金0円」の物件もありますが、ひとり暮らしで検討するワンルームや1Kになると、基本的には礼金が数万円~20万円程度の物件が多数を占めます。
これは不動産屋さんに支払うお金ですので、返ってくることはありません。
ですが、物件により差はあるものの、値段交渉は可能。
長い間借り手がついていない、築年数が古い、駅から遠いなど、不動産屋さんや大家さんが「早く借り手を見つけたい!」と思っている物件なら、交渉がしやすいようです。

意外と知られていない事実。「敷金」とは、本来、全額返金されるもの!

退去時に敷金を返してもらえない「敷金トラブル」は、全国で多発しています。
確かに、自分の過失で部屋を壊したりしたら、敷金が返ってこないのもわかります。
ですが、「自分で修繕費用を支払うべきなのか、境界線ってはっきりあるの?」そんな疑問の声が、多くの人から聞かれます。
そもそも、敷金とは基本的に全額返金されるものであり、家賃滞納や破損時のための担保です。
「これは私が支払うべき費用じゃない!」と自信を持って主張できるよう、具体的に何がセーフで、何がアウトなのか、裁判所の判決例や国土交通省のガイドラインを確認しておきましょう。

■壁紙や畳の日焼けはOK、たばこの煙でのヤニ汚れはアウト

敷金が引かれるキーワードになるのが、「原状回復の義務」。
どんな人が住んでいても共通して汚れたりするものに関しては、あなたが費用を支払う必要はありません。例えば、人が住めば壁紙や畳は日焼けしますし、フローリングに細かい傷もつきます。
国土交通省のガイドラインでは、このような「通常に生活していて消耗・損傷する分」に関しては、家賃に修繕費用が含まれている、と書かれています。
また、エアコンや換気扇が壊れた、水道が壊れたなどの消耗品に関しては、あなたが使い方を誤っていない限り、修繕費用は大家さんの負担となります。
しかし、エアコンの水漏れをそのまま放置してカビが生えた、水道からの水漏れを放置して壁紙が腐った、という事案に関しては、あなたの過失となるので要注意。
あと、たばこの煙で壁紙が汚れたり、部屋にニオイが染みつくなどは、個人の嗜好のために発生した汚れ。あなたが「部屋の管理の注意を怠った」ということになります。

■「原状回復」とは、完全に元に戻すことではない!?

不動産業界の「原状回復」とは、住む前の状態に完全に戻すことではありません。
物件を原状回復して明け渡すという行為は、国土交通省の「原状回復ガイドライン」を元にすると、あなたの「故意・過失などによる劣化の回復」を意味します。
したがって、建物や室内が自然に古くなる「経年劣化」は、あなたの過失ではないので、弁償する必要はありません。
例えば、家具を置いたことでできる床やカーペットのへこみ、フローリングの色落ち、テレビや冷蔵庫のウラ側の壁にできる電気ヤケ(黒ずみ)など。
これらは、誰が住んでも劣化するものなので、あなたが費用を負担しなくてOK!裁判で、これらは大家さん側が負担するべきものとしていくつも判決例があります。

■鍵の取換え費用もクリーニング代も

あなたではなく、大家さんが支払うべき費用!
敷金から差し引かれた、という声が最も多いのが「鍵交換の費用」と「ハウスクリーニング代」です。
この2つは、さきほども登場した国土交通省の「原状回復ガイドライン」に大家さん側の負担であると明記されています。
鍵の交換は、大家さんが次の入居者を入れるための費用であり、壊してもおらず紛失してもいないのなら、あなたが交換費用を支払う義務はありません。
また、「ハウスクリーニング」に関しても、たばこのヤニでクロスが変色している、壁を勝手に塗ってしまったなどの過失がない限り、時々掃除をして普通に住んでいたのであれば、支払う必要はありません。

関西&九州あるある「敷金・敷引き」制度

関西(京都は除く)や九州の一部には、契約書に「敷金」と「敷引き」という項目があります。
この場合は、退去時に戻ってくる金額が最初から決められています。
例えば、物件広告に「敷金30万円/敷引20万円」と書かれていた場合、最初に敷金30万円を納め、退去時にはそこから20万円引かれて、あなたの手元に10万円が返りますという意味です。
もちろん、ここでも鍵になるのは「原状回復」です。
自分の過失でドアを壊したり、壁紙やふすまを破いてしまっていると、返ってくる10万円の中からさらに引かれる可能性はあります。
また、築年数が古い物件に関しては、「勝手に壁を塗ったりしてもいいよ」と言ってくれる大家さんもいますが、これはあくまで、退去時に元に戻してくれるならという条件が含まれている場合がほとんどですので、行動を起こす前に、書面できちんと契約確認をしておくことが大切です。

著者:椿 景子

関西在住のWEBライター兼広告コピーライター
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ライター歴8年。広告や書籍、WEBサイトなど幅広いメディアで執筆中。一番好きなお仕事は取材&原稿作成で、年間70本程度の取材を行っています。クライアントと一緒に相談しながらものづくりをしていくスタイルですので、「良いものをつくりたい!」そんな想いをお持ちの方はお声かけくださると幸いです。