未だ続く農家の嫁不足…なぜ解決できない?
日本の農家が抱える悩みには「TPPによる外国産野菜の本格的輸入」「作物買取価格の減少」「JAなどからの融資返済計画」など、様々ありますがその中でももっとも深刻なのが「嫁不足」であると断言してしまっても構わないでしょう。
農村の嫁不足の深刻さは住民層にも如実に現れています。「青年会」なのに平均年齢50代オーバー、「婦人会」なのに孫が居るような60代が中心…一見すると笑い話のようですが、農村では珍しくないことなのです。
若い世代の不在と嫁不足
日本の農村は、どこも20代から30代の若い世代が欠乏している状況に置かれています。そして、若い世代の欠乏に拍車を掛けているのが「嫁不足」なのです。
農村から若い世代が姿を消し始めたのは1950年代から1970年代までの高度経済成長期。
中学を卒業したばかりの若年労働者が「金の卵」と持て囃された時代です。金の卵といわれた若年労働者たちの多くは、農村出身の次男・三男などであったといわれています。
これは農地の分散を防ぐ為に長男が跡継ぎとして全て相続する、旧民法の家制度が農村では法改正後も健在であったために農家の次男・三男は都市部に出ざるを得なかったことに起因しています。
しかし、全ての農家の長男が唯々諾々と親の跡を継ぐことを了解していたというわけではありません。都市部に出て自分たちよりも豊かな暮らしをしている弟たちに憧れ、家を捨てて街に出て一旗上げようとする者も次々に現れてきたのです。
しかも、女性にとっては、農村よりも相手がより取り見取りの上に文明的な生活が送れる都市の方が魅力的に映るもの。女性たちも結婚相手を求めて都市部に流出し結果、農村では若い世代と嫁が不足する状態が出来上がってしまったというわけです。
古きよき大家族・お隣さん感覚が嫌われる?
農村部は、都市部ではほとんど姿を消してしまった祖父母・父母・子供・孫が一世帯に住む大家族型世帯が一般的です。
都市部では住宅事情もあり父母・子供の核家族が一般的になっているため、「時代に逆行している」とも「昔ながらの日本の家庭を維持している」ともいえます。
しかし農村の場合、都市部のような「一人一部屋」を与えられることがないだけでなく、村全体が「個人のプライバシー」という概念が極めて薄いか皆無であるということがいえます。
都市部で生まれ育った女性にとって、このような農村独特の距離感の無さが農家と結婚したくない理由にもなっているのです。
嫁に多大な負担を求めるから嫌われる?
農村に女性が嫁ぎたがらない理由として、「嫁に求めるものが過大すぎる」ということがいえます。
具体的にはどのようなものが求められているかというと、「跡継ぎとなる男子を産むこと」「パートで農業外収入を稼いでくること」「炊事洗濯掃除を完璧にこなすこと」「畑仕事は自分から進んで毎日やること」「飯はなるべく食わないこと」「嫁いできたからには実家を捨てること」「でも嫁の実家の財産はうちのもの」…など、常識で考えなくてもありえないくらいに過大な要求です。
農業法人を除く日本の農業の大半は家内制手工業で営まれている為、外から嫁いできた嫁が貴重な労働力になります。
それに加えて家を守る為の跡継ぎとなる子供を産むことを求めることまでは理解できるけれども、それ以外の要求が理解できないくらいに矛盾している上に理不尽なものばかりなのです。
嫁不足が解決する日はまだまだ遠い
率直に言ってしまえば、農家の嫁不足はもうしばらくは解決できないままだと思われます。
一時期問題になった農業実習にかこつけた嫁募集や、農家男性対象の婚活パーティなど様々な努力を続けていていますが、情報社会となった現代では成果が見込めないのもまた事実です。
一時期、フィリピンや中国からお嫁さんを貰うことが流行しましたが言語・文化の違いで上手くいかないカップルが続出したり、斡旋するブローカーに騙されたりとこちらも解決の方策にならない状態です。
嫁不足の原因は多々あれども、農家自体が嫁取りに対する態度を反省して改善を試みる真摯な姿勢を自発的に持とうとしない限り、嫁不足問題は解決しないのかもしれません。