クロロフィル美顔教室とは
はじめに、聞き慣れない単語ですが、「クロロフィル」とは植物のもつ葉緑素のことです。この葉緑素を使用して、ニキビやアトピー、しつこい肌荒れを改善するというユニークな教室です。
分類するとエステティックサロンですが、母体は製薬会社なのです。店頭販売のみで通信販売やドラッグストアでの販売はありません。全国各地に支店があり、深い緑色をしている消毒液のような匂いがする化粧品と、独自の販売システムに特徴があります。
ここに通う生徒は、スキンケアからメイクまで一式をクロロフィルに変えなければならないと言うのが一番大きな特徴です。もちろん、それだけではなく、教室に通って「美顔師」と呼ばれるエステティシャンから、マンツーマンでお手入れのやりかたを教わり、自分の体で覚えこみます。
ガーゼの持ち方や指の動かし方にはじまり、手やあごの角度も重要です。そして、化粧水の使用量、はたまた帰宅後の食事や睡眠、髪型やヘアケアまで徹底的に指導されます。
つまり、毎日のケアをクロロフィルに切り替えるだけではなく、決められた手順を踏み、確実に使いこなせるようになり、はじめて効果が発揮されると言うシステムなのです。
クロロフィルに出会うまで
ニキビが治まった後に知人に再会すると、このように言われました。「思ったよりもずっときれいな顔立ちをしていたのね」。自慢に聞こえますか?とんでもないことです。
年頃の女性によく言う「きれいになったね」ではありません。この微妙なニュアンスの違いが分かるでしょうか?
顔全体にニキビができていると、赤みやきめの粗さが印象に残り、持って生まれた顔立ちにまで目がいかなくなります。ところが、ブツブツがひくと、視線をさえぎるものがないので、目鼻立ちがくっきりと見えるようになるのですね。
つまり、ニキビがあるだけで、その人のイメージは顔立ちではなく、ニキビ肌の人と言うカテゴリーでくくられてしまいます。その厄介なニキビを治すのは、とにかくお金と時間と根気が必要です。
ニキビケアに車が買えるほど費やした
筆者自身がニキビに悩みはじめた90年代後半は、現在のような美容を目的とする皮膚医学が発達していませんでした。ドラッグストアやデパートの化粧品カウンターで、片っ端からニキビ肌用の化粧品を試してみましたが、ほとんど効果が感じられません。
また、アロエの果肉を貼りつけたり、どくだみを煎じて飲む民間療法にも手を出しましたが、いずれも失敗に終わりました。
学業のかたわらアルバイトをして稼いだお金は、流行のファッションや友達とのランチではなく、ことごとくニキビケアに消えていきました。それでも成果があらわれると、はりあいがあるものですが、寝ても覚めても顔面全体が大粒のニキビに覆われているのですから精神的にも追い詰められていきます。
はっきりと計算をしたことはありませんが、おそらくニキビのために使った費用は車が買えるほどのお値段ではないでしょうか。
美顔教室のケアをスタート
そんなある日のことです。友達の家に泊まりに行くと、彼女の一家は親子三代で同じ化粧品を愛用していました。洗面所には黒っぽい大きな瓶に入った化粧水や、クリームのような容器に入った「パスター」が置いてあります。
そういえば、彼女はとてもファッショナブルで、いつも小奇麗な格好をしています。が、メイクの話になった時に、コンシラーが何をするものなのか、コントロールカラーとはなんなのかを知らなかったのです。
物心がついてからクロロフィル以外の化粧品を使用したことがないそうです。
けれども、友人家族のすっぴんになっても艶がある乳白色の皮膚を見ると、ぜひとも美顔教室に通ってみたくなり、早速電話で予約を入れました。
「クロロフィル美顔教室」は、インターネットや、ちまたの評判では、「宗教のようだ」とまで言われています。だから、ある意味では覚悟をしていましたが、歯科医院や美容院に予約するのと同じ要領でした。
ただ、「タオルを持ってきて下さいね」と言われたのを覚えています。エプロンは借りられますが、洗顔後に顔を拭くタオルは持参するシステムなのか、と妙なところで感心しました。
ニキビケアには、お金と時間の両方が必要だけど
前出の友達に確認すると、教室に2週間に1度ほどパックをするために通い、普段は家でお手入れをして、1ヶ月の化粧品代は2万円~3万円ではないかということです。何しろ、おばあさんとお母さんもクロロ・ユーザーで、3人が兼用しているので、はっきりとした金額はわからないと言われたのですが・・・。
はじめにクロロ・ユーザーになったお母さんは、アトピーとニキビの両方に悩み、教室通いを始めたそうです。その上、日焼けをして顔が火ぶくれのように腫れあがり、途方に暮れていた時に、緑の化粧水とパックを続けて、約半年で完治したと話してくれました。その後、娘の変化に驚いたおばあさんもクロロに切り替え、今に至るとのことです。
初回はカウンセリングとベースメイクを体験
まず、初回はカウンセリングとクロロのメイク体験でした。緑色のカルテを渡され、これまで使ってきた化粧品やエステティックサロンやクリニックの来院歴を書きます。そして、日々のスキンケア方法について、詳しく厳しくチェックが入りました。
「どうして、この化粧水を選んだのか?」
「美容液とクリームを別々のメーカーにしているのは、理由があるのか?」
「洗顔は、洗い流しているのか拭き取っているのか?」
「クレンジングは、風呂場でしているのか、洗面所なのか。また、湯あがりにするのか、帰宅後にすぐ行うのか」
このような細かい問診があります。その後、先生(美顔師)から、教室のシステムと商品についてレクチャーを受けました。その日は、クレンジングと化粧水の後、「アワカルチャー」と呼ばれている、おしろいを何色も混ぜ合わせた、ベースメイクを体験しました。
首の色に合わせて調合する
「アワカルチャー」とは、小さな筒のような容器に肌色のパウダーが入っている化粧料です。それを顔色や肌の状態に合わせて、3色から5色ほどをブレンドして使用します。一見すると、日本画の画材である岩絵の具のようにも見えますが、水で溶かずに、そのまま市販のおしろいと同様にパフでのせていきます。
お粉をはたいた直後の、お面さながらの顔に衝撃を受けました。しかし、10分ほどで肌に馴染み、特に市販のファンデーションと変わらないカバー力と色みです。
印象的なのは、おしろいを調合する時、顔ではなく首の色に合わせることでした。その理由は、顔の骨格は見た目以上に入り組んでいるからです。にもかかわらず、首から上の皮膚は薄く、慢性の肌トラブルにさいなまされていると、毛細血管が潰れたようになり、赤く、黒く、くすみが出るそうです。
これまで筆者は、ファンデーションを選ぶ時、かなりダークな色みをチョイスしていました。海が近い地域で育ち、祖母も母も地黒なので、遺伝だと思い諦めてていたのです。でも、顔が褐色に見えたのはメラニン色素のしわざではなく、たび重なるニキビのせいだったのですね。
実際の肌は、むしろ日焼けしていないと聞いて、飛び跳ねたくなるほど嬉しかったのを覚えています。もしかしたら、クロロのお手入れに熱中したのは、この体験がもとになっているのかもしれません。
クロロフィル流お手入れの手順
ニキビを早くきれいに治すコツは、予算と時間が許す限り、教室でお手入れをするのがコツだと繰り返し聞かされました。使用する化粧品は、自宅でも教室でも同じ物です。
「プロのアドバイスのもとで、化粧水をパッティングしたり、パックをすると効果の出方に差がつくから」だそうです。サロン使用料や、技術料レッスン料などは取られないかわりに、化粧品一式は自宅から持って行かなければなりません。
重たいのが負担な方は、教室内にキープすることも可能です。持参してもキープするにしても、購入するのは行きつけの教室です。
(1)クレンジング
従来は緑色の油性ペーストを顔にのばし、ガーゼで拭き取るのがポピュラーな方法でした。しかし、近年ではフォームタイプやジェルタイプが一般的です。どちらとも水で洗い流せるので、手軽で嬉しいですよね。これなら、難しいテクニックも必要ありません。ただ、これらのクレンジングでは、市販のメイクは落としきれません。
(2)化粧水でパッティング
ガーゼに、たっぷりの量の化粧水を染み込ませて、決められた順番通りに、顔に馴染ませていきます。等間隔にある一定の圧をかけるのがコツです。
繰り返しますが、化粧品は自前ですが、ガーゼも自前です。美顔師さんが、パッティングをしてくれると、「やめて~」と嘆きたくなるほど、化粧水もガーゼも大量に使われてしまいます。
(3)化粧水の湿布
ドラッグストアなどでは、顔の形をしたマスクが売られています。それらは美容液を含ませている状態ですよね。しかし、クロロフィル美顔教室では、ガーゼでできたお面があります。そのお面に化粧水を含ませて湿布するためです。
ちなみに、クロロと言えば、深緑の化粧水が有名ですが、この時に使用するのは、白ワインのような色みの化粧水「モイスト・プラス」です。顔面に湿布した後も小さな刷毛で、何度も化粧水を塗りこんでいきます。
しっとりとした感触で刺激が少なく、肌のコンディションが不安定な時にも、安心して使用できました。それだけに、緑の化粧水に比べてコストパフォーマンスがいまいちでした。
(4)グリーンパック
まず、粉末を例の暗緑色の化粧水で溶かします。ダマがなくなるまでよく練ってから、刷毛で顔全体にのばします。その後、手早くドライヤーで乾かします。一気に素早く乾燥させることにより、毛穴の奥の汚れを浮かせて、落とす作用があると言われました。
ひんやりとしたテクスチャーや消毒液のような匂いは、これぞニキビとり化粧品と言うようで、個人的に気に入っていました。
顔の表面を指で触れても、何もつかなくなればOKです。カピカピに乾燥したパックは、洗面所に汲み置きしている水で洗い流すように指示されました。これは、筆者が通っていた教室だけなのか、他店もすべて共通なのかわかりません。流しは、いつもきれいに磨きこまれていましたが、少し抵抗がありました。
(5)ニキビの芯の圧出
ニキビには芯があります。これを出してしまえば治りが早いですよね。教室では針を刺し、ニキビの内容物を出してもらえます。ただし、上手な美顔師に圧出してもらえればよいのですが、不器用な方に当たると、傷の治りが遅かったり、最悪の場合、瘢痕になってしまったと言う声を聞いたこともあります。
(6)パスターパック
パスターとは、豚の脂に葉緑素を練りこんだ化粧品です。これを顔全体に、100円硬貨程度の厚さで覆います。さらに、その上から遠赤外線灯を照射するのです。独特の重たいテクスチャーで、水やお湯で流しても肌に残りますから、「パスタークリーン」(化粧水)をガーゼに含ませて拭き取ります。パスターパックをすることにより、圧出をしてできた傷が鎮まり、きめが整いました。
(7)化粧水パッティング
パック後は、緑の化粧水を4回パッティングします。教室では、毎回お手入れのたびに、美顔師がマイクロスコープで肌状態を確認して教えてくれました。
疑問点や、ささいな悩みを相談しても、納得するまで説明してもらえるので、自分の肌に対する長年の不信感から解放されます。効果が現れるまでは個人差がありますが、3週間ほどでニキビが目立たなくなりました。
自宅のケアもぬかりなく
筆者の場合は、クレンジングと化粧水パッティング、うっすらパスターの3ステップでした。何だ、簡単じゃないかと思いますか?いいえ、1つずつの工程が馬鹿丁寧で、手間がかかります。
また、化粧をしていない朝は、クレンジングではなく、「マイルドグリーンミルク」で洗顔します。緑の乳液で、洗い上がりがふっくらとして、安心感がある使用感でした。
また、シャンプーとトニック(リンス代わり)もクロロフィルにかえなければなりません。「美容院に行く時もシャンプーを持参して下さい」と言われますが、その度胸はありませんでした。
頭皮と顔は1枚の皮でつながっているので、顔ばかりを手入れしても限界があると言う理由からです。予算に余裕があれば、スキンケアに美容液を追加する方も多いそうです。
クロロフィル美顔教室が、駆け込み寺とも言われる理由
2001年に薬事法が改正されました。現代では、(ある程度良心的な)皮膚科に行けばニキビは塗り薬で簡単に治ります。しかし、筆者が目鼻がどこにあるのかわからないまでに、ニキビに悩んでいた20世紀後半、皮膚科医の間では、「ガンを治すよりもニキビを減らすのは困難」とまで言われていました。
なぜなら、放置しておくと生命に危機がおよぶガンの研究には、膨大な研究費と時間をかけることができます。けれども、大人になれば自然治癒するであろうニキビのメカニズムを解明しても、学会で評価されることもなければ、所得が上がることもないと思われていたからなのです。
しかし、現実にはニキビで病院にかかる患者は多く、特に開業医の主な収入源になっていたのですが。
クロロフィル美顔教室が創業したのは、昭和中期の戦後間もない時代です。スキンケアはもとより、敗戦後の慌しい時期ですから、さぞ、モダンでおしゃれな化粧品だったのでしょう。さらに、皮膚科に通院しても改善しなかったニキビが治ると言うのは、大きな強みでした。
つい最近まで、美顔教室は何をしても、どこに行っても、びくともしなかったニキビに効く画期的なスキンケア方法だったのです。
ああ、顔が緑に!パスターの正しい使用法
うっすらと顔にパスターをのせると、紫外線や化粧品による刺激から素肌が保護されます。さらに、炎症による赤みやブツブツを自然にカバーできるので気に入っていました。
ただ、量が多かったり、完全にのばせていなければ、自分では見慣れた顔色でも、他者にとっては驚きの肌色に見えることもあります。それを防ぐために、メイクの前には、緑色の化粧水ではなく、透明の化粧水を使っていました。
パスターも緑の化粧水も、肌トラブルがある箇所や乾燥している部位に触れると青みががる原因になりますから。それでも光と角度を変えて、何度も念入りに確認しなければなりません。太陽光のふりそそぐ窓際で、蛍光灯の下で、拡大鏡の手鏡や姿見を駆使しながら、何度もしつこく、しつこくチェックしていました。
メイクする前に徹底してパッティング
困ったことに、化粧したての時は平気でも、外出先でいきなり緑色になっていて慌てた時もあります。体調が悪い時や、極端に湿度が低い部屋で長時間すごした時、汗をかいた時などは、おしろいの下の緑が浮き出てしまいます。
ほんのり緑、なんて生やさしいものではありません。灰色がかった、死人さながらの顔色になります。
そう言えば、有名なハリウッド映画を何本も担当したヘアメイクさんが、インタビューでこのように話していました。「溺死体の肌色を再現するためには、緑色のドーラン遣いがポイントだ」。
そして、赤色の補色である緑色は、メイクに用いて失敗すると目の充血を際立たせてしまいます。人間の女性が植物の色素の恵みにあやかるのは、難易度が高いのかもしれませんね。
妖怪のような顔色にならないために、メイクをする前は、徹底的に「モイスト・プラス」と呼ばれる透明のしっとりタイプの化粧水で拭き取りをかねてパッティングするのが大切だと痛感しました。
ただ、どれだけ念入りに拭ったつもりでも、前の夜に使用した時の青みが、かすかに残っている場合も多いです。クロロユーザーは、うっすら緑でも、もう感覚が麻痺しているので、気がつかない人もいるのだとか。
美顔教室を卒業した理由とその後
入門してから5年ほどは、週に1度から2度のペースで熱心に通っていました。しかし、社会人になり出張や残業が続いたり、休みが不規則になり、通い続けるのが困難になったのです。
それと、学生時代とは異なるフラストレーションが溜まり、顎から首にかけてのニキビが悪化しました。定期的に圧出しても、これまですぐに治っていた傷が消えずに、赤みを帯びたまま残っているのです。
そんな時に、夏井陸『傷は絶対消毒するな』や、宇津木龍一『肌がきれいになるたった1つの方法』を読んで、化粧品の存在やスキンケアの意義に疑問を持ちました。
皮膚の上には、おびただしい数の常在菌が存在しています。それらの菌を無作為に化粧品で消毒するのが正しいとは思えなかったのです。
スムーズに肌断食へ移行できた
ただ、クロロフィル美顔教室の「お手入れとは、肌本来の持つ力を最大限に発揮することである」という考え方と肌断食は、通じるものも多いのです。
例えば、シャンプーや整髪料が肌荒れの原因になることや、摩擦を与えるとメラニン色素が活性化してシミが濃くなると言う考え方は、両者とも共通しています。
そのため、人体の持つ常在菌を減らさないための化粧品断ちは、抵抗なく受け入れることができました。
そもそも、必要以上に顔面の皮脂を取り除いてはいけないと言いながら、あの、脱脂力の強いシャンプーとトニックを使うことを強制されるのは、矛盾していますよね。
卒業してから現在まで、スキンケアは肌断食と湯シャンです。はじめた当初は苦労もありましたが、およそ半年ほどで慣れました。今では、トリートメントや日焼け止めすら使用していません。
体質上、皮脂分泌が多いので、徹夜明けや生理前になると赤ニキビが出来ますが、刺激を与えないようにして様子を見ていると、3日から1週間くらいで治ります。
これからクロロフィル美顔教室に通うなら
ここ十数年の間、日進月歩で美容業界は進んでいます。ですから、軽症の方や皮膚が丈夫な方が、ちょっと試してみよう!と思うにはおすすめしません。
けれども、メカニズムを理解しながら、ニキビやアトピーを治したいのであれば、自分の肌と本気で向き合う場所としては良い所です。お金と時間がかかりますが、知識も増えますし、教室で覚えた技術は一生物ですから。