現代人は栄養過多になっている?
食べることこそが、健康の基本だと信じている方は多いものです。 そのうちの1例として、「朝食を食べない人は仕事ができない」。「1日3食食べない子供はキレる」。教育本や健康本を開くと、このような見出しが並んでいます。
たしかに、地球上に生けとし生きるものすべてが、何かしら栄養を補給しなければ命をつなぐことができません。私達の祖先である原始人も、石で作られた槍を持ち必死にマンモスを追いかけていました。人類の歴史をふりかえると「食べることは、生きること」と言う声は、もっともな意見だと納得できます。
しかし現代の日本の光景は、いかがなものでしょうか?戸棚に、チョコレートやスナック菓子がストックされてある家は多いですし、会社のデスクの引き出しの中には同僚からの出張土産でもらった煎餅や饅頭が入っていませんか?
そして街中のいたるところに、コンビニエンスストアやファストフード店があり、24時間いつでも好きな時に好きなだけ食べられる状況なのです。本来ならば体内に入った食物を消化して吸収、排泄させるためには短くても、3時間ほど脂肪分や繊維質が多く含まれているものになると、半日以上かかる場合もあります。
けれども胃腸がまだ仕事を終えていない時にも、次々に食品が入ってくるので、臓器は休む暇がありません。細い水道管に流れてきた水が処理できないまま次々と水が入ってくれば、おのずと水がつまり、溢れ出してしまいますよね。
私達の体内でも同じような事件がおきているのです。今では、消化器官は働きすぎにより悲鳴をあげています。これからは、栄養失調よりも、栄養過多が心配と言っても過言ではないのかもしれません。
空腹は体が軽くなって気持ちよい
食事を抜くととにかく空腹になり、イライラしたりむしゃくしゃして、フラストレーションが溜まりそうだと思いませんか?それが、まったく正反対なのです。
慢性的な食べ過ぎにより胃腸に疲れが蓄積されていると、血液の流れや気の流れが滞ります。すると「けだるさ」や「苛立ち」「便秘」「肩こり」などを引きおこします。
しかし、「プチ断食」をはじめると、胃や腸にかかっている負担がなくなるために、むしろ体が軽やかに感じられるのです。とはいえ、はじめの数回は、眠気や倦怠感にさいなまされる場合もあります。これまでずっと胃腸を酷使したり、寝不足だったり毎日の疲れが溜まっている方は、プチ断食を行うことではりつめていた神経がほぐれてきます。
すると毎日の慌しさの中で、感じる余裕がなかった体の重さ」や「しんどさ」を、一気に自覚してしまうのでしょう。ここで、「やっぱり、脳に糖分がいかなくなるとダメなのね」と、やめてしまうと元の木阿弥です。
成果があらわれるまで個人差がありますが、「プチ断食」に体が慣れると五感が研ぎ澄まされて、仕事や勉強に集中できるようになります。ちなみに筆者は約1週間で効果を実感しました。普段は意識していなかった雨の匂いや、鳩の鳴き声を意識するようになりデスクワークもはかどります。
食べないとデトックスできる3つの理由とは
食べないと便や尿の回数や量が減って、体内に溜まった毒素が排泄できないのではないかと不安になるかもしれませんが、そんなことはありあません。むしろこれまで蓄積されていた毒素がいっきに排泄できます。このようにデトックス効果が高いのも、断食の特徴なのです。
1.便秘が解消する
1日3食以上食事やおやつを摂っている時には、消化、分解、吸収をするために胃腸は、フルタイムで働いていました。しかし食べ物が入ってこない時間帯があれば、今度はそのエネルギーを排泄のために使うことができるのです。
これまでは、入ってきた過剰な食物の交通整理をするだけで精一杯だった胃腸が、空腹の時間があることにより、便を押し出すためにエネルギーを使えるようになるからです。
2.血液がスムースに流れる
胃腸で消化・吸収された栄養素は、血液によって全身に運ばれます。しかし全身の細胞は、吸収する栄養の量に限界があります。当然ですが余ったものはそのまま血管に残り、蓄積されてしまう結果になります。
現代の食事は、高脂肪・高たんぱくなので満腹になるまで食べていると、血液は、汚れる一方でしょう。けれどもプチ断食を取り入れることにより、余分な栄養素が減り、サラサラの血液になれるのですね。また血液がサラサラになることにより、血流が改善されて血管にかかる負担も軽くなります。
3.肝臓や腎臓の働きを改善する
肝臓と腎臓の主な機能は、人体にとっての有害な物質を解毒して排泄させることです。暴飲暴食をすると胃腸で消化・吸収するのも大仕事ですが、その後分解するのも同じくらいに、もしくはそれ以上に大変です。慢性的に食べすぎ飲みすぎの状態が続くと、肝臓や腎臓の負担が増して全身の新陳代謝が鈍くなります。
それを防ぐためには、定期的にリセットさせる必要がありますが、まずは消化器官を休ませるのが近道だと言えるでしょう。プチ断食により、肝臓や腎臓の休息時間を確保することができます。
宗教と断食の関係性
食べないことが体に良い、と思っても何だか、おどろおどろしいような、敷居が高い印象がありませんか?それは、断食につきまとう宗教的な意味が大きいのかもしれません。仏教と断食の関係の深さは有名ですが、キリスト教やイスラム教でも定期的に断食をとりいれています。
1.キリスト教
ローマ・カトリック教会では、キリストが40日間の断食を行った苦難を追体験するために復活祭の前などに断食を取り入れています。
2.イスラム教
イスラム暦9月の間は、日没までは一切の飲食を禁止されています。
3.仏教
ブッタ(お釈迦様)が、悟りを開くための修行として、何度も断食を行いました。現代でも、修行僧は、肉食を禁止され、量もひかえめの精進料理が定番です。
世界を見渡してみると、断食と信仰の関わりはかなり密接だと言えるでしょう。食事を摂らないことにより、己の欲求を抑えて神への忠誠心を示す行為は、今でも一般的なのです。断食と言う言葉から連想される、禍々しさは宗教上の思想や禁欲的なイメージと結びついているのがわかります。
すぐ実践できるプチ断食をはじめよう
本格的な「断食」を行うためには、やはり医師や、看護師などの専門家の指導を仰ぐ必要があります。全国各地にある「断食道場」や、スポーツジムや病院が実施している「断食教室」「断食体験」を、利用してみるのも良いでしょう。しかし、「プチ断食」(半日断食)ならば、思い立ったらすぐに実践できる気軽な健康法です。
ただし、心臓が弱い方や持病をお持ちの方、また、妊娠中の方は、かかりつけのドクターと相談してから行ってくださいね。
無理をせずに、できる範囲でスタートしよう
まず、難しいことは考えずに「朝食」を抜いてみてください。1日のうちで、1番排泄がさかんに行われるのは寝起きの時間です。けれど体が、毒素を出そう、出そうと思い、がんばっていても、食物が入ってくると、栄養素を分解することに、エネルギーを注がねばなりません。
すると、せっかく摂りこんだはずの、フレッシュな栄養素をうまく吸収できないだけではなく、老廃物も溜まり新陳代謝が滞ります。だから効率よく体内の毒素を出しきるためには、朝食は食べないのがベストな方法なのです。
慣れたら1日夕食だけにするといい
ただこれまで朝食をしっかり摂っていた方は、いきなり何も食べない生活にすると、体が驚くかもしれません。めまいや立ちくらみを感じるようならば、無理をせずにできる範囲でスタートしましょう。朝食の量を半分減らしたり、固形物を食べるのではなく、パンをやめて野菜ジュースにしてみるなど、工夫しながら行うのが長続きするコツですよ。
そして慣れてきたら昼食も摂らずに、食事は1日1度夕食のみにします。こうして前日の夜から、当日の夕方まで胃腸を休めると免疫力が上がり、風邪をひきにくくなったり細胞が若返る効果も期待できるのです。
理想は毎日行うことですが、難しければ週末の2日間だけでも良いでしょう。それでも厳しければ月に1度、もしくは、2週間に1度からスタートしてもかまいません。
空腹を感じたら木綿豆腐や無糖ヨーグルトを
新鮮な「野菜ジュース」や、ビタミンCが、レモンや、緑茶の数倍多いとされる「柿の葉茶」、もしくは、「しょうが」を入れた「紅茶」を飲みましょう。 ゆっくりと味わいながら飲むと、気分転換になり体が楽になります。
飲み物だけでは、どうしてもひもじさに耐えられない時には、調味料をかけない「木綿豆腐」や、「無糖ヨーグルト」を少量だけ食べると、断食をさまたげることなく空腹もおさまります。
一見、味気なく思えますが味覚が繊細になり、極端なほどの薄味でも素材本来の味が引き立ち、おいしくいただけるものです。ただ、続けているうちにあまり「おなかがすいた」という感覚がなくなってくるはずですが。
プチ断食明けの食事
おすすめは、あっさりとした旅館の朝食のような和食です。胃に、12~20時間ほど、食べ物が、入っていない状態だったのに、揚げ物や油のしたたるステーキを食べると、反動がついて、吐き気をもよおしたり、下痢をする恐れがありますから。
とはいえ、本格的な断食のように、数ヶ月間にわたって、まったく飲食をしていないわけではないので、基本的には普通の食事を摂ってかまいません。1合ほどなら、アルコール分を摂取しても大丈夫です。
心肺や胃腸が丈夫な体質の方であれば、夕食ではストイックになりすぎず、好きなものを食べて良いでしょう。長続きをする秘訣は、フラストレーションを溜めずに楽しく食事をして気分転換をすることですから。
こんなに変わる!プチ断食のメリット
プチ断食をはじめて真っ先に気がつくのは、原因不明の「けだるさ」が抜けることです。午前中の頭の重たさや、昼食後に感じる眠気から解放され体が軽やかになります。
生理中の不快感から解放される
また女性ならば、生理前から生理中にかけて感じる、いらいらや体の鈍さからも自由になれるのも嬉しいですよね。
もともと月経は、「天然の透析」と呼ばれるほど、解毒力にすぐれている自然の仕組みですがプチ断食を組み合わせることで、より強力に体内の毒素を排泄できるのでしょう。
食べすぎた翌月のメンスが重いのは、女性なら体験したことがある方も多いのではないでしょうか。これは、分解しきれなかった老廃物が原因になり、匂いが強くなったり生理痛がひどくなると考えられています。
それが、プチ断食を実践することにより栄養素の吸収と排泄のバランスが整うため、体が理想的な状態をキープできるのです。たとえば肥満が気になる方なら標準体重に近づきます。
つまり、太り気味の状態であればこれ以上、余分な栄養を取り込まず、体外に送り出すことにより、ダイエット効果が得られます。一方、やせすぎの方ならば効率よく栄養素が吸収されて、ふっくらとした体型になりますよ。
免疫力がアップする
これまでの生活の中で蓄積されていた老廃物を排泄することによって、風邪や、感染症の予防にも効果があります。人体に悪さをする菌をよせつけにくくなり、また、少しくらいの風邪なら、引いたとしてもすぐに治ります。
全体的に新陳代謝が活発になり細胞が若返るので、その結果として免疫力が大幅にアップするのです。病原菌をよせつけない健康な体になれるのも、プチ断食の魅力です。
腸がきれいになって美肌効果も
腸がきれいになることと、肝臓や腎臓の機能が向上することにより、肌が健康になります。毛穴が小さくなり、化粧ののりが良くなるのは、もちろんですが「プチ断食」を繰り返すと、体全体が軽くなるためよく笑うようになり、その結果としてほうれい線が目立たなくなった方もいました。美容のために健康であるのは、とても重要なことだと再確認します。
プチ断食で体がリセットされると気持ち良い
1.排泄と解毒
現代は飽食の時代です。ところが人類の歴史を振りかえると、満足に食事が摂れていた時代よりも、飢餓に苦しんだ時のほうがずっと長いのです。
よって私達の遺伝子は、氷河期や飢餓を乗り越え、過酷な試練に耐えられるように進化してきました。少量のエネルギーを腸内でいくたびも再吸収できる、超・節約型の体に変わっていったのです。
とはいえ、今ではそんなリサイクル型の体質が仇となって糖尿病や、肥満と言った、栄養過多がひきおこす病気の、心配をしなければならなくなりました。慢性的に感じるしんどさや、体力の低下の原因は、食べすぎによる、臓器の過労で悲鳴をあげている状態なのですから。
普段は意識していませんが、プチ断食をすると、過剰な栄養素の分解が進み、排泄や解毒がスムーズに行われます。
2.プチ断食は気持ちよい!
プチ断食をすると、本来の自分の体が戻ってきます。辛い「肩こり」や「便秘」、「不眠」などが解消されニュートラルな体に還るからです。すると、心がおだやかになるのと同時に、テンションが上がり仕事や勉強の段取りが良くなります。
食物から摂取する栄養素は、人体には欠かせない要素ではありますが、反面過剰になると、けだるさやうつを誘発するひきがねにもなるのかもしれません。 友達や取引先との会食も楽しみながら、時々臓器をリセットする時間も確保しましょう。
空腹を心地よい!と思えるようになれば、プチ断食は成功したのも同然です。 文明社会のもたらす恩恵と、我々の祖先が作り上げてきた、飢餓を乗り切るための燃費の良い体質の両方を、大切にしながら生きていきたいものですよね。