化粧品を使いすぎると、肌は乾燥する?
「乾燥」は、お肌の大敵。ビューティー系の雑誌や、美容サイトを開くと、必ず「保湿」をテーマにした記事に出会いますよね。「年齢」「職業」「肌質」に関係なく、「ローション」「乳液」「クリーム」を塗りこみ、徹底的にうるおいを与えることを推進しています。
たしかに、触れるとザラザラするほど乾燥していたり粉が吹いていると、どれだけ整った顔立ちをしていても、おしゃれな洋服を着ていても幻滅されるかもしれません。
しかし、高価な化粧品を使い時間をかけてお手入れをしているはずなのに、なぜか、思ったほどの成果が得られない。そんな、経験がある方は多いのではないでしょうか。
肌断食をはじめたきっかけ
実は、筆者もその1人です。今から、3年前のことになりますが、全身脱毛を受けるためにサロンに通いはじめました。そこで重度のドライ・スキンだと指摘されてケアに目覚めたのです。
確かにこれまでのお手入れは、「さっぱりタイプ」の「ジェル」を塗る程度でしたから。なぜなら、学生時代ニキビに悩まされたので、「自分の肌はオイリー」だと思い込みあまり保湿に重点を置いていなかったのです。ですが、「これではいけない!」と反省して朝晩と「オイル」や「クリーム」を塗りこみました。
時には、ラップを巻いて「パック」までしていたにもかかわらず、全然効果がありません。むしろ、日を追うごとに、皮膚が硬くなり、ツヤが失われているのがわかります。肝心な脱毛も、肌の状態が悪いため、施術を受けられません。
自棄になり、「こうなれば、いっそのこと、化粧品断ちをしてやる!」と、何もつけずに過ごしました。湯上がりに、濃厚なクリームを塗っても、数時間後には粉が吹いているのですから、化粧品を使用しても、しなくても、そんなに変わらないのでは?と開き直ったのです。
すると、どうしたことでしょうか。今まで、乾きすぎて毛穴が目立っていた肌が、落ち着いていました。
もしかして、「与えすぎる」のもよくないのではないか?と思い、いったん保湿ケアを中止してみたのです。もしも、新たなトラブルが発生したら、再び化粧品を使えばよいのですから。肌断食とは
まったく、化粧品を使用せず、「純石鹸」もしくは「ぬるま湯」で洗うだけのケアのことを「肌断食」と呼びます。美容に興味があり、スキンケアに熱心な方は、聞いたことがあるのではないでしょうか?
私たちの皮膚には、おびただしい数の「常在菌」が住み着いています。「菌」というと、「ばい菌」や「ウイルス」を連想するかもしれません。けれども、人体に害を与える、たちの悪い「菌」もいれば、追い出してしまうと生体のバランスが崩れてしまうような、必要な「菌」もいるのです。
たとえば、腸の中にいる「乳酸菌」も、「菌」ですが、腸内環境を整えるために不可欠な存在として注目されていますよね。「菌」は、肉眼では確認できませんが、私たちの生活には、なくてはならないものなのです。
化粧品を用いると、「悪い菌」も「良い菌」も、徹底的に消毒してしまいます。その結果、「常在菌」が棲めなくなり、肌が「乾燥」したり、「ニキビ」ができたり、「くすみ」が目立つといった、ありがたくない状況に。
しかし「肌断食」を実践すると、「常在菌」のバランスが整うため、本来の素肌が戻ってきます。それなら、「パラベン」フリーの「ローション」や、100%天然成分のみで作られた自然派の化粧品であれば、「常在菌」を殺菌しないのではないだろうか?と思いますよね。たしかに、たっぷりの添加物が含まれている商品よりは、安全かもしれません。
しかし、植物性であっても、防腐剤が含まれていない「クリーム」でも、皮膚にとって「異物」であることは間違いないのです。残念ながら、オーガニック化粧品や、自然派化粧品でさえも使用を続けると、肌に負担がかかってしまうのです。
夜のお手入れ方法
すっぴんならば、ぬるま湯で洗い流すだけで、その後は何もつけずにすごします。翌朝も、ぬるま湯で洗顔するだけで大丈夫です。特に、洗顔料を使わなくても、寝ている間に分泌されたいらない皮脂を充分に落とすことができます。
メイクをしている場合、「純石鹸」(ドラッグストアなどで100円前後で入手可能)をよく泡立てて顔を洗います。「マスカラ」や「口紅」などのポイント・メイクは、事前に「ワセリン」で落としておくと石鹸だけで、きちんとファンデーションも落とせますよ。
「クレンジング剤」は、肌に負担をかける「界面活性剤」(水と油を中和させるためのもの)が多く含まれています。「W洗顔」をしなけれないけない、というのは、化粧品会社のセールス文句ですから、「クレンジング」をやめても、トラブルの原因にはなりません。どうぞ、ご安心ください。そしてもちろん、洗顔後は化粧品は使いません。
ボディーは、湯船につかり、優しく肌を撫でるだけで、石鹸を使用しなくても、充分に汚れを落とせます。どうしても、気になる場合は、やわらかいガーゼを、お湯で濡らし、そっと拭き取るとよいでしょう。
何もつけなくても、本当に大丈夫?
「美容オイル」や「保湿クリーム」を塗って「うるおった」と感じているのは、細胞がふっくらとしたからではありません。肌の表面に、化粧品で蓋をして、一時的に膜を作っただけなのです。
残酷な話ですが、この「しっとり感」は、錯覚でしかありません。本当に、肌が健康になり、内側からうるおっているのではなく、べったりとした皮膜感を、「うるおい」だと勘違いしているのです。「肌断食」に挑戦すると、いつわりの「うるおい感」がまったくないので戸惑う方が多いのです。はじめの1~2週間は、「つっぱり感」があったり、口のまわりに粉が吹くかもしれませんが、「常在菌」が戻ってくると、化粧品を使用していた頃よりも、むしろ肌が乾燥せず、しっとりとした状態をキープできます。
ただこれまで、化粧品のライン使いをしていたり、エステティックサロンのフェイシャルコースに通いつめていたり、念入りにスキンケアに励んできた方は、効果があらわれるまでに時間がかかるかもしれません。
どうしても乾燥がおさまらないときには
個人差がありますが「肌断食」をおこなうと、さんざん化粧品で消毒されてきた肌は、「常在菌」が戻らずに、ひどい「乾燥」や「赤み」に悩むケースも少なくありません。そんなときには、少量の「ワセリン」が活躍します。
「ワセリン」と聞くと、いかにもベタつきそうなイメージがあります。ところが、ごくわずかな量の「ワセリン」をのばすことにより、乾いた空気や、外部の刺激から肌をガードできるのです。
「ワセリン」の原料は「鉱物油」です。そのため、肌に良くないのでは?と考えがちですが、今は精製度が高く、不純物が混じっていないため、酸化しにくく、かえって安定した物質だといえるでしょう。逆に、天然成分であるはずの「オリーブ・オイル」や「椿油」は、空気に触れると酸化しやすいので、注意が必要なのです。
「ワセリン」を使いこなす
(1)「ワセリン」の選び方
「黄色ワセリン」や、「ヴァセリン」などと、たくさんの種類が発売されています。美容目的で、素肌に使用するときには、「日本薬局方」の「白色ワセリン」を選びましょう。「黄色ワセリン」は不純物が多く、外国産のものは、添加物や、「ワセリン」以外の成分が含まれていることがありますから。また、一概に国産といっても色々なメーカーがありますが、中身とお値段は大差ありません。だいたい100gで1000円前後とお手頃価格なのが嬉しいですよね。
それでも不安になる方や、特別敏感な肌質の方には「サンホワイト」がおすすめです。「白色ワセリン」よりも、さらに精製度が高く、見た目も「白」よりも「半透明」に近く、匂いもまったくありません。
通常の「ワセリン」よりも値がはりますが、その分、抜群の安全性を誇ります。ほとんど、店頭販売がなく、インターネットで購入するのが一般的です。(2)「ワセリン」のつけ方
「ワセリン」は、薄く少なくつけることがポイントです。顔全体なら、「米粒」程度を手にとり、てのひらをすり合わせてなじませまてください。その、かすかに「ワセリン」がついたてのひらで、優しく顔を包みこみます。このとき、決して、揉んだりすりこんだり、肌を摩擦してはいけません。
こすると、肌を刺激してしまい、粉吹きや、シワの原因になりかねません。あくまでも「こんなに、わずかな量で大丈夫?」というほど少量を、ていねいに顔に馴染ませるのがコツなのです。ワセリンは、ボディの乾燥にもよい
もちろん「ワセリン」は、顔だけでなく全身に使えます。これまでならば、「リップ・クリーム」「ボディ・ローション」「ハンド・クリーム」「ネイル・オイル」「フット・ジェル」などと、足の先から、髪の毛の先端まで、「これでもか!」というほど大量の保湿アイテムをそろえていたでしょう。「ワセリン」一瓶があるだけで、これらすべての機能を果たしてくれますよ。
「ワセリン」を「透明のグロス」として使用したり、「ひじ」や「ひざ」「かかと」のお手入れにも効果的でした。また、浅い傷や、やけどに塗っても良いのです。猫を飼っている方ならば、ひっかかれたときに、患部にのばしておくだけで治りが早いのでおすすめです。
一年中エアコンの風にさらされ、湿度の低いオフィスで働くOLさんや、掃除や洗濯、料理などで水仕事の多い主婦の方は、顔だけでなく体の乾燥も深刻ですよね。
パーツと用途に合わせて選ぶ保湿化粧品も進化していますが、「ワセリン」のみで代用できるのであれば、ドレッサーがすっきりとして、節約にもなりますから。
全身の肌がうるおう
安価な上に、オールマイティーに使用できる「白色ワセリン」は、ドライ・スキンの強い味方。とはいえ、最終的な目標は「何もつけなくても大丈夫」な状態になることです。そのためには、時間と根気が必要なのです。筆者の場合は、はじめてから約1ヶ月で効果を実感しました。まず、1週間ほどで、手足の粉吹きが改善され、指のささくれができにくくなりました。そして、乾燥によるかゆみや、赤みがおさまり、手ざわりに変化が出たのを感じたものです。
しかし、ボディに関しては、すぐにうるおいが戻ったのですが、顔は、結果が出るまでに半年以上もかかりました。おそらく、体とはくらべものにならないほど大量の「日焼け止め」をはじめとする化粧品類を使用してきたことが原因ではないでしょうか。
逆に、顔は早く結果があらわれたのに、背中やふくらはぎの内側だけにずっと粉が吹いているというケースも多いのです。実際にボディは、顔よりもずっと皮脂腺の数が少ないため、乾燥しやすいのです。さらに肌着や洋服で覆われているため、たえず繊維が肌の表面を刺激しています。
その上、たのみの「ワセリン」を塗っても、すぐに衣服が当たると、とれてしまいやすのもネックになっています。
けれども、気長に「肌断食」を続けていると、乾燥のせいでうろこのように硬くなった肌も、確実になめらかになってきますよ。
成果があらわれるまで
それでは、どのくらいで成果があらわれるのか、気になりますよね。年齢や、これまでのスキンケア、環境によっても個人差があります。
やはり、長い間、「ローション」や「美容液」に頼ってきた肌は、「常在菌」が極端に少なくなっているため、快復するまでに時間が必要です。
また、化粧品断ちをすることで、一時的に「かゆみ」や「赤み」「皮剥け」に悩まされる場合も少なくありません。乾燥がおさまるまでは、精神的にも厳しい期間になりますが、どんな肌質でも、自力でうるおう機能が備わっています。あまり、ひどい状況が続くと鏡を見たくなくなるという声もありました。しかし、忙しくて、スキンケアをおろそかにしていると、いつのまにか、健康な素肌が戻っていたなどといった嬉しいケースも。
「肌断食」と「ズボラ」のちがいとは?
まったく、化粧品を使用しないのが美肌の秘訣ならば、美容に興味がない「ズボラ」な人こそがきれいなのでは!?と突っ込みたくなりますよね。
もちろん、「肌断食」と「ズボラ」は別物です。実は、「何もしない」のは、朝晩のお手入れは楽になりお金も節約できる反面、かなり難易度が高いのも事実。
たとえば、「かゆみ」や「ひきつれ」があると、つい、患部にさわりたくなりますが、手をふれるのはNGです。「気になっても、ひたすら耐える」「時間が解決してくれるまで待つ」のは、ズボラさんには厳しいことでしょう。
気分転換を上手にしながら、近視眼的にならず、遠視になりすぎず、肌のうるおいを取り戻したいものですね。「肌断食」をすると24時間ずっとお手入れをしているようなものなのです。
年齢に関係なくはじめられる
「肌断食」に挑戦するなら、「春夏」がおすすめです。木枯らしが吹きぬける寒い季節よりも、気温と湿度が高く、比較的、しっとりとした皮膚を保てるあたたかな季節は、結果があらわれやすいものですから。
そして、年齢を問わずに誰でもトライできます。新陳代謝が活発な若い世代は、もちろんですが、いろいろな経験を重ねた知的な大人の肌にも効果的です。
とくに、体も「肌断食」に切り替えて以来、乾燥しなくなっただけでなく、「”加齢臭”が気にならなくなった」という方もいました。「つけすぎ」「洗いすぎ」は、かえって逆効果だと再確認したものです。
自分のお肌の力を引き出す
脱毛サロンで、重症の乾燥肌のために、照射を断られて以来、目覚めた保湿ケアですが、意外なところに着地しました。高価な「オイル」や、めずらしい成分がふくまれている「美容液」よりも、何もせず、何も使わず過ごすのが、自力で肌がうるおうポイントだったとは。
本当に、人体のメカニズムは、神秘的だなと感動しますよね。その後、サロンで「どのクリームを使われたのですか?」と、質問されましたが、まるで、さる美白化粧品のCMのように答えました。「現在は、何も使っていません」