英語勉強は必要ない?広まる英語不要論、その本質とは|トピックスファロー

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2014年11月17日
英語勉強は必要ない?広まる英語不要論、その本質とは

学生時代、嫌いな科目を「どうせ大人になったって使わないんだから勉強する必要ない」とサボっていた人も少なくないでしょう。大人になってみると、科目の内容ではなく勉強するという姿勢の方が大事だったことに気付いた人も多いでしょう。今なお叫ばれる「英語不要論」の是非について解説していきます。

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実は英語はそんなに必要ではない!?英語不要論の嘘・本当

ここ十数年の教育改革は目覚ましいもので、私たちが小中高の頃に習った科目や内容が大幅に変わっている事も珍しくないことです。そして、今までは中学生から習うはずだった英語も小学校から習う教科へとなっています。

このような英語勉強の必要性の強まりに対して起こるのが「英語不要論」です。英語不要論の対象は小学校からの英語学習だけでなく、社会人の英語学習を含めた全ての英語にまで拡大されることがあります。 果たして、英語の勉強は本当に不要なのでしょうか?それとも本当に必要なのでしょうか?

衝撃!日本人の9割に英語は不要!?

加熱する英語教育必要説のアンチテーゼとして人気を博した本があります。その名も「日本人の9割に英語はいらない」。何ともショッキングなタイトルです。

著者は、マイクロソフトの日本法人社長を9年間務めたという経歴を持つ成毛眞氏です。書中では「英語が本当に必要なのは海外を行き来する必要がある人間だけ」「本当に英語を学ぶ必要があるのは英語教師・キャビンアテンダント・大学教授・外資系企業の社員など日本人全体の1割程度」「英語が出来たから仕事が出来るようになるわけはない」と過熱する英語教育に対するアンチテーゼを展開しています。

英語重視の愚を嘆く

成毛氏は経歴から言えば「英語が必要な1割」に属する日本人だったがゆえに、今の英語重視の風潮を傍目から見ることが出来るといえます。それゆえに主張の内容は過激ではあるものの、筋が通っていると感じられます。

成毛氏は、「日本語の大切さを見直し一般教養を身に付けるべき」とも書中で説いています。英語を重視するあまりに、日本語を軽視する風潮もあちこちにみられるのも確かです。言語はコミュニケーションツールであると同時に、その言葉を使う人のアイデンティティの核心ともなるものです。英語重視の教育には「国際化社会への適応」というお題目がありますが、英語重視のし過ぎで日本人としてのアイデンティティを喪失したのでは何の意味もない、というのが成毛氏の抱いている思いなのでしょう。

学校で英語、家では日本語…これでは言葉も身に付かない

今の英語重視教育の影響を最も受けているのは社会人ではなく、子供たちでしょう。中学校から習うはずだった英語が小学校の授業になったのにはじまり、子供用英会話スクールや英会話教材、それどころかインターナショナルスクールに通わせるといったように、子供対象の早期からの英語教育はとどまる事を知りません。

このように子供の英語教育に熱心な親は、子供を英語も日本語も自由に操れるバイリンガルに育てたいという望みを持っているのです。 しかし、早期からの英語教育をすれば全ての子供がバイリンガルになれるというわけではないのもまた事実です。逆に早期の英語教育のし過ぎで母国語が定まっていない「ハーフリンガル」になってしまう恐れがあるのです。

どんなに英語教育に相応しい環境へ子供を送り込んでも、家に帰ってくれば家族が日本語で話していると子供の頭は日本語と英語のどちらを母国語にするかを決められなくなってしまいます。その結果、日本語も英語もおぼつかないハーフリンガルが出来上がってしまうのです。

英語教育は必要、でも限度はある

このように、過度の英語教育を煽る現代の風潮は問題点がある事は疑いようのない事と言えます。だからと言って「完全に英語教育は不要」というわけでもないのも事実です。

たとえ日常的に英語を使える実力があっても、海外旅行に行ったり来日した外国人の案内をしたりしない限り、自慢の英語力も宝の持ち腐れというものでしょう。しかし、英語を話せずとも海外に行かなくともある程度の英語教育は思考力の育成や複雑化に大いに役立つものです。

学校の勉強は、「良い成績を取る」ためではなく「思考力・計算力などを育む」「知識を身に付ける」、そして「教養を深め、人間性を豊かにする」ことが目的なのです。

しかし、現代の英語教育は加熱しすぎて「TOEIC・TOFELで高スコアを取れることが素晴らしい社会人の証」という成績重視の価値観が強まりすぎていると言わざるを得ません。 世の中、風潮に乗り遅れないことも大事ですが、その風潮自体を考え直すことも大事なのです。

著者:塩屋 謙

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職業は編集・校正、そしてWEBライターでもあります。興味の範囲を広げつつ、様々な記事を書いています。