【第27回】旧東ドイツにあるベルリン最終決戦の火蓋が切られたゼーロウ高地|トピックスファロー

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2015年10月14日
【第27回】旧東ドイツにあるベルリン最終決戦の火蓋が切られたゼーロウ高地

ベルリン市街だけでなく、郊外にもナチス時代の負の遺産が残っています。ゼーロウ高地博物館を紹介します。共産圏だった東ドイツ時代の素朴な雰囲気が残る街にも足を伸ばしてみましょう。

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ゼーロウ高地の戦い

ゼーロウ高地の戦いとは、 ナチス崩壊間近の1945年4月16日から19日までの4日間に行われたドイツ軍とソ連軍の戦いです。ベルリン最終決戦の序章とも言われます。

祖国を蹂躙されたソ連軍は、各地でドイツ軍を駆逐しながら東進します。
1945年1月30日、ジューコフの第1白ロシア方面軍は、ベルリンから70Kmのキュリストンという街に到達しました。そのオーデル川を前にソ連軍はスターリンの命令で停止します。
現在、キュリストンはポーランド側のドイツとの国境の街で、そこに流れるオーデル川が国境線になっています。
1945年4月16日、オーデル川とその上流、ナイセ川流域に第1白ロシア方面軍に、第1ウクライナ両方面軍も加わり、ドイツ軍へ総攻撃を開始します。

対するドイツ軍は、地形を最大限に利用したオーデル=ナイセ防衛線を形成して、ソ連軍を向かい撃ちます。
キュリストンからベルリンへ直進する街道1号線には、要衡の街、ゼーロウがあります。
ゼーロウ付近は、台地状に起伏した地形のため、オーデル川までの平原が見渡せました。
ドイツ軍はこの高地帯から射程を設置して、怒涛の如く押し寄せるソ連軍に対峙します。
しかし、最初の2日間はこの地形を味方にして、ソ連軍に大出血を与えますが、最終局面を迎えたドイツ軍にはもはや充分な戦力を有してませんでした。
3日目には、ドイツ軍の予備兵力は底をつき、防衛線は大きく後退しました。
4日目の4月20日、ドイツ軍はソ連軍の総攻撃によって総崩れになり、ついにソ連軍はベルリン市内へ突入します。
関連動画
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ベルリン決戦の前哨戦があったゼーロウ高地。ベルリンから乗り鉄♪(@YouTube)

どうやって行く?ゼーロウ

ゼーロウ(SEELOW)はベルリンから東側へ70kmに位置しています。ベルリンから近郊列車で約2時間弱かかります(片道8ユーロ)。
ゼーロウ自体が観光地でもないマニアックな町なので、ベルリンのZOO駅で「ゼーロウまでの切符を下さい」と言っても、駅員ですら最初は「ハァ~?」って感じでした。

SバーンでベルリンのOSTKREUZ駅まで行き、ポーランドの国境の街であるキュリストン(KOSTRZYN)行きの近郊列車に乗り換えウェルビグ(WERBIEG)まで行きます。
ウェルビグから4つ先の駅が終点のキュリストンはドイツとの国境の町でポーランド領になります。ポーランドは、ベルリンから近郊列車で行ける範囲にあり、ベルリンはドイツの東側に位置しているのだなと感じることでしょう。


ウェルビグは無人駅です。この駅でエーバースヴァルデ-フランクフルト(オーダー線)に乗り換えることになります。ウェルビグの次の駅がゼーロウです。ホームは、キュリストンへの幹線の上を垂直に走る高架の上にあります。

田舎路線なのでベルリンからの往復は2時間に1本の割合です。ウェルビグでの接続もそれに合わせてダイヤが組まれているので、ゼーロウに滞在する目安にしましょう。

ゼーロウ駅もウェルビグ駅も無人駅で周りに全く人家は見えませんが、少し離れたところにそれなりの大きさの街があります。
ドイツに鉄道が敷かれたのは19世紀後半でした。ドイツの諸都市は日本の郊外の街のように駅を中心に発展してるわけではありません。ドイツの地方の小都市の街の多くが、既に19世紀以前につくられたからなのです。

ゼーロウ高地博物館(GEDENKSTATTE SEELOW HOHEN)

ゼーロウ高地博物館への行き方

ゼーロウ駅を降りて博物館までの行き方ですがとても簡単です。駅を出て右手の道を数百メートル歩いたら、ゼーロウの街の中心部に通じている道路と交差します。その道路を挟んだ向こう側が博物館になります。ゼーロウの街に行く前に博物館があるのです。


客観的な展示のゼーロウ高地博物館

他の戦争系博物館と同様、ゼーロウ高地博物館も、雰囲気を出そうと博物館の前には必ず戦車、軍用車、対空砲等の展示があります。
館内の中、部屋が一つで展示も多くないのでじっくり見れます。私が訪れた時は、見学者は自分以外に数人でした。

ゼーロウ高地の戦いやその後のベルリン最終決戦、戦後のゼーロウの街等の展示が中心で、奥の部屋では記録映画を上映してくれます。係員の方のご好意で、自分だけのために上映してくれました。
これは日本の場合でも同じですが、観光地にある大きい博物館ではなく、小さくて見学者が少ない博物館の方がゆっくりとじっくりと見学できます。館内の職員の方が説明してくれたり、特別にVTRなどを見せてもらえるケースも多いです。

ドイツ軍とソ連軍の軍服も展示されていて、どちらに傾くことない中立な展示となっています。


「1945年5月8日、第2次世界大戦のヨーロッパ戦線が終結した場所 編」でも紹介しましたが、旧東ドイツ地区にある第2次世界大戦系の博物館は、ソ連の影響下にあったこともありソ連寄りの展示となっていました。ソ連崩壊やベルリンの壁の崩壊などの時代の変化に合わせて、博物館の展示も変化していくのです。もしかしたらゼーロウ高地博物館もかつてはソ連寄りの展示だったのかもしれません。

ソ連軍兵士の墓

ゼーロウ高地博物館の上は高台になっていて、ソ連軍兵士の墓となっています。
博物館の展示は中立的ですが、ドイツ国内なのにソ連軍兵の墓があって、ドイツ軍兵士の墓がないことに違和感を感じるのではないでしょうか。
ヨーロッパの戦勝国では、自軍の兵士の墓や戦死した兵士を奉る記念碑などはよく目にします。しかし、敵軍であるドイツ軍兵士の墓や名前を記した記念碑は見当たりません。
それがナチスに対するヨーロッパ各国の率直な反応と言えるのかもしれません。そして、ドイツ国内でもソ連の影響下だった旧東ドイツ地区でも、旧ドイツ軍兵士より旧ソ連軍兵士の方が優遇されているのが分かります。


ソ連軍兵士の墓がある高台からソ連軍が侵攻してきた東方向の風景を眺めることができます。

住所: Küstriner Straße 28a, 15306 Seelow
最寄り駅: seelow駅
入場料: 4ユーロ(学生2ユーロ)
展示言語: ドイツ語、英語、ロシア語
カフェテリアはなし、パンフレットや本は有り
絵葉書が異常に安い

ゼーロウの街並み

ゼーロウはブランデンブルク州の都市で、博物館以外は特に観光名所がない人口5500人程の街です。町の中心部に観光インフォメーションはあり、旧東ドイツ地区ということでドイツ語しか話せませんが、地元の職員の方が丁寧に対応してくれます。
インフォメーションの前には、1830年から1832年にかけて建設された古典主義形式のゼーロウ教会があります。また、中華料理屋さんもあり中華系の人々も暮らしているのがわかります。
ガイドブックにも載っていないほとんど観光化されないドイツの田舎街をマッタリ散策するのも良いと思います。
ここからバスで20分程のリーツィエンという街にゼーロウ高地の戦いで、ドイツ兵を看護した日本人医師のお墓もあるようです。

【9-2】
【連載】ヨーロッパで訪れたい世界大戦の戦争遺跡(第1回~第100回)
【連載】ヨーロッパで訪れたい世界大戦の戦争遺跡(第101回~)

著者:ヒロマル

戦争遺跡ライター
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1979年神奈川県生まれ、神奈川県逗葉高校、代々木ゼミナールで1浪、立教大学経済学部卒業。

大学在学中からヨーロッパ、アジアなどを海外放浪してハマってしまい、そのまま新卒で就職せずフリーターをしながら続ける。その後、会社員生活をしながらも休み、転職の合間を利用して海外放浪を続ける。50ヶ国以上訪問。会社の休暇を利用して年に数回、渡欧して取材。

2012年からライター業を会社員との二足のわらじで開始。
2014年からwebメディア(株)フォークラスのTOPICS FAROで2つのシリーズを連載中。

▼もんちゃんねる(You Tube)
https://www.youtube.com/channel/UCN_pzlyTlo4wF7x-NuoHYRA

▼「ヨーロッパで訪れたい世界大戦の戦争遺跡」シリーズ
https://topicsfaro.com/series/warruins
ヨーロッパ各地を取材し、第二次世界大戦に関する場所を紹介。
軍事用語などは極力省き、中学レベルの社会の知識があれば楽しめる記事にしています。
同シリーズが2017年に書籍化。
「ヒトラー 野望の地図帳」(電波社)から全国書店の世界史コーナーで発売中。

▼「受験に勝つ!世界史の勉強法」シリーズ
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2018年から主に世界史を中心とした文系の勉強方法について執筆。
大学受験だけでなく、大学生や社会人の大人の教養としての世界史の勉強方法にも触れて、
高校生、大学生、社会人とあらゆる世代を対象としています。

世間の文系離れを阻止して、文系の学問の復権に貢献することが、2つの連載の目的です。

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