日本の音風景100選とは
1996(平8)年に現在の環境省が、自動車や工場などの騒音防止対策の一環として立ち上げた事業です。
人々が地域のシンボルとして将来残していきたいと思う音風景を、広く公募して、残していく意義がある音100件を「残したい“日本の音風景100選”」として認定することによって、その環境を保全していくことを目的にしています。
また、耳を澄まして聞こえてくる全国の音風景を、人々に再発見してもらうことを目指しています。
全国的に有名なものでは、松尾芭蕉の「奥の細道」で詠まれた山形市の「山寺の蝉」や広島市の平和記念公園にある「広島の平和の鐘」、笛や太鼓・三味線などの鳴り物による2拍子の伴奏で知られる徳島市の「阿波踊り」などがあります。
北海道では、北海道らしい自然が作り出す音や、市民の生活の一部となっている音などが5つ選ばれています。
オホーツク海沿岸 「オホーツク海の流氷」
「大砲の音」や、「乗り物のエンジン音」、「動物の鳴き声」などと評される流氷の音は、「流氷鳴き」と呼ばれ、流氷が着岸する際や流氷に力が加わることできしむ際に起こります。
静まり返った海原に響く流氷鳴きは、不気味でもあり、自然の雄大さを感じさせる音です。
シベリアの東方沖に氷点下40度になる冷たい風が吹き下ろすことによって海が凍り、オホーツク海の流氷は生まれます。
流氷を見ることができる期間は1月から4月までの約3ヶ月間で、オホーツク海で海が凍る南限とされる網走では、流氷観光砕氷船によって、海上から流氷を見ることができます。
札幌市 「時計台の鐘」
photo by ugo3ugo32001 on frickr
時計台は、1878(明11)年に北海道大学の前身である旧札幌農学校の演舞場として建てられた、国内に現存する日本最古の時計台として、国の重要文化財に指定されています。
「Boys be ambitious」(青年よ大志を抱け)の言葉で有名な初代教頭のクラーク博士の後をついだ、2代目の教頭ホイラーによって基本構想図が作られたといわれています。
時間を知らせる鐘はアメリカ製で、建てられた当時は4km四方まで鳴り響いたといわれています。
オフィス街となった現在では、建物や騒音に遮られ、周辺の地域だけでしか聞くことができません。
がっかりした観光地という、ちょっと残念な評価のある時計台ですが、毎時間鳴らされるやさしい鐘の音色は、一聴の価値があります。
函館市 「函館ハリストス正教会の鐘」
函館は、1859(安政6)年に来日したロシア領事館付司祭の聖ニコライによって開かれた、日本における正教会(ギリシャ正教)の発祥の地です。
東京・お茶の水にあるニコライ堂は、函館から東京に渡った聖ニコライが建立したことで知られています。
1916(大5)年に建立された現在の復活大聖堂は、1983(昭53)、大正時代の建物として全国で2番目に国の重要文化財に指定してされました。
ロシアビザンチン様式の大聖堂は、異国情緒あふれる函館の景色にマッチし、地元では「ガンガン寺」と呼ばれるなど、鐘の音は市民に親しまれ、日常の生活にとけこんでいます。
毎週土曜日午後5時の前晩祷と、日曜日午前10時の聖体礼儀のお祈りの際に、ガンガンという鐘の音が元町界隈に響きます。
東川町 「大雪山旭岳の山の生き物」
旭岳は、北海道の最高峰(2,291m)の山で、標高2,000m級の20の連峰が連なる大雪山系の主峰です。
富士山が日本一高い山なら、大雪山は日本一広大な山と、たたえられています。
アイヌの人々から「神々の遊ぶ庭」と呼ばれた大雪山は、1934(昭9)年に国立公園に指定されました。
一般的な登山シーズンは6月中旬から10月上旬で、旭岳の山麓に設けられている4つの自然探索路では、国内では北海道でしか見られないナキウサギの珍しい鳴き声や、氷河期の生き証人ギンザンマシコや、ルリビタキ、コマドリ、ミソサザイなどたくさんの野鳥の鳴き声を聞くことができます。
鶴居村 「鶴居のタンチョウサンクチュアリ」
特別天然記念物のタンチョウの生息地であることから、その名が付けられた鶴居村は、釧路市の東部に位置します。
長年、タンチョウの給餌に尽力された伊藤美孝氏から大部分の土地が提供されたことから、その名前を冠した「鶴居伊藤タンチョウサンクチュアリ」は、(財)日本野鳥の会が運営しています。
「聖域」「神聖な場所」を意味するサンクチュアリでは、タンチョウ保護のための調査や生息地の買い取り、普及のための教育活動を行っています。
タンチョウが見られる時期は10月から3月で、北海道に飛来するタンチョウのうち、サンクチュアリにはその3分の1の300羽ほどが訪れるとされ、雪原で見られる優雅なダンスの美しさとつがいが呼び合う鳴き声は、北海道の真冬の寒さを忘れさせてくれます。