相続税は高い方がいい?それとも低い方がいい?|トピックスファロー

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2012年8月8日
相続税は高い方がいい?それとも低い方がいい?

日本の相続税の税率は、世界的に見ても高い部類に入ると言われています。バブル経済期のような高い税率ではなくなった現在でもその評価は変わることがないのです。では、相続税の税率が低くなるとどのような影響が発生するのでしょうか?

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相続税の税率は上げるべきか、それとも下げるべきか

バブル経済が華やかなりし1980年代後半、「相続貧乏」という言葉が静かに広まっていきました。
当時の日本の相続税は累進課税で最大75%、基礎控除額も2000万円に法定相続人一人当たり400万円と今に比べてはるかに低く、「三代相続すれば財産がなくなる」とまで言われたほどです。

バブル崩壊によって経済事情が一変したことで、相続税は税率引き下げ・控除額の引き上げが進み最大税率50%、基礎控除額5000万円に法定相続人一人当たり1000万円という現行の税制に改正されています。 しかし今また、長引く不景気対策や東日本大震災の復興支援を名目として相続税の引き上げが行われようとしています。

相続税の引き上げは格差社会解消につながる?

相続税率の引き上げに賛成する人の多くは、「相続税はお金持ちであればあるほど納税額が大きくなるからもっと引き上げるべき」というように、相続税を格差社会の解消の手段として考えている節があります。

確かに「富める者と貧しき者の格差」は全くなくしてしまうか、差を縮めるようにしなければなりません。しかしその手段を税金に求めても、正しいとは言えないだけでなく解決にはならないのです。

税金として徴収された資本は公共事業などを通じて社会全体に再分配されていきますが、再分配まで時間が掛かってしまいます。そして税金が高くなればその分だけ市場に回る資本が目減りし、税金の再分配が行われるまで経済活動が縮小してしまいます。

一方、売買によって市場に流入した資本はとどまることなく次から次と市場を巡り、経済活動を動かしていきます。市場に流れ込む資本は多ければ多いほど経済活動は活発に動き、拡大を続けます。

つまり、流動性がない税金は高くなれば高くなるほど経済活動を圧迫し、富める者も貧しき者も共倒れにしてしまう可能性が極めて高くなります。

これは相続税に限らず所得税でも消費税でも同じことで、税率を高くすることは経済活動の活発化ではなく委縮を招いてしまうのです。

格差社会の「格差」が所有財産の量にあるとすれば、財産の増減に関わる経済活動の委縮を招く税率引き上げでは格差は無くならないと考えるべきなのです。

相続税は二重課税?

日本の相続税は最大税率50%ですが、世界には相続税0%という国も少なくないのです。
相続税0%を実践している国には、福祉国家として知られるスウェーデン、金融先進国のスイス、オーストラリア、ブッシュ政権下のアメリカなどがあります。

これらの国々が相続税率0%に踏み切った理由は「生きている間に税金を徴収して、遺産からも税金を取るのは二重課税である」という考え方があるからです。

二重課税の問題点は、一つの収入源に対して二つの税金が課せられることで納税者の負担が大きくなり、経済活動を停滞・委縮させる原因になってしまうということです。

経済活動が停滞・委縮すると雇用問題や福祉問題へと連鎖的に発展していくため、政府は二重課税の排除を行う義務があります。

相続税が上がれば金持ちは逃げる

相続税率の引き上げの裏には、「お金持ちから財産を取り上げれば格差がなくなる、社会に回るお金が増える」という目論見が見え隠れしているものです。
しかし、相続税率を引き上げたとしてもすべてのお金持ちが唯々諾々と従ってくれるとは限らないのです。

まず、「お金持ち」という人種は自分が負うことになるリスクに対して敏感なものです。特に財産にかかわるリスクには敏感に反応し、財産を守りきるための行動を迅速に起こします。
国内財産を処分して外貨に換金し、相続税率の低い国に移住するくらいは当たり前のように準備していて当然です。

第二に、グローバル化が進んだ現代では故郷・母国にとどまり続ける理由が薄くなっているということです。働き口のない地方から若者が流出するのと一緒で、経済的メリットがないのであれば故郷や母国にしがみついて生きる意味はないと考えるのが自然になってきているのです。

相続税の税収はそんなに高くない

財産を持っていれば持っているほど累進課税で税率が上がる相続税は、「高税収の財源」というイメージが付きまとっているといえます。
しかし、実際には相続税による税収はそれほど高くありません。過去最高の相続税税収は1994年(平成5年)度の2兆9377億円、2012年度の相続税税収は1兆4300億円で、消費税税収よりも低いのです。

なぜ相続税の税収が低いのかというと、率直に言えば「人が死なないと課税できない」からです。
たとえ日本の国家予算一年分に匹敵する財産を持つ億万長者がいたとしても、その人が生きている限り相続税を課すことはできません。
しかも、高齢社会が進むほどの医学の進歩もあって、言い方は悪いのですが相続税を課税するチャンスは年々減少しているのです。

不景気の時こそ税金は下げるべき

政府が不景気対策を行うのは経済的にはよいことなのですが、対策予算を捻出するという名目で税金を引き上げるのは逆効果にしかなりません。
なぜなら、経済活動が行われている市場を巡っているお金は税金だけではないからです。

人は、使えるお金が多ければ多いほど財布のひもを緩めがちになり、衝動買いをしたがるものです。逆に使えるお金が少なければ買い物に対して慎重になり、必要なものでも限界まで買うのを我慢してしまいます。
そして、買い物に使うお金こそが市場を巡るお金の基盤となるのです。つまり、税金を高くすればその分だけ使えるお金が減り、個人消費が冷え込み経済活動が委縮することになるのです。
そして、所得が抑制される不景気の時にこそ、使えるお金を増やすために税率を低くするべきなのです。

著者:天地佑樹

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