海事代理士の仕事と資格
海事代理士とは、海事代理士法に基づき、依頼者の代わりに行政機関へ提出する各種申請や書類の作成を行うことが出来る国家資格。
主な業務としては、船舶の登記に始まり、登録、検査申請。海技士免状の取得等の申請代理などなど、船舶と海事に関係する全てを扱います。
この事から、海事における司法書士や行政書士という見方もでき『海の司法書士』や『海の行政書士』として紹介されています。
資格取得の方法
海事代理士資格の取得には、『海事代理士試験』を合格する必要があります。
海事代理士試験には、年齢や学歴による受験制限はなく、誰でも受験する事が可能。
試験合格後に、国土交通省へ登録をする事で海事代理士として業務を行う事ができるようになります。
ただし、海事代理士法にある欠格事由にあたる人(未成年者や、刑の執行から2年以内の人物など)は、海事代理士になることができません。
【合格率50%】数字以上に難しい海事代理士試験
海事代理士の試験が行われるのは年に1回。
1次試験と2次試験があり、1次試験は筆記、2次試験は口述試験が行われます。
例年の合格率は約50%。
司法書士が約2.8%。2013年の行政書士の合格率が9.19%と比べると、ずいぶんと高いように感じます。
【高い合格率のからくり】受験者の多くは法律家
一見、高い合格率から簡単な試験に勘違いされそうですが、海事代理士試験には、行政書士や司法書士と知った法律系の資格を持っている受験者が多く、合格率を底上げしていると言われています。
その為、海事代理士は、合格率以上に難しい試験と言えるでしょう。
海事代理士の年収は100万円から1000万円
一説では海事代理士として働く人の年収は、100万円未満~1000万円と、大きな格差があると言われています。
海事代理士の主な仕事は船舶の登記であり、登記は独占業務になっています。
しかし登記は司法書士も行う事が可能で、実際に船舶登記の多くは司法書士が行っており、船舶登記だからと言って海事代理士に依頼する必要はありません。
つまり、司法書士として働いていた人が、海事の仕事も請け負うようになり、必要に迫られ海事代理士試験を受ける人が多く、受験者に法律家が増えている原因にもなっています。
さらに法務省の統計によると、1997年から2006年の間で船舶登記の件数は約7000件から、4200件にまで落ち込んでおり、仕事の需要自体が少なくなっています。
マーケット独占で1000万円
一方で、年収1000万円を稼ぐ人の共通点としては、海運や造船などに人脈があり、地域のマーケットを独占しているケースが多いと言われています。
ハイリスク・ハイリターンの海事代理士
一般社団法人日本海事代理士会に所属している人数は343名。(2013年6月7日現在)
それ以外の登録者を含めても、海事代理士の人数は2000名に満たないでしょう。
司法書士と競合する事が多く、またすでに出来上がっている市場に新規参入するのは非常にリスクが高いと言えますが、成功した際の見返りは大きいとも考えられます。
しかし、司法書士は登記手続きができるとはいえ、海事に関して、必ずしも詳しいとは限りません。
海の専門家である海事代理士の特性を生かすことができれば、収入アップも可能でしょう。