低下し続ける図書館の利用マナー…どうしてこうなってしまったのか
マナーとは明示はされていなくても、利用者に対して遵守することが暗黙の内に求められているものです。
しかし、明示されていてもマナーを守らない人が続出すればマナーによって守られていた場所はたちまち崩壊してしまいます。
そうした利用マナーの低下によって、今全国の図書館が危機に晒されていることをご存知ですか?
相次ぐ図書の破損・汚損・無断持ち出し
全国の図書館が頭を悩ませている問題、それは閲覧・貸し出しを許可している図書資料が書き込み・切り抜き・水濡れなどで故意に破損・汚損させられたり、貸し出し手続きを取らないで館外へ持ち出したりといった蔵書への被害が出ていることです。
重要な箇所に鉛筆やマーカーでアンダーラインを引くのは良くあることですが、それは自分でお金を出して買った本や教科書にするべきことです。
「有用な記事が載っている新聞や雑誌でも、そのままでは嵩張るから記事だけ切り抜こう」というのも自己所有しているから出来ることです。
お風呂で読書するのは時間の有効活用かもしれませんが、次に誰かが読むかもしれない図書館の本でやるのは最低の考え方です。
ましてや、無断での館外へ持ち出すのはれっきとした犯罪です。
静寂を破る館内での行動の数々
「図書館は静かに本を読むところ」というのが暗黙の了解であり、図書館に対する共通認識であったのは昔の話なのか、最近は子供も大人も館内で騒ぐようになっています。
小学校入学前の幼児が大声を出すのはある意味自然なことですが、図書館で大声を出さないようにさせないどころか子供が走り回ったり、鬼ごっこしているのを止めない母親さえ居ます。
定年前後の男性が集会所くらいの感覚で閲覧室で知り合いと大声で話していたり、図書館員に因縁をつけていることさえあります。
中高生が図書館の無線LANを目当てに集まって騒ぎながら、飲食しながらゲームに興じていたりすることさえあります。
少ない利用スペースを独占する人たち
図書館にある持ち出し禁止図書の閲覧を行なうスペースは有限で、席が開くのを待っている人が居たなら進んで譲るような、利用者の良識に任せて運営されている所があります。
その為、利用者が良識に従わない利用をすると閲覧席はたちまちトラブルを引き起こす原因になってしまうのです。
例えば、閲覧席で机に突っ伏して居眠りをする人、勉強のために筆箱や辞書などを所狭しと広げてしまう学生、席を離れているのに鞄などを置き去りにして席取りする人などです。
破損・汚損した図書は廃棄処分に…
これらの図書館の利用マナーを巡る問題で、もっとも深刻なのが図書の破損・汚損・無断持ち出しです。
本の価値は、全ページが欠けることなく揃っていることで発生する性質のもので、一ページでも汚れて読めなかったり破れていたりすると途端に価値がなくなってしまいます。
破損・汚損した図書は廃棄処分にして買いなおさなければならないのですが、雑誌のバックナンバーや廃盤になっている本は入手が困難なため、代わりが見つからず欠番になってしまうことさえあります。
無断持ち出しされた図書は、蔵書データベース上は存在することになっているので貸し出しリクエストされるまで発覚しないこともしばしばです。
開き直る悪質利用者たち
このような悪質な利用者は、一目で分かるような姿をしていることはなくその辺を歩いているおじさんおばさんお母さんたちであったりします。
その上、現行犯で注意しても「全部私の払った税金で買った本なんだから文句言われる筋合いはない」と開き直ることさえしばしばです。
子供が騒いでいることを注意されたら「うちの子育てに口を出すな」「子供のすることなんだから水に流せ」、
居眠りや大声でのおしゃべりを注意すれば「俺を誰だと思っているんだ」「議員の○○先生は俺の知り合いなんだ、お前なんか首にしてやる」と騒ぎ立てられることも…。
そして、彼らにとってはこれは開き直りから出た言葉ではなく彼らなりの正論だったりするのです。
失われるマナーとモラルに歯止めを掛けられるか
図書館の利用マナーの低下は留まることを知らず、各地の図書館ではマナーアップキャンペーンを開催して利用者のマナー向上につなげるよう努力しています。
例えば利用者によって破損・汚損した図書を展示する、破損している図書の修復作業を体験する、
マナー向上の啓蒙チラシを配る、といった具合です。
しかし、いまだ図書館利用者のマナー向上は一向に進んでいないのが現状です。
日本最大の蔵書量と厳重さを誇る国立国会図書館ですら図書の破損被害の報告例があるくらいです。
スマートフォン・タブレット端末普及による電子書籍への移行も進んでいますが、現存する全ての図書・書籍がデジタル化できているわけではない以上、図書館にある全ての本は貴重な情報資源であることには変わりありません。
紙媒体から電子書籍へ移り変わろうとしている時代の節目に立つ私たちは、今一度図書館の利用マナーを省みるべきなのではないでしょうか。