メンヘラだけど赤ちゃんをあきらめたくない!薬と妊娠・出産の関係|トピックスファロー

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2015年10月7日
メンヘラだけど赤ちゃんをあきらめたくない!薬と妊娠・出産の関係

精神科領域の薬の中には「この薬を飲んでいる間は、妊娠をさけてください」といった注意書き(添付文書)が添えられているものも少なくありません。では、こういった薬を飲んでいるからといって、妊娠は100パーセントあきらめなければいけないものなのでしょうか?

ファイナンシャルプランナー(AFP)兼WEBライター
  

「薬を飲んでいる間は妊娠しないでください」といわれた・・・

私は持病で長年薬を飲んでいます。今まで、いろいろな事情があり多くの先生に診てもらいました。そこで共通していわれてきたことは、「薬を飲んでいる間は妊娠は無理です。子供はあきらめてください」という非情な言葉でした。 薬

自分は「そこまで子供が欲しいわけじゃないからいいかな」と思っていたのですが、いざ結婚してみると「やっぱりこの人の子供は欲しいな」と考えるようになってしまったのです。でも、自分は薬を飲んでいる。だから妊娠はできない・・・。

この事実は、胸に突き刺さったトゲのように、いつまでも私を苦しめました。言い方があまりにひどいかもしれませんが、「女として閉店」と言われているような気がしまったのです。このあたりの感情は、不妊治療をされたり、お子さんを授かることで悩んでいる人なら一度は体験していると思います。

だからといって、薬を止めるのは簡単ではありません。私は精神科領域の薬と皮膚科領域の薬を飲んでいます。これらは安易に止めたら今より状態が悪化して、子供を育てるどころじゃなくなるのはわかっています。あくまで素人の考えですが・・・。

事実、精神科領域に関し、「妊娠するために無理して断薬(=薬を止めること)をしたところ、子供が生まれた後、さらに症状がひどくなり子育てどころじゃなくなった」という本末転倒な話を聞くくらいです。私はかなり落ち込みました。

実際、薬を飲んでいると妊娠は無理なのか?

それでは、本当に薬を飲んでいると、妊娠し健康な赤ちゃんを産むことは無理なのでしょうか?私はパソコンに向かい、調べ始めました。するとこんな記事に出会ったのです。

「妊婦に抗がん剤、子どもに影響なし 乳がん患者を調査」
(朝日新聞デジタル2015年3月10日)

この記事によると「妊娠5ヶ月以降の乳がん患者である妊婦に対し抗がん剤治療を行っても、生まれた赤ちゃんに異常は認められなかった」ということです。抗がん剤は基本的に細胞の分裂を抑制する作用があるので、赤ちゃんの発育にはどう考えても良くない薬です。

「そのような薬を妊婦さんに使えるのだから、自分が飲んでいる薬くらいなら飲みながら妊娠することは可能なのではないか?」と思い始めたのです。さらに私は調べ始めました。赤ちゃんが生まれたら、お母さんは赤ちゃんにお乳をあげます。そこで、「母乳育児をしていても飲める薬」と「飲んでいる間は母乳育児を避けたほうがいい薬」のリストを掲載しているページに出会いました。

「授乳中の薬の影響『安全に使用できると思われる薬』『授乳中の使用に適さないと思われる薬』」
(国立成育医療センター・妊娠と薬情報センター
http://www.ncchd.go.jp/kusuri/lactation/druglist.html/2015年3月10日参照)

このリストを見ると、「飲んでいる間は授乳を避けたほうがいい薬」というのはごくわずかです。普通に生活していれば、まず飲まない薬がほとんどでした。「赤ちゃんにおっぱいをあげられる、ということは、妊娠していても飲めるのでは?」と思ったのです。

私は決めました。「精神科の主治医の先生に、『不妊治療をしたいけど、薬を飲んでいたら、本当にどうにもならないのですか?どこかで相談できる機関はないのですか?』と直談判してみよう」と。そこで、診察のときにそのことを聞いてみたのです。

どこかで相談できる機関はないのだろうか?

先生は私の話をふんふん、と聞いてくださいました。そして、「正直なところ、薬に関する情報は膨大すぎて、自分たち医師でもフォローしきれていない部分がある。だから、自分からはどうこうすべき、と言えない。でも、ここに行ってみるといいと思う」とおっしゃり、1枚のプリントをくれました。そこには「虎の門病院 妊娠と薬外来」と書かれていました。

ご存知の方も多いかもしれませんが、虎の門病院というのは国立(正確には独立行政法人)のとても大きな病院です。そこの産婦人科が妊娠と薬に関する相談を受け付けている、とのことでした。

私は虎の門病院に電話してみました。電話して話を聞くと、「まずはこちらから問診表をお送りします。それにご記入いただいて、返送してください。その後、診察の日取りを決めることになります」とのお返事。

そこで、私の住所を伝え、問診表の到着を待ちました。届いた問診表自体は一般的な産婦人科の診察で使うものとあまり変わりはありません。が、薬について詳しく書かなければいけないこと、主治医のサインが必要なことが特徴と言えるでしょう。

私は次の診察のときに「虎の門病院から問診表が来たので、サインしてください」といい、無事にサインもゲットしました。そして、「現在飲んでいる薬があれば、その現物も送ってください」とあったので、ジッパー式のビニール袋に入れて同封。3日ほどして病院から連絡がありました。「○月○日の14時半ころはいかがですか?」との日程指定のお話でした。私は承知の旨を伝え電話を切りました。

「妊娠と薬外来」なるものに行ってみた

メンタル2

そして診察当日。「何があるかわからないから、早めに行っておこう」と思い、14時少し前には虎の門病院に着いていました。初めての病院なので、初診受付に行き、「妊娠と薬外来で伺ったんですが」と告げて、手続き開始。

すぐに診察券(カード)が発行され、「それでは、2階の産婦人科受付にこちらのファイルを提出してください」と言われました。ファイルを受け取り、2階に上がろうとエレベーターを探したのですが、これがわかりづらい・・・教訓です。初めていく場所には、余裕を持っていくようにしましょう。

なんとかエレベーターを見つけて、2階の産婦人科へ。「妊娠と薬外来を14時半から予約した松沢です」というと、「お待ちしておりました。中の待合室へどうぞ」と中に通されました。「こりゃ待つかな」と、バッグから文庫本を出して読んでいると、案外早く「松沢さん、どうぞ」の声。

緊張しながら入ると、そこには女医の先生(産婦人科医)、男性の先生(薬剤部長)、研修生(薬学部の学生さん)がいらっしゃいました。まずは挨拶し、それぞれ自己紹介。こうして、「妊娠と薬外来」はスタートしました。正直、私がこの時緊張していたのは、「ここでもし悪いことを言われたら、私はなんと言って彼にお詫びしたらいいんだろう」という不安からでした。

知らされたのは、意外な事実

そんな緊張の中、女医の先生が「まずは、松沢さんから送っていただいた薬をもう一度確認したいと思います」とおっしゃいました。ちなみに私が「今、これを飲んでいる」と申告していた薬は以下にあげるものです(薬剤名は商品名)。

・リーマス(気分安定剤)
・ユーロジン(睡眠導入剤)
・ロドピン(抗精神病薬※私は抗不安剤代わりに使っています)
・黄連解毒湯(気分安定系の漢方薬)
・アキネトン(手の振るえの副作用止め)
・ザイザル(抗アレルギー剤)
・タリオン(抗アレルギー剤)

こうして書いてみると結構飲んでいますね・・・自分でもびっくりです。て、そんな私はなんと言われたのでしょうか?自分でもびっくりなのですが、「基本的には全部止めなくてもいいです」と言われました。

先生の話を要約するとこうなります。「松沢さんが飲んでいる薬は、どれも安全性が高いものです。私どもの病院でも、これらの薬剤を飲みながら妊娠、出産した人を数多く見ていますが、皆さん元気な赤ちゃんを産んでいますよ」ということでした。

特に私が心配だったのが、リーマス。この薬は、「妊婦が飲むと、胎児の心臓に奇形を生じる可能性があるので、原則として妊婦は服用しないほうがいい」と添付文書(お医者さんが使う製薬会社から交付される説明書)には書いてあります。

そのことから、ネット上では「リーマスを飲んでいると妊娠できないから断薬した。そしたら出産後にもっと具合が悪くなった」いう話がまことしやかにささやかれています。どうも「リーマス=妊娠したいなら絶対アウト」ということになっているようです。

そのことについて、薬剤部長の先生がこうおっしゃっていました。「確かに、リーマスの添付文書には『妊婦への投与は慎重に行うこと』と書いてあります。松沢さんがおっしゃるとおり、昔の調査ではこの薬を飲んでいたお母さんから生まれた赤ちゃんに心臓の奇形が見つかったという報告がありました」

「しかし、最近の調査では、実はあまり関係なかったのではないかということが指摘されています。調査の方法や収集されたデータも、科学的に信憑性があるものとは言いがたい、リーマスを飲んでいた場合とそうでない場合を比べても、心臓の奇形の発生率はあまり変わらないようです」

先生の一言を聞いて、私の目の前を覆っていた闇がぱっと開けるような気がしました。あれだけ「リーマス止めなきゃ、でも、おかしくなったらどうしよう」と思っていたのはなんだったのだろう?

「薬が体内に残っているとよくないのではないか、と思われるかもしれませんが、リーマスの血中濃度は1週間程で、でほぼ0になります。なので、止めたら止めたですぐ体から抜けると思っていてください。心配することないですよ」

「薬を飲んでいるから」というだけであきらめることはない

メンタル3

女医の先生がこうおっしゃいました。「松沢さん、妊娠するなら不要な薬を使わない、というのは原則です。しかし、母体の健康のためには、薬を使うことが必要なこともあるんですよ。お母さんが安心していないと、赤ちゃんも安心できないのよ」と。

「松沢さんの場合なら、十分薬を飲みながら妊娠をすることは可能だし、元気な赤ちゃんを産むことができると思います。薬を使わないようにする努力も必要だけど、つらいときは薬を使って大丈夫ですからね」この言葉を聞いたとき、私はその場に泣き崩れそうになりました。安心したのです。

私は、先生に自分の正直な気持ちを話しました。「インターネットを見ると、リーマスを飲んでいる間は妊娠なんてとんでもない、という論調しかないので、正直不安でした。でも、ここに来られて、ちゃんとしたお話を聞けて安心しました。ありがとうございます。不妊治療を受けたいです」と。

先生は笑顔でそれを聞いて下さいました。そして、「ただ、不妊治療をする、ということであれば、個人経営のクリニックでは断られるかもしれません。そうなったらうちに情報を照会してくれるよう頼んでもいいし、うちで不妊治療を受けることもできますよ」とおっしゃいました。

私は「ここなら信頼できそうだし、精神的に具合悪くなっても総合的にケアしてくれそうだ」と思ったので、「できれば、ここで不妊治療を受けたいです」といいました。「それでしたら、改めて予約を取ってくださいね。がんばりましょう」と力強い返事が。

かくして診察は終わり、会計を済ませて外に出ました。気になるお値段ですが、自費診療扱いになるので、12,960円でした。それでも、受けてよかったと思っています。私の心の闇を晴らすのには安すぎる値段といってもいいでしょう。

まずは相談してみよう

長々と書いてしまいましたが、結論を言うと「精神科領域の薬を飲んでいる、というだけで妊娠をあきらめることはないし、無理な断薬をすることもない」ということです。もちろん、これは私の場合であって、病状や飲んでいる薬の種類によって異なるかもしれません。

ただ、私は思うのです。「メンヘラだから、という理由だけで、子供をあきらめるのはもったいない」と。病状があまりにひどいなら慎重になる必要があるとは思いますが、私のように、「普段の生活はなんとかいけてます」程度の病状で収まっているなら、もっと積極的になっていいはずです。

この文章で示したことは、あくまで私の体験に基づいた一意見であり、医学的な見解を示すものではありません。しかし、「子供をあきらめたくない、でも、薬を止めておかしくなるのが怖いし、先生には妊娠を止められている・・・」と悩んでいる人は、まずは行動してみるべきだと思います。

なお、私が相談した虎の門病院の「妊娠と薬外来」の紹介ページはこちらです。
http://www.toranomon.gr.jp/departments/c_other/obstetrics_gynecology/schedule.html
初診は電話で予約を取る形になるので、迷ったらまず主治医に相談し、電話してみましょう。

また、虎の門病院だけでなく、さまざまな医療機関でも、同様の相談を受け付けているようです。こちらのページから情報を検索することができます。
「厚生労働省事業 妊娠と薬情報センター」
http://www.ncchd.go.jp/kusuri/

家のお近くでやっていれば、そちらに相談してみるのもいいかもしれません。最後になりますが、ひとりで悩まないでください。適切な専門家の先生に相談すれば道が開ける、ということもありうると思います。正しい知識を持って、自分の人生と向き合っていきましょう!

著者:松沢未和

ファイナンシャルプランナー(AFP)兼WEBライター
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2014年にファイナンシャルプランナー(AFP)の資格を取得した兼業WEBライターです。もともと文章を書くことが大好きなので、この仕事を兼業として選びました。相続や保険の分野のお話をわかりやすくまとめてお話できればと思っています。これ以外にも、たくさん資格は持っているので、資格の取り方の話しもしたいところです。また、食べ歩きと旅行とコスメ研究が大好きです。日々の研鑽の成果!?を文章にぶつけていきたいです。至らない点がいろいろあるかと思いますが、よろしくお願いいたします。