【裁判に発展?!】日本に保育園が増えない理由【子供は騒音?】|トピックスファロー

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2012年11月21日
【裁判に発展?!】日本に保育園が増えない理由【子供は騒音?】

『子供の声を排除する社会はおかしい』と考える人もいる一方で、『保育園の騒音が迷惑』と新しい保育園が一向に作られない現実があります。子供が元気な証拠ともいえる遊び声が騒音とされ消えつつありますが、問題は子供だけにあるのでしょうか?

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ドイツでの騒音裁判

ドイツでは、近隣住民の訴えにより2008年、2009年と相次いで2つの幼稚園に対して、閉鎖、移転という判決が下されました。
これは、『居住区にある施設にあるにもかかわらず、静閑を乱すのは許されない』という高等行政裁判所の判断によるものです。

上告後も幼稚園側が敗訴する結果となりましたが、裁判の事が広がるとともに『判決がおかしい』という世論の声が噴出。行政はこれを受け2011年に『子供が原因の音は騒音として扱わない』という条例を作る事となります。

子供の声は我慢しなければならないのか?

この件に対し、ドイツの上院議員は『子供の騒音は成長の証。近隣住民は子供のたてる騒音を容認しなければならない』と、子供の声は騒音であると認めたうえで、近隣の住民に対し『我慢を強いる』発言をしています。

日本でも保育園が問題に

この子供施設に関する問題は、同じことが日本でも起こっています。
例えば、東京都世田谷区では、『保育園の子供たちの声がうるさい』という苦情が寄せられています。
保育園側の対策としては、『防音壁の設置』、『2重の防音ガラスなどによる防音設備』、『園児が外で遊ぶ時間の制限』など、防音対策に関して多くの施設が行っていますが、それでもクレームが減る事はありません。

進まない保育園の新設と増え続ける待機児童

こういった騒音問題に対して、区や保育園側は近隣の住民に対して理解を得ようと話し合いを試みていますが、折り合いがつかず、これが新しい保育園を作るうえでの大きな問題となっています。

2012年10月の段階で、全国の待機児童数は46,620人。
子供施設の新設は急務となっています。

公園ですら遊べない子供達

また東京都西東京市緑町の「いこいの森公園」においては、『噴水で遊ぶ子供の声がうるさい』として訴訟を起こし、西東京市は噴水を止める事を決定するという事例がありました。

地図を確認すると、この「いこいの森公園」の周辺には、小学校や中学校、さらには団地も近くにあり、子供を育てやすい環境にみえます。
しかし、そのような環境であっても、子供の声は騒音とみなされてしまうようです。

なぜ今、子供の声が問題視されるようになったのか?

しかし子供の声は、昔から聞こえていたはずです。むしろ少子化の現代、子供が原因となる音は少なくなっているのではないのでしょうか
それが、なぜ今になって問題視されているのでしょう。

ライフスタイルの変化

一部では、『子供の声に神経質になり過ぎなのではないか』という意見もありますが、それだけでしょうか。

例えば、徹夜で仕事を終えた夜勤明け。朝の9時になってようやく眠れるといった時に、近所から子供たちの遊ぶ声が聞こえて眠れない、といったケースの場合に、ただ一方的に『我慢してほしい』というのは正しいのでしょうか?
また、高齢化により増加している家から出る事の出来ないお年寄り。人工透析などの理由で自由に動けない人に対しても同じ事が言えるでしょうか?

公園からの声は基準値を超えていた

環境省が定める騒音の基準値は、昼間の住宅街で55dB以下。55dBはおおよそ普通に会話している程度の音量とされています。
今回のいこいの森公園の事例では、訴訟をおこした人物の家の騒音地は60dBを超えていました。
家にいる間中、常に誰かの話し声が聞こえている状態を想像すると、我慢しきれなくなるのも無理はないように感じます。

住民関係の希薄化

この手の話を調べていると、『知っている子供の声は気にならない』という意見が驚くほど多い事に気付かされます。
実際、地域に溶け込んでいる保育園では騒音問題が大きくなることは少なく、騒音値に関わらず、『知らない子供の声は耳触り』というのは、誰しもが認めている事です。

騒音が問題として取り上げられるようになった背景には、『顔も知らない子供が、身の回りに増えた事』が少なからず要因としてあると考えられます。

『子供』とくくられていても、騒音問題の原因は別にある

この手の問題では、子供の甲高い声だけが取り上げられる事が多いのですが、親に問題があり、その不満が『子供の騒音』と一括りにされている事も少なくありません。

ある保育園では、近隣住民との話し合いで出された問題点として、『門前で行われる保護者の立ち話』、『送迎の際の危険な車の運転』、『路上に放置される自転車』など、騒音以外の不満も多く寄せられました。
それらの不満が解消されない限り、例え防音壁を張り巡らせたとしても、『日照権』や『高い壁による圧迫感』、もしくは『街の景観が悪くなった』と別な問題にすり替わる事が容易に想像できます。

騒音対策に必要なのは歩み寄り

そこに子供がいる以上、騒がしいのは仕方がないのかもしれません。
しかし『子供の事だから仕方がない』というのは、周りの人が我慢するときにいう言葉であって、親がしつけをしなくても良い言い訳ではありません。
また、苦情を言いに来るのは一人を『クレーマー』と切り捨てるのは簡単ですが、それではその周りで同じように我慢している人もいつか『クレーマー』となるでしょう。

一方、保育所でも近隣住民と話し合いの場を設けたり、保育園を知ってもらう為のイベントを設けています。周りに暮らす方々も、ただ一方的に不満を募らせるのではなく、そういった場で話し合う努力も必要なのではないでしょうか。

子供の全てをシェルターに閉じ込める事も、近隣の住民全てが引っ越す事も出来ない以上、騒音を我慢するのではなく、互いに歩み寄り、受け入れられる方法を模索する事が、必要とされています。

著者:渡辺芳樹

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学生時代からライターとして活動。小さな会社に就職したおかげで、ライター以外に、編集からWEBサイト製作など、幅広く経験。現在はフリーランスとなり、いくつかの会社と契約を結んで執筆活動してます。