庭やコンテナは危険だらけ!?菜園を脅かす病害虫の脅威
野菜を育てるなかで私たちが一番悩まされること、それは「病害虫による被害」ではないでしょうか。水やりに施肥にと大切に育てていた野菜の葉に、あるとき小さな異変を発見。あれよあれよとその異変は株全体に広がり、愛しい野菜はあっという間に枯死・・・、という悲劇が起こるのです。この切なさはひとことでは言いあらわせません。私たちの大切な野菜に悪さをする病害虫は、なぜ発生するのでしょうか。
家庭菜園だからこその被害。自然界にはない危険とは
ひと口に「病害虫による被害」といっても、その種類の多さ、症状の多様さはまさに百花繚乱の状態です。病気は空気中のカビや虫が運ぶウイルス、土壌の細菌、悪条件下の栽培による生育不良などさまざまな要因によって引き起こされ、菜園をはじめるまでは目にしたこともなかったような虫が大切な株を食い荒らします。野菜たちは平和にみえる庭先やベランダで、私たちの想像をはるかに超える脅威にさらされているのです。
一方、自然の中で自生している植物に、突出した病害虫の被害が起こることはほとんどありません。これはなぜなのでしょうか。
生態系が野菜を守る
自然界では、様々な生物、細菌、カビ、虫たちが互いに調和しながら共存しています。すなわちそこには「安定した生態系」が存在しており、その環境が特定の菌や害虫などの突出した繁殖を許さないのです。そもそも細菌やカビなどはある一定以上の数にならないとその対象に害をもたらすことはないので、自然界では病害虫による派手な被害は起こりにくくなっています。
しかし庭の小さな敷地やコンテナに、自然界と同じレベルの生態系はありません。菜園の野菜たちは人の手による不自然な環境で育つことを余儀なくされており、常に病害虫の危険にさらされているのです。よって、病害虫対策の成否は、「自然界のような生態系のない環境で、いかにして被害を出さない工夫をしていくか」にかかっています。
病害虫予防は家庭菜園ならではの方法で
長い年月によってでしか培われることのないもの。それが「生態系」です。私たちがいくら努力を重ねても、この自然の営みと全く同じものを菜園に作り上げることはできません。では、自然のただ中にあるような環境を彼らに用意してあげられない私たちは、どうすればよいのでしょうか。
菜園をおびやかす「3つの要因」とは
それにはまず、野菜たちが病害虫に侵されるメカニズムを知ることが大切です。野菜が病原体や害虫に襲われるのは、以下の3つの要因が重なったときです。
1 主因・・・病原体や害虫の存在
そもそもこれらがなければ野菜は病気にかかることも、害虫のターゲットになることもありません。
2 素因・・・植物自体が病害虫に襲われやすい形質をもっていること
特定の種の害虫は特定の野菜を好むなど、それぞれの特質があります。また、弱っている株は病害虫の被害にあいやすい傾向にあります。
3 誘因・・・病原体や害虫を招きやすい環境があること
高温多湿など、菜園の環境が病原体や害虫の好むものとなっている状態です。
以上の3つが重なると、野菜はまたたく間に病害虫の餌食となってしまいます。しかし裏を返せば、これらの要因を1つでもクリアすることで、私たちの野菜は元気に育つのです。
3つの要因をクリアし、元気な菜園を目指そう!
3つの要因をできるだけ取りのぞき、丈夫な株を育てるには以下のような考え方をします。
1 主因を取り除く
病害虫をこの世から撲滅することはできません。彼らをできるだけ寄せ付けないようにします。
- 庭やコンテナを日ごろからよく観察し、病気の葉茎や害虫はすぐに取りのぞく
- 実に袋や網をかけ、害虫が飛来するのを防ぐ
- 土中の細菌が茎や葉に付着しないよう、マルチングをする
※マルチングとは、植物の株元をワラやビニールなどで覆うことです
2 素因を改善する
病害虫に強い苗を選び、株を丈夫に育てます。
- 品種改良によって病害虫に耐性を持たせた品種や、病気に強い接木苗を選ぶ
- 購入の際には徒長(葉や茎などのむだな成長)した弱い苗を避け、葉や茎がしっかりとしたものを選ぶ
- 土の環境や施肥に留意し、病害虫に強い健康な株を育てる
3 誘因を取り除く
病害虫は風通しや日当たりの悪いジメジメとした環境で増殖します。
- コンテナであれば設置場所に高さを持たせて風を通す
- 水はけのよい土づくりをする
次回は、今回のお話を踏まえたうえで、より具体的な病害虫対策についてお伝えします!
出典:
野菜を病気と害虫から守る本 根本久
植物の病気と害虫 防ぎ方・なおし方 草間祐輔
「育つ土」を作る 家庭菜園の科学 木嶋利男
おいしいベランダ野菜 小島理恵
菜園生活パーフェクトブック 藤岡成介
ベランダ菜園スタートBOOK 平野編集制作事務所