病害虫対策は栽培の基本を見直すことから!<パート1>土&肥料編|トピックスファロー

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2016年8月2日
病害虫対策は栽培の基本を見直すことから!<パート1>土&肥料編

病害虫を寄せつけないためには、被害にあってからの「対策」より、予防を兼ねた「基本の見直し」が大切です。今回は、病害虫に負けない元気な株の作りかたの基本をお届けします!

フリーライター
  

前回のコラムでは、菜園に病害虫被害をもたらす要因として、主因・素因・誘因の3つを挙げ、それらを取り除くための方法を「対策」として簡単にご紹介しましたが、その「対策」は、私たちが元気な野菜を育てるための基本でもあります。今回は、病害虫を寄せつけないための苗選びや土作り、肥料の与えかたをご紹介します! 苗の植え付け

病害虫に強い野菜づくりは「購入時」から始まっている!

病害虫に強い野菜づくりは、苗や種を選ぶことから始まります。苗や種を購入する際は何に気をつければよいのでしょうか。

病気のない元気な苗を!

人が疲れているときに病気にかかりやすいように、弱った株はより病害虫を引き寄せます。よって苗はよく観察し、以下のようなものを選びます。

  • 苗は葉の裏までよく観察し、虫に食われていないか、病気にかかっていないかを確認する。
  • 葉にツヤがあり、茎のしっかりした元気な苗を選ぶ
  • 種は「殺菌済み」のものを選ぶ

はじめから「病気や害虫に強い苗」を選ぶ

また、苗の中には特定の病気にかかりにくくなるように品種改良したものや、病害虫に強い品種の台木に苗を接いだ「接木苗」があります。 ミニトマト・プチトマトの苗

品種改良された種や苗

  • 「CR」・・・根こぶ病に強い野菜の表示。品種名のあたまに記されている
  • 「YR」・・・萎黄病に強い野菜の表示。品種名のあたまに記されている
  • トマト、ミニトマト・・・トマトモザイクウイルス、根腐萎凋病、青枯病、半身萎凋病、かいよう病、ネコブセンチュウなどに強い品種が育成されている
  • キュウリ・・・ウイルス病、うどんこ病、ベト病、褐斑病などに強い品種がある

接木苗

  • ナスやトマト・・・青枯病や半身萎凋病、センチュウに強い品種の台木に苗を接いだものがある
  • ウリ科・・・つる割病対策としてカボチャやトウガンの台木に苗を接いだものがある

その野菜にあった「植えどき」を守ることの大切さとは

元気な株は育つべき時期に育てられることで作られます。「まだちょっと寒いけど、早く収穫したいからもう植えちゃおう」などということはご法度です!

植えどきを守らないと弱い株が育つ

栽培適期を守らないことで、発芽のための温度が足りない、花や実をつけるための日数がなかなか追いつかないなどの不協和音がおこり、結果として病害虫に弱い株ができてしまいます。

知らざれる栽培適期の意味とは!?

また、植えどきを守ることには、もうひとつ大きな意味があります。それは「栽培適期が、作物の性質によってだけではなく、病害虫の多く発生する時期を避けて決められている」という事実です。すなわち、この時期になるとこの病害虫が多く発生するから、栽培適期はこの時期を避けよう、といった具合なのです。

種の袋に記された植えどきは、栽培のプロが見極めた大切な情報です。パッケージにはたいてい栽培地域にあった植えどきが記されていますので、必ず守るようにしましょう! プランターの土に種を植える

「よい土」は病害虫から野菜を守る!

ジメジメと湿気た場所には、カビや病原菌が多く発生しますが、このことは野菜の命を支える土にもあてはまります。水はけや空気循環の悪い土は株そのものを弱らせ、同時に病気や害虫を多く招きます。よって土は、通気性に優れた「フカフカ」したものを目指して作りあげます。

フカフカの土=団粒構造の土とは

土には大きくわけて2つの構造があります。ひとつは単粒構造、もうひとつは団粒構造です。単粒構造の土は、単体の鉱物の粒が隙間なくギッシリ並んだもので、いってみれば「息の詰まるような」土です。このような土では、野菜の根は窒息してしまいます。

一方、団粒構造の土は鉱物の粒どうしが集まることでつくられたもので、その大きな粒の間には空気や水が保たれます。そこに住みついた微生物が有機物を栄養に変え、残った「腐植」※が土の団粒化を促進します。家庭菜園では、この理想的な「団粒構造の土」を目指します。

※腐植とは不完全に分解された有機物のことです。微生物がより活性することで養分となる「栄養腐植」と、土壌粒子間の接着剤として団粒構造の形成の助けとなる「安定腐植」が混在しています。

ふかふかした良い土

理想的な「団粒構造の土」は有機物で

こうした土を作るためには、堆肥や腐葉土を使います。堆肥に含まれる有機物が、先に述べた微生物の働きを高めるからです。ここで気をつけたいのが、堆肥は「完熟したもの」を使用する、ということ。堆肥は落ち葉やワラを発酵、分解させて作りますが、分解途中の未熟な堆肥を使うと、かえって多くの病害虫を招くことがあります。

肥料は有機を使い、適切な量を守る

土の中の微生物や虫が食物連鎖を起こすことで土は理想的な団粒構造となります。しかし化学肥料のみを使用した栽培を行っていると食物連鎖は途絶え、土は単粒化してしまいます。肥料は有機を中心に与えましょう。

また、堆肥に元肥、追肥に・・・と次々に肥料を与えていると土はいつの間にか養分過剰となり、結果として野菜は生育不良に陥ってしまいます。家庭菜園では不足より過剰の害が目立ちますので、肥料は養分の量をトータルで考えながら与えましょう。

次回は、『病害虫対策は栽培の基本を見直すことから!<パート2>栽培管理編』をお伝えします!

出典:
野菜を病気と害虫から守る本 根本久
植物の病気と害虫 防ぎ方・なおし方 草間祐輔
「育つ土」を作る 家庭菜園の科学 木嶋利男
おいしいベランダ野菜 小島理恵
菜園生活パーフェクトブック 藤岡成介
ベランダ菜園スタートBOOK 平野編集制作事務所

著者:入江佑未子

フリーライター
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濃い~時期も薄い時期もありますが、ライター歴は18年です。園芸を扱う出版社に勤務した後、地域情報サイトにてケーキ屋さんや雑貨屋さんなどの取材記事を担当し、その後はフリーで活動しています。弁護士事務所のサイトコンテンツや、生命保険の記事など、お堅い記事も書いています。