新時代の幕開け、宇宙太陽光発電
太陽光発電は無尽蔵の太陽エネルギーで電気を起こすことが出来る、素晴らしいエネルギー源であるといえます。
しかし、実際には天気が悪いと発電効率が落ち、日が沈むと発電できなくなるという天候と時間の制限が最大のネック。
太陽光発電を主力のエネルギー源として利用する為には、「夜でも発電できる」「天気が悪くても晴天時と同じ様に発電できる」を同時に実現しなければなりません。
そして、この条件を同時に満たせる唯一の場所こそが宇宙なのです。
もはや空想ではない!?宇宙太陽光発電
宇宙空間や月面において太陽光発電を行なう「宇宙太陽光発電システム」は1968年に考案されたものです。時代は米ソによる宇宙開発競争の真っ只中。まさに、夢の未来を描いたものといえます。
しかし、1970年代に訪れたオイルショックで実現化が具体案を持って示されたものの、財政悪化が原因で実現には至らず、空想の産物となっていたのです。
宇宙で発電するメリット
まず衛星軌道上などの宇宙空間や月面で太陽光発電を行なうことは、地上の天候に左右されることがなくなるということです。
また、地上では大気によって太陽光が拡散されてしまい、太陽光が持つエネルギーを無駄遣いしているのです。宇宙空間ならば太陽光のエネルギーを減衰無く100%利用することが可能なのです。
地球の衛星軌道上に発電所を作り、常に昼の地域を追いかけるような軌道を取らせれば24時間太陽光発電することが可能になります。
そして、広大な宇宙空間や月面を利用することで地球上では実現できない規模の太陽光発電所を作ることが出来るので、火力発電所や原子力発電所に匹敵する発電量を実現することが可能なのです。
宇宙太陽光発電の実現に立ちはだかるハードルは?
宇宙太陽光発電は、地球上よりも効率よくかつ大規模に行なえるという太陽光発電の弱点をカバーすることが出来る方法です。 しかし、宇宙太陽光発電の実現には大きなハードルが幾つもあるのです。
宇宙のゴミの衝突
宇宙空間は「星以外は何も無い」ように思われがちですが、実際には無数の隕石や人工衛星の残骸などの宇宙ゴミ(スペースデブリ)が漂っています。
隕石や宇宙ゴミは惑星や衛星の重力に引っ張られて、減速することなく弾丸のように宇宙空間を飛んでいます。
加速が付いた隕石や宇宙ゴミが太陽光発電施設にぶつかった場合、発電パネルの機能不全や施設の破損などが起こる可能性が極めて高いのです。
保守・メンテナンスが困難
宇宙空間に浮かべた太陽光発電施設は、何も手をつけなくてもいいというわけではありません。
隕石や宇宙ゴミで壊れたパネルの交換や破損箇所の修理など機能を維持するための保守整備が必要になります。
しかし、宇宙空間には前述の宇宙ゴミだけではなく多量の放射線が降り注いでいるため、人間が宇宙服を着て長時間活動するのには向いていないのです。
送電が難しい
宇宙太陽光発電は、地上で足りない分の電気を宇宙で発電して補うことを目的としています。つまり、宇宙で発電した電気を地上に送り届けなければなりません。
まさか宇宙空間から地上まで送電線を引くわけにも行きません。引けたとしても、宇宙ゴミや地球の自転によって発生する遠心力で送電線が切れてしまう可能性が高いのです。
そのため宇宙太陽光発電施設から地上への送電方法として、「電気をマイクロ波に変換して地上の受電施設に送信する」「レーザー光線にして海に照射して水を酸素と水素に分解する」などの方法が考えられています。
資材の調達の困難さ
宇宙にしても地上にしても、何かの施設を建設するには建設資材を確保して現地に送り込む必要があります。
これまでに建設された宇宙ステーションは、全て地上で資材を調達・成型してロケットなどで宇宙に打ち上げていましたが、アメリカのスペースシャトルの退役などで地上からの資材を調達することが困難になってきているのです。
また、太陽光発電パネルなどの資材は地上でも需要があるので施設の建造に必要な量を揃えるのが難しいのです。
解決方法としては、「火星と木星の間にある小惑星帯から小惑星を持ってきて解体し、宇宙で建設資材を作る」という方法が考えられています。