サブプライムローンが何を引き起こした?(上)|トピックスファロー

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2012年6月21日
サブプライムローンが何を引き起こした?(上)

世界的大不況の原因となったリーマンショック。その原因となったのがアメリカのサブプライムローン問題です。しかし、名前を知っていてもどのようなものだったのかを未だ理解しきっていない人も少なくないのでは? 今、改めてサブプライムローンを振り返ってみましょう。

WEBライター
  

サブプライムローン、リーマンショックを振り返る

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日本は1990年代初頭のバブル崩壊から「失われた十年」、そして2008年のリーマンショックによって「失われた二十年」を経験してきました。かつては沈まない太陽、「ライジング・サン」とまで呼ばれた経済大国日本は、先の見えない不況の闇に包まれてしまったといえます。
バブル崩壊から抜け出そうとしつつあった日本経済に大打撃を与えたリーマンショック。その原因となったのがサブプライムローンであると言うのが定説ですが、「サブプライムローン」とは一体どのような物だったのでしょうか。

誰でもが家を持てるようになる住宅ローン

サブプライムローンは大雑把に言ってしまうと、「審査の緩い低所得者向け住宅ローン」のことです。

どのくらい審査が緩いかというと「過去五年以内に破産した者」「借入額が所得額の50%以上」「過去一年間に一ヶ月の延滞が二回以上ある」という、回収の見込みが低すぎて普通なら審査以前に跳ねるような支払い延滞者でも住宅ローンが組める、という真っ先にトンカチで頭を叩いて夢かどうか確かめたくなるレベルの緩さです。

審査が緩い代わりに金利は通常の住宅ローンよりも高くなっていますが、変動金利性を導入しているのでローン返済開始から数年の間は金利を10%以下に抑えられて低所得者でも安心、というのが売りのローンだったのです。

サブプライムローンに飛びつく理由

対象とされた低所得者がサブプライムローンに飛びついたのは定住できる終の棲家が欲しかったからではなく、投機対象としての住宅が欲しかったから、と言われています。

サブプライムローンが売り出された当時のアメリカは、不動産バブルの真っ盛り。10万ドルで買った家が1年で20万ドルになる、そんな景気のいい話があちこちで聞かれていた、そんな時代です。

つまり、金利が10%以上になる前に購入した住宅の価格が購入時よりも高騰すれば即座に売却して、ローンを前倒し返済しても利益を出せると言うわけです。

また、購入金額と売却価格の差額を担保にして金利が低い住宅ローンに切り替えた利用者も中には居たようです。

サブプライムローンを成立させた投資マネー

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しかし、サブプライムローンは焦げ付き上等の債務者向け高金利ローン。どう考えても融資を回収できる見込みがティッシュより薄いものです。それでも銀行はサブプライムローンにGoサインを出しました。

それはなぜか? 融資に使う資金を投資家から集めたのです。

どうやって投資家から資金を集めたのかというと、契約済みのローンを纏めて有価証券として売り出す「証券化」という手法を使ったのです。
一つ一つは大した事のない、紙くずのようなローンでもまとめて集めて、格付機関が格付けをしてあげればあら不思議。
焦げ付き必至の高金利ローンが瞬く間に有望な投資対象の有価証券に早変わり、と言うわけです。
サブプライムローン証券は、単体での販売ではなく他の有望な有価証券との抱き合わせで市場に売り出されていました。これが、後に大変な事態を招くことになるのです。

証券化に関わったリーマン・ブラザーズ

そして、証券化されたサブプライムローンに大きく関わっていたのが「リーマン・ブラザーズ」です。

リーマン・ブラザーズはアメリカでも最大手の証券会社であり、証券化を行なう投資銀行としてその名を世界に轟かせていました。
つまり、リーマン・ブラザーズの威光と格付け機関のお墨付きがあったからこそ、証券化されたサブプライムローンが世界中の投資家に見込まれて飛ぶように売れていったと言うわけです。
サブプライムローン証券は、リーマン・ブラザーズに多額の利益をもたらしリーマン・ブラザーズの更なる躍進の原動力となっていきます。

リーマン・ブラザーズは、リーマンショックが起こるまで世界最高峰の証券会社であり世界中のエグゼクティブの憧れの的でした。
しかし、リーマン・ブラザーズに巨万の富をもたらしたサブプライムローンが大企業を崩壊させる蟻の一穴となることを誰も予想していなかったのです。

(つづく)

著者:伊藤義雄

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書きたいものがありすぎて書かせてもらっているライターです。趣味は鉄道旅行、写真を撮ることもあるが実際に乗車して車両の個性を体験したいタイプ。尊敬する人は宮脇俊三さん。目標は全国鉄道制覇