
自然だけじゃない、宜蘭は面白カルチャースポットも充実!
台北から車やバスでわずか40〜50分の宜蘭県は台北っ子たちが憧れる人気のリゾート地。最近ではグルメやカルチャーを目当てに訪れる人も増えているという。宜蘭県の玄関口で、台北から日帰りも容易な北部エリアを中心に紹介しよう。
超モダン建築の蘭陽博物館で宜蘭について学ぼう
宜蘭に行ったらまっ先に訪れたいのが超個性的な建築が目を引く蘭陽博物館(ランヤン・ボウグウアン)だ。まるで地面から突き出たような外観で、屋根の傾斜は20度、先端部の壁面にいたっては70度もの傾斜がある。
これは「ケスタ」というこの地方独特の急峻な丘陵地帯をイメージしたフォルムだという。
また四つの壁面はヴィヴァルディの協奏曲「四季」をあらわし、宜蘭産のさまざまな石材を組み合わせて音符に見立てている。さらに大きなガラスの壁面が鏡のように反射するアルミパネルで覆われて空や水辺を映し出しているため、奇抜なデザインながらも風景と調和している。
2010年の完成以来、国内外の数々の建築賞を受賞しているのもうなずける。
内部は4階建てで、一部分がガラスで覆われた開放的な吹き抜けになっている。展示テーマは宜蘭県の自然や文化で、上階から順に「山のフロア」「平原のフロア」「海のフロア」にわかれているが、なかでも興味深いのが古くから暮らす先住民であるクバラン族に関する展示だ。彼らの暮らしや習慣、狩猟の方法などを実物大の模型や史料などでわかりやすく紹介されている。
1階にはカフェやギフトショップが入っていて、宜蘭名産のネギをかたどった傘や鉛筆などのユニークなグッズはお土産に人気だ。
場所は前回紹介したホエールウォッチングツアーが出ている鳥石港にあるので、ホエールウォッチングと組み合わせて観るのがオススメ。
蘭陽博物館公式サイト
http://www.lym.gov.tw/jp/index_jp.asp
台湾で大人気のアーティスト「ジミー」にジャックされた宜蘭駅へ
「ジミー・リャオ」と聞いてすぐにピンとくる人は相当の台湾通かアート通、あるいは愛猫家かもしれない。
宜蘭県出身のイラストレーターであるジミー(幾米)・リャオ氏は、ファンタジックな大人向けの絵本作家として台湾のみならず世界中に多くのファンを持つ。いくつかはアニメや映画化され、金城武主演の映画『君のいる場所(ターンレフト・ターンライト)』は若者の心をとらえて大ヒットした。
日本では『ミッシング・マイ・キャット』という絵本に登場する猫のイラスト入り財布がひそかなブームになっているようだ。
台北から特急「自強号」で約1時間半の宜蘭駅には、こうした世界にたっぷりと浸れるジミー広場があり、無料で一般公開されている。
ジミー氏のイラストで覆いつくされた駅舎を出て左手には、映画『君のいる場所』の主人公やカラフルなスーツケースなどのオブジェがランダムに置かれていて、
まるで屋根のないアート展さながら。
アートといってもジミー氏の作風は親しみやすく、つい作品とともにオモシロ写真を撮りたくなってしまうほど。実際、ここを訪れる観光客は皆、そうしている。
道路を渡った反対側にも大小の作品が点在しているが、圧巻は駅正面の広場の屋根に吊り下げられたSL列車だ。よく見ると絵本の主人公たちが窓から手をふっている。誰もが童心にかえってホッと心がなごむ光景だ。
伝統芸術中心はノスタルジーあふれるテーマパークだった
「国立伝統芸術中心」(国立伝統芸術センター)と聞くと何やらかた苦しいイメージだが、実は気楽に楽しめる人気の観光スポット。
国立だけに台湾の伝統芸術&文化の保護や研究などを目的としているが、観光客にとっては台湾の古き良き時代にタイムスリップできる格好の場所。
中央のエントランスから左手に進むと赤レンガ造りのレトロな建物が続く。一見すると古い街並みのように見えるが、実は1895年頃の街並みを再現したもので、台湾独特の閩南(びんなん)様式と西洋のバロック様式が融合した折衷建築だ。
このエリアは「民芸街」と呼ばれ、飴細工や下駄、刺繍や陶磁器などの伝統工芸品を実演販売する店などが入っている。細い路地などもあって、散策が楽しい。
民芸街のメインストリートから、文昌祠と呼ばれる戯曲や工芸の神々を祀った廟にかけては、屋外での演劇パフォーマンスが毎日行われている。私が行った日は、伝統の演目をラップ調の歌やスペクタクルな仕掛けで演出していて言葉がわからなくても夢中で見入ってしまった。
お腹が空いたら「小吃坊」へ。1階はフードコート、2階は宜蘭の伝統料理を出すレストランになっている。
国立伝統工芸中心公式サイト
http://www.ncfta.gov.tw/ncfta_jp/main/index.aspx
海の幸、山の幸が豊富なだけに太鼓判グルメが目白押し!
台湾の北東部に位置する宜蘭県は、東は太平洋に面し、西は雪山山脈が連なる自然豊かな土地柄。当然、海の幸・山の幸はもちろん、美しい水や空気に育まれた特産物も数多く、旨いものには事欠かない。
ここでは著者が独断で選んだマストイートなご当地グルメを紹介しよう。
イチオシは何といっても海鮮グルメ
宜蘭県に行ったらまず食して欲しいのがとれたての食材を使った海鮮料理。エビ、カニ、金目鯛にハマグリ、アワビ・・・どれも日本では高級食材の部類に入るが、ここでは手頃な値段でたらふく食べられるのだから、うれしいかぎり。
新鮮な素材を活かすため、茹でる、焼く、蒸すといったシンプルな調理法が多いが、宜蘭名産のネギが使われていることが多く、素材の味をより引き立てている。
なかでもカブトガニの一種である名産のアサヒガニは肉厚で美味。サクっとした食感を楽しめる素揚げは絶品だ。
宜蘭でしか味わえない「ガオザー」と「ガンホア」
おそらく宜蘭でしか食べられない変わった郷土料理に糕渣(ガオザー)がある。見た目はまるで一口大の揚げ出し豆腐だが、口に入れるとフニュウという何とも不思議な食感で、しかも中身はものすごく熱い!
鶏ガラとエビ出汁を混ぜたスープにとろみをつけて揚げているからで、なんともやさしい味わいがあとを引く。
ガンホアは干花と書き、魚醤で味付けした豚ひき肉とネギを湯葉で包んで揚げたもの。パクパクといくらでも食べられそうな軽めの食感の小吃だ。
ちなみに上の写真は、左から糕渣、干花、糟餅(干したキンカンと芋や卵をまぜて揚げたもの)で、キンカンもまた宜蘭の名産品のひとつだ。
ウイスキー通が注目するカバラン蒸留所でテイスティング
日本では朝ドラの影響もあってウイスキーの愛好者が増えているが、ウイスキー好きのあいだで注目されているのが、数年前に世界のウイスキー業界に新星のごとく現れ、本場スコットランドのテイスティング大会で圧勝した銘酒「カバラン」だ。
実はそれこそがメイドイン宜蘭のシングルモルトウイスキーなのだ。「カバラン」とは、宜蘭の先住民クバラン族からきているのだ。
宜蘭駅からバスで20分ほどのところに「カバラン」の蒸留所である金車宜蘭威士忌酒堡がある。そこでは製造過程などを見学したり、有料で数種類のウイスキーのテイスティングもできる。
実際に飲んでみると、ほのかに甘い香りでまろやかな味わいながらも、どれも舌に確かな余韻が残る。
「カバラン」ウイスキーは、台湾を代表するコーヒーメーカー「MR.BROWN COFFEE」が作っている。どちらも雪山山脈から流れ出す宜蘭の名水が使われている。
帰りには併設されているショップでお目当てのウイスキーやコーヒーなどを購入できる。
KAVALAN SINGLE MALT WHISKY公式サイト(中国語・英語)
http://www.kavalanwhisky.com
有名な羅東夜市でローカルフード三昧
「台湾に行ったら夜市はハズせない」と思う人も多いはず。ご心配なく、宜蘭には台湾でも有名な羅東夜市(ルオトンイエシー)があるのだ。
羅東は古くから物資の中継地として発展してきたため夜市もにぎわってきたのだという。ここの名物は宜蘭産の青ネギをふんだんに使った葱餅(ツォンピン)。
鉄板で焼くタイプのものや、これでもかというほどネギを生地に詰めて油で揚げた葱多餅(ツォンドウピン)などがあるが、どちらもネギの香ばしさがたまらない。
次に試したいのがト肉(プーロウ)という、これまた宜蘭にしかないローカルフードだ。豚肉のフリッターのようなスナックで、サクサクに揚がった衣と中の肉汁の相性が抜群だ。
もちろん、女性が大好きなマンゴーなどのフルーツたっぷりのかき氷や、美容にいい豆類がトッピングされた豆花やゼリーなどの定番スイーツの名店も多い。冷房が効いたカフェのような店もあるので、安心して利用できるだろう。
羅東夜市は羅東駅から歩いて10分ほどなので、夜市だけを目当てに台北から訪れる観光客もいる。
宜蘭人気に火がつくのは時間の問題。だから早めに行っとこ!
台北からの高速バス便が多い宜蘭県は、むしろ九份や十分に行くよりも便利で早くアクセスできるかもしれない。
遊びどころやおいしいものがふんだんにあるだけに、台湾リピーターのあいだでブレイクするのは必至だ。日本人との遭遇率がまだそれほど高くないので、素顔の台湾を実感できるだろう。
今なら、お得に宜蘭を旅できるキャンペーン「green Yilan truly Taiwa」が宜蘭県政府とチャイナエアラインの協賛で実施されている(2015年11月30日迄)。観光スポットのほか羅東夜市でも優待が受けられるので、台湾に行く前にチェックしてみてはいかがだろう。