【第31回】2度の世界大戦の悲劇の舞台となったベルギー、ルーヴァン大学の図書館|トピックスファロー

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2015年10月30日
【第31回】2度の世界大戦の悲劇の舞台となったベルギー、ルーヴァン大学の図書館

2度の世界大戦で戦場になったベルギーは、各地に戦場の現場が戦争遺跡として残っています。その中でもルーヴァンは、両方の世界大戦の戦場になってしまった街です。ルーヴァン大学の図書館の事件を通じて2度の世界大戦について考えたいと思います。

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2度の世界大戦で炎上したルーヴァン大学図書館

第1次世界大戦でドイツ軍がルーヴァンへ侵攻してきます。
ドイツ軍はルーヴァン大学の図書館を炎上させ、蔵書を30万冊を消失させてしまいました。

戦後、大学側からドイツ政府に蔵書の目録をつけて、蔵書の賠償を求められます。
当時のドイツ政府はドイツ中の図書館に通達します。各図書館に蔵書目録を提出させて、重複している蔵書を大学に現物渡しをさせることにしたのです。
また、消失して戻ってくることがない写本や地図、美術品は同等の価値のあるもので代償するという要求でした。
ドイツ政府は、ドイツ中の全国の美術館、博物館に号令を出して、希望に合う品を買い上げさせました。その話が有名になり世界中の団体、個人から援助の申し込みがあり、日本からも当時、1万冊以上が寄贈されたのです。
ドイツの賠償の枠内にとらわれず、一つの国際支援の対象となり、戦後の平和の運動の象徴となりました。

20年後の2度目の世界大戦でドイツ軍は再び、ルーヴァンへ侵攻します。ルーヴァンの街には一切手をつけず、ドイツはルーヴァン大学の「図書館にだけ」火をつけ、前世代の自国民の努力を水の泡にしたのでした。

どうやって行く?ルーヴァン

ベルギーの首都、ブリュッセル中央駅から列車で約30分ほどでルーヴァンに着きます。1時間に3本ほどルーヴァンに向かう列車があるので、ブリュッセルから気軽に日帰りで行くことができます。
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ルーヴァンの街並み

駅はルーヴァンの中心街から少し離れています。駅を出て正面の道を真っ直ぐ15分ほど歩くと、市庁舎が建つ広場、グローテ・マルクト(GROTE MARKT)に着きます。そこが街の中心です。主な見どころは広場から徒歩数分の圏内に集まっています。
優雅な石の彫刻のような市庁舎は、15世紀に建てられました。建物の正面には、町の歴史からテーマをとった彫像が236体飾られています。
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市庁舎の向かい側にある聖ペテロ教会は、ブラバンド・ゴシック様式の教会で1497年に建てられました。
市庁舎の後ろにある広場、アウデ・マルクト(OUDE MARKT)は、広場いっぱいにテラスが張り出され、ビールを飲んでいる学生、市民、観光客が賑わっています。
ルーヴァンは学生街であると共にビール産業も古くから栄えているのです。

今でも現役のルーヴァン大学図書館

ルーヴァン図書館は、第1次世界大戦後、アメリカの義捐金やドイツの賠償金によって再建されました。第2次世界大戦でも被害を蒙った図書館は、再び戦後再建されることになります。
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ルーヴァン大学の図書館の建物には、当時、支援してくれた国への感謝の意を表わす各国を動物に表現した彫刻の紋章が飾られています。アメリカはイーグル、ベルギーはライオン、日本は犬でJAPANESE DRAGONと呼ばれているようです。
図書館の中にも動物の彫刻があります。梁のギザギザがドイツ軍を表していて、両端にはそれを懲らしめるイーグルとライオンが施されています。
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ルーヴァン大学図書館は、駅とクローテ・マルクトを結ぶ道の左側に伸びるレオポルド通り(LEOPOLD.STR)の先にあります。

開館時間: 9:00~20:00(月~木)
9:00~17:00(金)
10:00~13:00(土)
休館日: 日曜 クリスマス、年始年末

ルーヴァン大学の図書館の事件から考える2度の世界大戦

第1次世界大戦から20年で再びヨーロッパで戦争が勃発しました。
その背景には、勝者側の戦後処理に問題があったと言われています。
第1次世界大戦後、連合国とドイツでヴェルサイユ条約が結ばれました。連合国側は敗戦国ドイツに対して、天文学的な賠償金や領土割譲、軍備の大幅制限など、大国としてのプライドをズタズタにされるような内政干渉をします。

当時のドイツ国内の政治は混乱していました。星の数ほどの政党が誕生し、消えていきま した。その中からヒトラー率いるナチスのような極右政党が国民に熱狂的に支持されます。ヒトラーは巧みな外交によって、次々に第1次世界大戦で失った領土を回復させます。そして、再び世界を相手に戦争を始めることになりました。

当時のルーヴァン大学の賠償要求も、当時の流れに便乗したものとも解釈できます。ルーヴァン大学も消失した30万冊を全て返せという要求は、常識的に考えて無理難題ではないでしょうか。
第2次世界大戦でドイツ軍はルーヴァンの街には一切手をつけず、この図書館だけを狙って攻撃しました。ナチスの蛮行と思われがちですが、屈辱を受けた当時のドイツ人の心情を考えたら、わからなくもないのではないでしょうか。

日本では第1次世界大戦のイメージが薄いですが、ベルギーは第2次世界大戦より第1次世界大戦で甚大な被害を蒙った国です。

日本から直行便が就航するベルギーの首都、ブリュッセル

近年、ベルギーへは日本からの直行便のフライトがありませんでした。2015年ウィンターダイヤより、全日空がベルギーの首都、ブリュッセルへ直行便を就航させます。
ブリュッセルはEUの本部をはじめとする諸機関があり、歴史的建造物などの観光資源が豊富です。そのため、駐在員をはじめ日本人旅行者も非常に多い都市です。今までブリュッセルへは、日本から直行便があるパリ、アムステルダムから高速列車で向かうのが一般的でした。ブリュッセルへ直行便が就航することで、その便利性が高まります。
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【連載】ヨーロッパで訪れたい世界大戦の戦争遺跡(第1回~第100回)
【連載】ヨーロッパで訪れたい世界大戦の戦争遺跡(第101回~)

著者:ヒロマル

戦争遺跡ライター
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1979年神奈川県生まれ、神奈川県逗葉高校、代々木ゼミナールで1浪、立教大学経済学部卒業。

大学在学中からヨーロッパ、アジアなどを海外放浪してハマってしまい、そのまま新卒で就職せずフリーターをしながら続ける。その後、会社員生活をしながらも休み、転職の合間を利用して海外放浪を続ける。50ヶ国以上訪問。会社の休暇を利用して年に数回、渡欧して取材。

2012年からライター業を会社員との二足のわらじで開始。
2014年からwebメディア(株)フォークラスのTOPICS FAROで2つのシリーズを連載中。

▼もんちゃんねる(You Tube)
https://www.youtube.com/channel/UCN_pzlyTlo4wF7x-NuoHYRA

▼「ヨーロッパで訪れたい世界大戦の戦争遺跡」シリーズ
https://topicsfaro.com/series/warruins
ヨーロッパ各地を取材し、第二次世界大戦に関する場所を紹介。
軍事用語などは極力省き、中学レベルの社会の知識があれば楽しめる記事にしています。
同シリーズが2017年に書籍化。
「ヒトラー 野望の地図帳」(電波社)から全国書店の世界史コーナーで発売中。

▼「受験に勝つ!世界史の勉強法」シリーズ
https://topicsfaro.com/series/wh
2018年から主に世界史を中心とした文系の勉強方法について執筆。
大学受験だけでなく、大学生や社会人の大人の教養としての世界史の勉強方法にも触れて、
高校生、大学生、社会人とあらゆる世代を対象としています。

世間の文系離れを阻止して、文系の学問の復権に貢献することが、2つの連載の目的です。

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