2度の世界大戦で炎上したルーヴァン大学図書館
第1次世界大戦でドイツ軍がルーヴァンへ侵攻してきます。ドイツ軍はルーヴァン大学の図書館を炎上させ、蔵書を30万冊を消失させてしまいました。
戦後、大学側からドイツ政府に蔵書の目録をつけて、蔵書の賠償を求められます。
当時のドイツ政府はドイツ中の図書館に通達します。各図書館に蔵書目録を提出させて、重複している蔵書を大学に現物渡しをさせることにしたのです。
また、消失して戻ってくることがない写本や地図、美術品は同等の価値のあるもので代償するという要求でした。
ドイツ政府は、ドイツ中の全国の美術館、博物館に号令を出して、希望に合う品を買い上げさせました。その話が有名になり世界中の団体、個人から援助の申し込みがあり、日本からも当時、1万冊以上が寄贈されたのです。
ドイツの賠償の枠内にとらわれず、一つの国際支援の対象となり、戦後の平和の運動の象徴となりました。
20年後の2度目の世界大戦でドイツ軍は再び、ルーヴァンへ侵攻します。ルーヴァンの街には一切手をつけず、ドイツはルーヴァン大学の「図書館にだけ」火をつけ、前世代の自国民の努力を水の泡にしたのでした。
どうやって行く?ルーヴァン
ベルギーの首都、ブリュッセル中央駅から列車で約30分ほどでルーヴァンに着きます。1時間に3本ほどルーヴァンに向かう列車があるので、ブリュッセルから気軽に日帰りで行くことができます。ルーヴァンの街並み
駅はルーヴァンの中心街から少し離れています。駅を出て正面の道を真っ直ぐ15分ほど歩くと、市庁舎が建つ広場、グローテ・マルクト(GROTE MARKT)に着きます。そこが街の中心です。主な見どころは広場から徒歩数分の圏内に集まっています。優雅な石の彫刻のような市庁舎は、15世紀に建てられました。建物の正面には、町の歴史からテーマをとった彫像が236体飾られています。
市庁舎の向かい側にある聖ペテロ教会は、ブラバンド・ゴシック様式の教会で1497年に建てられました。
市庁舎の後ろにある広場、アウデ・マルクト(OUDE MARKT)は、広場いっぱいにテラスが張り出され、ビールを飲んでいる学生、市民、観光客が賑わっています。
ルーヴァンは学生街であると共にビール産業も古くから栄えているのです。
今でも現役のルーヴァン大学図書館
ルーヴァン図書館は、第1次世界大戦後、アメリカの義捐金やドイツの賠償金によって再建されました。第2次世界大戦でも被害を蒙った図書館は、再び戦後再建されることになります。ルーヴァン大学の図書館の建物には、当時、支援してくれた国への感謝の意を表わす各国を動物に表現した彫刻の紋章が飾られています。アメリカはイーグル、ベルギーはライオン、日本は犬でJAPANESE DRAGONと呼ばれているようです。
図書館の中にも動物の彫刻があります。梁のギザギザがドイツ軍を表していて、両端にはそれを懲らしめるイーグルとライオンが施されています。
ルーヴァン大学図書館は、駅とクローテ・マルクトを結ぶ道の左側に伸びるレオポルド通り(LEOPOLD.STR)の先にあります。
開館時間: 9:00~20:00(月~木)
9:00~17:00(金)
10:00~13:00(土)
休館日: 日曜 クリスマス、年始年末
ルーヴァン大学の図書館の事件から考える2度の世界大戦
第1次世界大戦から20年で再びヨーロッパで戦争が勃発しました。その背景には、勝者側の戦後処理に問題があったと言われています。
第1次世界大戦後、連合国とドイツでヴェルサイユ条約が結ばれました。連合国側は敗戦国ドイツに対して、天文学的な賠償金や領土割譲、軍備の大幅制限など、大国としてのプライドをズタズタにされるような内政干渉をします。
当時のドイツ国内の政治は混乱していました。星の数ほどの政党が誕生し、消えていきま した。その中からヒトラー率いるナチスのような極右政党が国民に熱狂的に支持されます。ヒトラーは巧みな外交によって、次々に第1次世界大戦で失った領土を回復させます。そして、再び世界を相手に戦争を始めることになりました。
当時のルーヴァン大学の賠償要求も、当時の流れに便乗したものとも解釈できます。ルーヴァン大学も消失した30万冊を全て返せという要求は、常識的に考えて無理難題ではないでしょうか。
第2次世界大戦でドイツ軍はルーヴァンの街には一切手をつけず、この図書館だけを狙って攻撃しました。ナチスの蛮行と思われがちですが、屈辱を受けた当時のドイツ人の心情を考えたら、わからなくもないのではないでしょうか。
日本では第1次世界大戦のイメージが薄いですが、ベルギーは第2次世界大戦より第1次世界大戦で甚大な被害を蒙った国です。
日本から直行便が就航するベルギーの首都、ブリュッセル
近年、ベルギーへは日本からの直行便のフライトがありませんでした。2015年ウィンターダイヤより、全日空がベルギーの首都、ブリュッセルへ直行便を就航させます。ブリュッセルはEUの本部をはじめとする諸機関があり、歴史的建造物などの観光資源が豊富です。そのため、駐在員をはじめ日本人旅行者も非常に多い都市です。今までブリュッセルへは、日本から直行便があるパリ、アムステルダムから高速列車で向かうのが一般的でした。ブリュッセルへ直行便が就航することで、その便利性が高まります。
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