起業の落とし穴・初心を忘れた創業者はどうなる
会社を起業するということは、ものすごいエネルギーが必要になってくるものです。
開業のための各役所への手続きや運営資金集め、書類の作成や商号の被りがないかの調査など、途方もない労力が必要になってきます。
こんなにも大変な労苦を途中で放り投げず最後までやり遂げられるのは、自分の会社を興すという夢と会社の経営で自分の信念を表現したいという情熱があるからです。
しかし、夢を叶えて会社の経営に没頭している内に情熱を忘れ、利益の追求を優先し、批判に対しては自己正当化を繰り返して、ついには会社を崩壊させてしまうのです。
多くの起業家が陥る「起業家精神の喪失」は、せっかく興した会社を滅ぼしてしまう危険なものなのです。
起業家精神とはそもそも何か?
起業をする・したいという話になると、大抵「起業家精神」という言葉が出てきます
。
精神、とついていると大和魂とかそういった個々人が宿している気質のように思われがちですが、起業家精神とは新しい会社を興す、すなわち挑戦しようとする姿勢であり行動であるといえます。
多くの人は、「自分には会社経営や新規開業は向いていない」「起業出来たとしても継続できる自信がない」と思っているものですが、起業家は逆に自分の向き・不向きを考える暇があったら会社起業という夢の実現のために行動しているものです。
このような我が身を省みないほどの情熱と夢の実現が原動力となる行動を起業家精神と呼ぶのです。
起業家精神の喪失はブラック企業の種
しかし、起業家精神は「会社の起業」という夢の実現によって失われてしまうことがしばしばあります。
「会社を起業すること」と「会社を経営すること」は全くの別物で、新規開業した起業家の7割は起業5年で会社を畳んでいるといわれるほどです。
しかし何とか5年以上会社を畳まずに切り盛りできたとしても、経営者の多くは初心を失い社員に無理を強いるようになってきます。
「
私は家に帰らないくらいに会社が好きなのだから君たちもそうすべきだ」「会社が仕事を与えているのだからむしろ会社にお金を払って感謝を示せ」などというようにです。
社員にしてみれば無茶ぶりもいいところのコンプライアンス違反発言ですが、このような発言をした本人にしてみれば「自分は会社を興した成功者で、自分の発言は全て正しい」とどこ吹く風です。
このようにして、ブラック企業は形成されていくのです。
初心を忘れた経営者の末路は…
起業家精神という初心を忘れ、利潤追求のために夢の形であった会社をブラック企業に変える経営者の末路は、大抵の場合哀れなものです。
主戦力であった社員がごっそりと抜けて独立した挙句、主要取引先まで持っていかれて潰れた会社や創立時からいた共同経営者が音頭を取って代表取締役解任された経営者は数えられないくらいです。
起業の時から関わってきた経営者が会社から追い出されるというのは、よほどの理由がない限り起こりません。
逆に言えば社員の心を掴めなかったからこそ追い出させることになったのであり、相応の理由があるものと周囲は考えるのです。
「社員を自分と同一視するな」が鉄則
せっかく作った会社をブラック企業にしてしまわないためには、社員と自分の線引きをしっかりと行うことが重要です。
起業経験がある人というのは、他者にも自分と同じように努力することを求めがちです。
しかし、誰にでも経営者の才能があるのではなく、番頭として会社経営を支える才覚や営業職として取引先を開拓する才能というように個々人それぞれが得意とするフィールドとそれに適した才能があるのです。
このような自分との違いを忘れないことこそが、起業家精神を忘れずにブラック企業化を避けるための鉄則なのです。