2010年の総量規制がもたらした主婦層への影響とは?
芥川龍之介の「蜘蛛の糸」をご存知でしょうか。生前に悪行を重ねた悪党カンダタが気まぐれに命を救った蜘蛛の糸で地獄から脱出できるチャンスを与えられながら、自身の悪心で蜘蛛の糸を断ち切ることになるというお話です。
これと同じように、「借金地獄に苦しむ人たちを救うはずの手段」がかえってその人たちを苦しめることになっているのです。
借金出来る額を制限する総量規制
2010年6月から消費者金融・クレジットカードのキャッシングなどの、無担保消費者ローンを対象とした借入額の制限を行なう「総量規制」が導入されていることをご存知でしょうか?
この総量規制は消費者金融のグレーゾーン金利など、多重債務問題を解消する為の法改正に連動するもので、「借りられる額は年収の3分の1まで」「業者一社からの借入額が50万円を越える、または複数の業者からの借入額の合計が100万円を超える場合は年収を証明する書類が必要になる」という制限が掛けられます。
グレーゾーン金利が無くなり借りられる額が抑えられれば、返済も滞りなく行なわれ多重債務に苦しむ人が減る…はずだったのですが、逆に更なる借金地獄に陥ることになった人たちもいるのです。
総量規制の影響をもろに被った専業主婦
今回の総量規制の肝となるのは「借入可能額は年収の3分の1」の部分。年収300万円の人は100万円まで、年収120万の人は40万円までとなるわけですが、年収0円の人は1円たりとも借りることが出来ないことになります。
つまり、自身の年収が0円で配偶者の収入に依存する専業主婦は、今回の総量規制の導入によって新規の借金が出来なくなってしまったのです。
専業主婦はパートや正社員として働かないからこその「専業」なのですが、それが逆に足を引っ張ることになってしまったというわけです。
借りられるけど限界がある「配偶者貸付」
ただし、総量規制の影響で専業主婦は消費者金融から完全に借金できなくなったということでは有りません。
収入を持つ配偶者の同意があれば、「配偶者貸付」という形で消費者金融からお金を借りることが出来ます。
しかし配偶者貸付を利用するには、配偶者の同意書・配偶者との関係を示す戸籍謄本や住民票・配偶者の年収等を証明する書類を業者に提出しなければなりませんし、
配偶者貸付の借入限度額は「二人合わせて配偶者の年収の3分の1まで」となっています。
また、配偶者貸付の手続きをとっても消費者金融側の審査でNGになることもあるので、専業主婦にとって今回の総量規制は相当に厳しいものといえます。
総量規制が関係ない業者から借金してしまうと…
今回の総量規制は、金融庁の許可を受けて営業している消費者金融やクレジット会社を対象とするものです。
つまり、逆に言えば金融庁の管理下にない無届け・無許可の金融業者は総量規制に関係ないということになります。
金融庁の管理下にない金融業者というのはいわゆる「ヤミ金」のことで、トイチ・トサンなどの法定金利を逸脱した金利や「クレジットカードのショッピング枠の現金化」などを斡旋するのが特徴です。
ヤミ金を利用して借金した場合、法外な金利によって利息が瞬く間に膨れ上がり返済不能になること、返済の取立てが苛烈すぎることなどのデメリットがあることはご周知の通りです。
最近は「ソフトヤミ金」と呼ばれる、女性客を強く追い込まず罪悪感を持たるようにして返済させるスタイルを取る業者が問題となっています。
借金をする前にまず家族に相談する
専業主婦が借金に手を出す理由には、「高額なブランド品の購入」「エステサロンの利用」「友人とのランチや旅行」など、見栄や体面が関わるものが多いようです。
一時の羨望を受けるために借金を作り、一生の後悔をするのは褒められるものではありません。
その借金が本当に必要なものであるのかどうかを、配偶者や家族に前もって相談することが大事なのではないでしょうか。